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マーケティングで消費されるオリンピックの物語

2018年2月21日(水)

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〔写真=JMPA代表撮影(榎本麻美)〕

 羽生結弦さんの感動的な金メダル、そして宇野昌磨さんの同じく華麗な銀メダル、さらには小平奈緒さんの強さを見せた金メダルのあとに不謹慎だが、ここではオリンピックと企業CMについて、特に海外の企業をもとに考えてみたい。オリンピックのマーケティング全般については優れた論考がある。対してこのコラムでは、企業CMについていくつか取り上げる。

 ほかの世界大会とくらべて、オリンピックは4年という期間が開いている。選手はこの4年に一度の機会に焦点をあてて体調を整え、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにする。羽生結弦さんもそうかもしれないが、事前予想を見事に裏切って大活躍すれば、歴史に残る。ただ逆に、4年もあるからこそ、大舞台で失敗した際にはそれが深く傷痕になる。

 つまり――、簡単にかつ、ありていにいうと――、そこには時間が作り出す人生ドラマがある。そして、それが不謹慎ながら面白い。だからテレビのワイドショーでは、技術・技巧的なことをそっちのけで、選手の人生ドラマや、家族とのかかわりについて映し続けるのだ。

 それは別に日本に限ったことではない。消費者は、もっといえば人間は、つねに物語を求めている。「はい、金メダルの技は凄いね」と感心するのではなく、もっと、選手の人生を知りたいのだ。だから、レッドブルの手法は、典型的だといっていい。アルペンスキーなどの選手をとりあげ、伝説として語り、そしてSNSと連携する。オリンピックに出るほどの才能と、努力、そして輝き。さらにアスリートとのライフスタイルそのものと企業を結びつける。場合によっては、選手をスポンサードする。そのために、オリンピックはストーリーを語る場になっているし、オリンピックに向けて各社とも時間をかけて練る。

 オリンピックとストーリー。その意味では、たとえばP&Gの「Thank You, Mom」シリーズを、ぜひご覧いただきたい。これは、オリンピックに出るようになるかもしれない、幼いアスリートたちの様子を描いたものだ。そして、彼ら・彼女らの背後には、かならず母親の熱心な支えがある。世界の中で、幼いアスリート自身より、彼ら・彼女らを信じている母親という存在。

 そして、時は流れ、いつしか大舞台で大活躍しているアスリートが流れる。そして、それを見て感涙する母親の姿。アスリートに近づき、それまでの自分の人生と重ね合わせながら、その瞬間に全人生が無条件に祝福されている――。

 これは、「イベント」「ブランディング」「ストーリー」という要素を見事に盛り込んだ、お手本のような作品である。いや、こういうと皮肉と勘違いされそうだが、こういったマーケティングは好きであれ嫌いであれ、一見の価値がある。

 なお、私は同社のCMであれば、2014年ソチオリンピックの際のものが、もっと露骨すぎて好きだ。「Pick Them Back Up」と題されたCMでは、文字通り、子供の頃になんど失敗しても母親から抱き戻される様子が描かれる。そして、さらに、子どもの汚れた衣類を何度も母親が洗ってくれるのだ。そして、子供と一緒に悩む母親たち。しかし、その努力は徒労に終わるはずはなく、オリンピックという大舞台での活躍が待っている。繰り返し、これは皮肉ではなく、学びになる。

コメント1件コメント/レビュー

応援してくれた人に対して感謝させようとする、テレビの強迫的ヒーローインタビューにうんざりしている。「~してくれました。」という表現にも。丁寧語と勘違いしている知識の低さなのかもしれないが、あんたのためにやったんじゃないでしょうと思う。
スノーボードの選手の媚びない姿勢に新鮮さを感じる。(2018/02/21 15:38)

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「マーケティングで消費されるオリンピックの物語」の著者

坂口 孝則

坂口 孝則(さかぐち・たかのり)

調達・購買コンサルタント

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。調達・購買関連書籍23冊を上梓。2010年、調達・購買コンサルタントとして独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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応援してくれた人に対して感謝させようとする、テレビの強迫的ヒーローインタビューにうんざりしている。「~してくれました。」という表現にも。丁寧語と勘違いしている知識の低さなのかもしれないが、あんたのためにやったんじゃないでしょうと思う。
スノーボードの選手の媚びない姿勢に新鮮さを感じる。(2018/02/21 15:38)

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