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髪凍る雲南の少年とあかぎれ留守児童の10年後

大人になっても都会に行ってもついて回る貧困の連鎖

2018年1月18日(木)

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ネットで拡散した髪と眉が霜で覆われた中国雲南の小学生の写真(写真:Imaginechina/アフロ)

 今月上旬、寒さで髪の毛と眉毛を霜で真っ白に凍らせて小学校に登校する中国人の8歳の男の子の写真が中国のネットに出回り拡散し、中国で改めて内陸部の農村に住む子供たちの貧困問題がクローズアップされた。その後、Yahoo!JAPANや英BBC、米ニューヨークタイムズ等、日本や欧米のメディアも相次いでこれを伝えたため、この少年の写真を見たという読者も少なくないことだろう。

 報道をまとめると、話の概要はこうだ。この少年は雲南省魯甸県の農村に住む王福満くん。自宅から小学校まで片道4.5キロの山道を毎日歩いて通っている。写真が撮られた日の気温はマイナス9℃だったそうだが、写真に写る王くんは、ダウンジャケットどころか綿も入っていないような薄手のシャツジャケットに丸首のシャツという薄着。真冬なのに秋口のような服をまとっている王くんの出で立ちを見れば、彼が厳しい経済事情に置かれていることは容易に想像がつく。

 冬になると冷え込む土地とは言え、髪の毛も眉毛も真っ白になるほど凍えることは珍しかったのだろうか、担任の先生が教室に入ってきた王くんを見るに見かねて写真を撮り、校長をはじめ何人かにこれを送って、現地の子供たちの窮状を訴えた。これがSNSやミニブログで転送やいいね!が繰り返され、これをきっかけに中国では、王くんのような厳しい暮らしを余儀なくされている子供たちの存在と、子供の貧困問題についての関心が高まりつつある。

 王くんは祖母と姉の3人暮らし。父親は都会に出稼ぎに出ていて、年に数回しか王くんの住む自宅に戻ってこれない。母親は、王くんがもっと小さいころに家を出て行ったまま、帰ってこなくなったのだという。

霜少年も留守児童

 中国では、王くんの父親のような農村からの出稼ぎ労働者を「農民工」、王くんのような農村の自宅で親の帰りを待つ子供たちを「留守児童」と呼ぶ。中国国家統計局が2017年4月に公表した統計によると、農民工は全国に約2億8000万人というから、中国の約5人に1人が農民工ということになる。一方、留守児童は、2010年に実施された最新の人口センサスで、全国に6102万人いるとされている。

 子供を置いて働きに出ざるを得ない理由は大きく分けて2つある。1つは、出稼ぎ者たちの自宅がある農村部では現金を稼げる仕事がなく、子供を進学させることはおろか、着るもの履くものも満足に買うことができないこと。もう1つは、中国の戸籍制度により、農村で生まれた農村戸籍の子供たちは、戸籍地の高校からしか大学を受験できない、つまり親たちの働く都会で受けることができないためである。

 では、都会に出れば十分な金が稼げるのかと言えばもちろんそんな保証はない。

 2001年から上海に住んでいる私は、安徽省や河南省といった内陸の農村から上海に出てきて肉体労働やウェーター、物流倉庫等で働いている何人かの農民工と縁あって知り合い、友だち付き合いをしながら10年以上にわたって見てきた彼らの生活を『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として1冊にまとめた。なので、農民工たちの暮らしぶりについてはいささか知見があるのだが、例えば上海の場合、中卒などの学歴でも働けるビルの清掃の仕事の報酬は現状、月額3000元(1元=約17円)程度。上海の中心部でワンルームのアパートを借りようと思えばこの金額ではもはや無理だ。出稼ぎ先の上海で住まいを自前で借りるのであれば、夫婦共稼ぎで6000元の月収があってようやく幾ばくかの仕送りができる程度しか手元には残らない。母親がいなくなったという王くんの場合は稼ぎ手が父親だけ。上海で働く私の農民工の知人にも、田舎に残した1人娘を家政婦をして女手一つで育てているシングルマザーのチャオさんという女性がいるが、その彼女の境遇や、王くんの出で立ちから想像しても、王くん一家の経済的環境は困窮を極めているだろうと思う。

