• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

内田樹氏に改めて聞く『街場の中国論』

哲学者、作家の内田樹氏を迎えて(1)

2018年2月21日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ここ数年の中国、そして日本を見る上で、ぜひ考えをうかがいたい方がいた。哲学者で多くの著書を持つ内田樹さんだ。内田さんの書籍に関しては多くを語る必要はないが、中でも私が特に影響を受けたのが、内田さんが2007年に執筆された『街場の中国論』だ(増補版は2011年に発行されている)。私は、中国関連の執筆を生業としているわけだが、常に同書を手元において参考にさせていただいている。

 現在は、武道と哲学研究のための学塾・凱風館も主宰されている内田さん。今回、凱風館を訪ねて、内田さんが考える、現在の『街場の中国論』などについて尋ねた

内田樹さん(右)と筆者(写真=大亀京助、以下同)

山田:私は香港、上海と30年近く中国語圏に住んでいます。そうした中、2005年あたりから靖国や歴史教科書の問題などをめぐって反日デモなどが盛んになりました。日本でも、それを機に中国に関する報道というと反中、嫌中みたいなもの一色になっていき、何か違和感を感じていました。

 そうした中で2007年に内田さんの書かれた『街場の中国論』を読みました。この本は、大学で講義された内容がベースになっているのですが、学生さんにこうお話になっています。「これは将来中国語に翻訳されて、中国の人が読むかもしれないんだから、それをちゃんと念頭に置いて発言しなさい」と。ここでもうひざを打ちました。日本にもこんな人がいてくださったんだと。それに続いて、「日本人だけに通じる仲間内の話法で話すのもやめなさい」というふうにおっしゃっていたりとか、もう我が意を得たりと感じました。

 さらに、『街場の中国論』の増補版は2011年に出されましたが、その冒頭で、日本の反中や嫌中の人たちは、とにかく自分たちの価値観と違うことをやっている中国にどうも気分が悪いと言っているけど、「違うんだから仕方ないというところから入るべきだ」と。人間だから感情はあるけれども、それをいったん置いて物を考えないと冷静な判断はできないよ、と内田さんはおっしゃっています。その上で、中国とはお互いに平等なパートナーとして関係を構築していきたいし、なおかつ13億人の人口を抱える大国がとにかく安定していってもらいたいと願うと続けてらっしゃいました。誤解を恐れずに言えばどれも当たり前のことなんですけれども、その当たり前のことが日本のメディアでまったく見られなかった。それがとても新鮮な意見に映りました。

内田:常識が新鮮というのは困りますね。

山田:本当です。そういうことで、一気に内田さんのファンになりました。

内田:ありがとうございます。

山田:とにかく常備薬みたいな形で、私は『街場の中国論』を手元に置いています。もちろん、頻繁に読むというわけではないんですが、中国を見るときには、感情を置いて冷静にということを気付かせてくれる本で、とても貴重な本として活用させていただいています。

 2011年に増補版を出されてからからもう7年たちます。今回は是非、今現在の『街場の中国論』をお伺いしたいなと思っています。まず最近の中国、習近平になってもう2期目に入りましたけれども、どういうふうにご覧になっていますか。

今の中国は安定期にある

内田:僕が中国をわりとまじめに観察し始めたのは毛沢東時代からなわけですが、そこから考えてみると、今ほど安定的な政権はわりと珍しいんじゃないかという気がします。もちろん、短期的に見ればいろいろありますから、日本のメディアはそこに主観的願望を投影して中国の政治が大きな問題を抱えているように書きますが、文化大革命の時代とか天安門事件の時代から比べてみると、今の中国は相対的には安定期にあると思います。

 とにかく過剰にイデオロギー的ではなくなりつつあると思います。アメリカが退潮してきたこの国際政治の空隙を突いて「世界のリーダー」になるという野望が中国にはありますから、国際社会で認知されることをかなり優先的に配慮している。そのためには国際社会の基本的なルールを守ろうという努力はしているように見えます。

 国内においてはネットの情報規制とか人権弾圧とかご本(『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』)で書かれていたような格差の問題がありますけれど、傍から見ているとそういった問題に関しても、中国はちょっと恥ずかしがっているというか、微妙にごまかそうとしている。「大した問題じゃないんだ」というふうに言い訳している感じがします。毛沢東の時代だったら、「大した問題じゃない」どころか「これが正しいんだ。他の国も中国に学べ」という感じでしたけれど、そうではないですよね。

コメント16件コメント/レビュー

>19世紀末の全世界を単独の政体で支配することを考えたら、中国の統治者の心労は想像できると思うんです。そんな統治の経験がある国なんか、歴史上一つもないわけですから、習近平は本当に手探りだと思いますよ
だから専制主義なのか!と言っても、それが12億人や10億人とどれほど違うんだろ?と言う事は代々のチャイナのトップと同じじゃないですか?(2018/02/27 22:11)

オススメ情報

「中国生活「モノ」がたり~速写中国制造」のバックナンバー

一覧

「内田樹氏に改めて聞く『街場の中国論』」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>19世紀末の全世界を単独の政体で支配することを考えたら、中国の統治者の心労は想像できると思うんです。そんな統治の経験がある国なんか、歴史上一つもないわけですから、習近平は本当に手探りだと思いますよ
だから専制主義なのか!と言っても、それが12億人や10億人とどれほど違うんだろ?と言う事は代々のチャイナのトップと同じじゃないですか?(2018/02/27 22:11)

>とにかく過剰にイデオロギー的ではなくなりつつあると思います
それって昨日までの事じゃないですか?(2018/02/27 21:48)

>この本は、大学で講義された内容がベースになっているのですが、学生さんにこうお話になっています。「これは将来中国語に翻訳されて、中国の人が読むかもしれないんだから、それをちゃんと念頭に置いて発言しなさい」
この意味が分かりません。学生の発言も翻訳されるかもなんですか?それにしたって、学生が自由に考えた結果を話して良い筈ですよね?忖度を強要って哲学者のする事かしら?(2018/02/27 21:11)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

旅行業だけを追いかけて大きな成長が 見込める時代ではなくなりました。

高橋 広行 JTB社長