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農林族が自責の弁「ずっと心の重しだった」

政治の勇気で農業再生を――谷津義男元農相に聞く

2016年12月2日(金)

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 昨年11月、農林族議員のあいだに衝撃が走った。環太平洋経済連携協定(TPP)対策を話し合う自民党の会合に出席した谷津義男元農相が「農林族のわたしをはじめみんな悪い」と語ったのだ。谷津氏も策定に関わったガット(GATT)・ウルグアイ・ラウンドの対策費のことだ。

 コメ市場の部分開放が決まった1993年のウルグアイ・ラウンド合意を受け、政府は6兆100億円という巨額の対策費を計上した。この対策はその後、農業強化とは何の関係もない温泉施設などをつくり、批判の的になった。谷津氏は自民党の会合で「大反省をしている」「今日は謝りに来た」などと話し、同じ過ちをくり返すべきではないと訴えた。

 あれから1年。政府・与党は農業の効率化に向け、全国農業協同組合連合会(JA全農)の事業の見直しなどを柱とする改革案を策定した。なぜ1年前、ウルグアイ・ラウンド対策について語ったのか。政府・与党の今回の改革案をどうみているのか。谷津氏にインタビューした。

「ああいう悪例をつくってはいけない」

なぜ昨年11月の自民党の会合でウルグアイ・ラウンド対策の失敗のことを語ったのですか。

「警鐘を鳴らさなければならないと思った」と話す谷津義男元農相

 「6兆100億円の対策費を決めたとき、農林水産省の政務次官だった。ウルグアイ・ラウンド合意で海外の農産物が相当安く日本に入ってくる可能性があるということで、農業を強くするための予算のはずだった。ところが、そうじゃないほうにかなりのお金が行った」

 「農家のなかに入ってみるとよくわかるが、補助金が出ることを前提に考えている。農協なんかも『こういうやり方をすれば補助金が出ますよ』と指導する。自分たちで生産して高く売って所得を上げることより、補助金をもらうことを前提に考える。6兆100億円のあと、そういう空気ができてしまった」

 「ウルグアイ・ラウンド対策のような悪例をつくってはいけない。頭のなかにそのことがこびりついて、ものすごい重しになっていた。ところがTPPでまた同じことをくり返しそうな空気になったから、警鐘を鳴らさなければならないと思った。『こういう失敗をした。反省しているんだ』ということを言った。TPP対策をするなら、本当に競争力のある農業にしたり、農家の所得を上げたりすることに特化すべきで、ほかには使うなということを言いたかった」

コメント8件コメント/レビュー

水産業について、200カイリが大きな社会問題だったころ、業界や消費者の利益を代弁する人は大勢いらっしゃったのですが、第三者として冷静、科学的に「持続的な漁業」を主張される方があまり見受けられなかったように思います。業界の目先の利益誘導も大切だったのでしょうが、高所から客観的に論ずる視点が必要だったし、そういった政治家を支援するといったことも必要ではないのでしょうか。(2018/03/28 17:39)

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「農林族が自責の弁「ずっと心の重しだった」」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

水産業について、200カイリが大きな社会問題だったころ、業界や消費者の利益を代弁する人は大勢いらっしゃったのですが、第三者として冷静、科学的に「持続的な漁業」を主張される方があまり見受けられなかったように思います。業界の目先の利益誘導も大切だったのでしょうが、高所から客観的に論ずる視点が必要だったし、そういった政治家を支援するといったことも必要ではないのでしょうか。(2018/03/28 17:39)

農家のエゴでもあるが、あえて。
農家にとって、農政とは、農家のためのものであり、突き詰めれば所得の向上に他ならない。
所得向上の先に、やりがある農業や、農村コミュニティの繁栄という課題に向き合うことになる。
しかしながら、農村のためや農業のためになってしまったのが、いままでの農政だったのではないか。これでは、農業後継者の問題も、過疎地の問題も解決されない。(2016/12/02 13:32)

自分たちで価値を生み出そうとせず、陳情で補助金を引き出そうとする、公共事業を獲得しようとする . . . 農政に限らず、地方は、まず中央に泣きつくことから始める癖が付いてしまっています。この方のように「分かっている人」は少ない。(2016/12/02 13:17)

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