今まで誰も描くことのなかった中国版ヒルビリー・エレジー
3億人の中国農民工 食いつめものブルース

この連載「中国生活「モノ」がたり~速写中国制造」が『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として単行本になりました。
各界の著名人から好意的なレビューをいただいています。

●中国が熱さを忘れつつある中で、中国に対する熱い思いに満ちた本と言えるだろう。さまざまな読み方、活用法がある本と思うが、私には何より著者、山田氏のその「熱さ」が魅力的だった。
(中国問題の研究家 遠藤誉氏によるレビュー「執念の定点観測で切り取った、中国農民工の心?」より)

●もうひとつの違いは、ロウソクの味がするパンしか食べられない貧しい農民工たちの心の豊かさだ。外国人である山田氏と友情を築いた彼らは、自分が食べていくことさえ困難なのに、必ず「ご飯を食べに来て」と招待する。そこに、ホロリとした。
(米国在住のエッセイスト 渡辺由佳里氏によるレビュー「繁栄に取り残される中国の『ヒルビリー』とは?」より)

●しかし、奇妙なことだが、同書を読後、陰鬱な印象かというと、実はそうでもない。同書には、絶望的な内容があふれてはいる。それなのに、なぜか一抹の希望を感じさせられる。おそらく、それはn=1の農民に愛情を込めて付き添ってきた著者の生き様に、読むものが感動を受けるからだ、と私は思う。
(調達・購買コンサルタント/講演家 坂口孝則氏によるレビュー「年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先」より)

コメント4件コメント/レビュー

戦前の私の頃を思い出す内容でした 今の中国が日本の戦前の当時と大変良く似ています
小学校に行くにも子供同士で遊ぶにも差別的に扱われていたことを今でも強く感じています
これだけ情報が簡単にかわせる時代の中国はやはり普通の国ではありませんね
韓国でも北朝鮮でもやはり同じです 日本の今は大変良くなりつつありますが心の貧しさは今も続いているように感じてなりません 兄弟の追放を平気でやるようなことがいまだにあることは日本の社会の未熟を表しています 人の心はどうすれば成長するのでしょうか お互いに鍛え合うという事は大変難しいように思えてなりません いまだに81歳でも悩みます 頑張ります(2018/01/23 11:11)

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「髪凍る雲南の少年とあかぎれ留守児童の10年後」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

戦前の私の頃を思い出す内容でした 今の中国が日本の戦前の当時と大変良く似ています
小学校に行くにも子供同士で遊ぶにも差別的に扱われていたことを今でも強く感じています
これだけ情報が簡単にかわせる時代の中国はやはり普通の国ではありませんね
韓国でも北朝鮮でもやはり同じです 日本の今は大変良くなりつつありますが心の貧しさは今も続いているように感じてなりません 兄弟の追放を平気でやるようなことがいまだにあることは日本の社会の未熟を表しています 人の心はどうすれば成長するのでしょうか お互いに鍛え合うという事は大変難しいように思えてなりません いまだに81歳でも悩みます 頑張ります(2018/01/23 11:11)

働くのが妻一人だと、必要最低限の生活費に収入が追いつかないのでは?
農民工の給与なんて、夫婦2人で朝から晩まで働いて、狭い部屋に一緒に住んで、ようやく子供に仕送りできる程度なのでは?
つまり、1人で働くくらいなら、アパートを引き払った方が家計にやさしい、もっといえば、1人分の給与では家賃を払えなくて追い出されたりするのではないでしょうか?

逆に、女性が1人で働いて仕送りできるほどの給与をもらえるのなら、随分、条件のいい職場だと思います。
日本だって、母子家庭の貧困率はハンパないというのに。
朝から晩まで働いても、最低賃金のパートなんかじゃ、なかなか、子供養っていけませんよ。(2018/01/18 16:12)

ただ純粋に、日本に生まれた自分と家族を幸せに思った。(2018/01/18 13:24)

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