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「充電だ」と消えた運転手、北京のEVバス事情

独裁の息苦しさといい加減さが併存する中国

2018年3月8日(木)

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北京にある中国国営中央テレビ(CCTV)本社ビルにポッカリと空いた穴からも鮮やかな青空がのぞいていた(2018年1月)

 1月末、約1年半ぶりに訪れた北京で印象に残ったことの一つに、空の青さがあった。

 私が拠点を置く上海でも、酷い時には1メートル先にいる人の顔が霞んで見えるほど酷かったPM2.5の汚染が深刻化したのは2013年12月のこと。あの冬、上海から青空は完全に消えた。暖房等、石炭を燃料に使うことの多い北京など中国の華北地方や東北地方の汚染は上海よりさらに深刻だった。

 その後、2016年6月に訪れた北京の大気汚染は、2013~14年当時よりもずいぶん改善していたが、滞在した3日の間、空は快晴で雲一つ無い天気だったにもかかわらず、空は淀んだ黄色い空気に覆われ、青空はどこにもなかった。

 それが今回は、1週間の滞在中、抜けるような鮮やかな青空を何度も見た。一昨年の訪問時、中国科学院と国家気象センターで環境汚染を研究している若い研究者2人に、解決にはどのぐらいの時間がかかると想定しているのかと聞いたら、2人は顔を見合わせて「50年ぐらいかかるのではないか」と話していた。それがどうだ。わずか4年で青空は戻ったのである。

 私が意見を求めた2人は恐らく、若い研究者らしく科学的、客観的要素に基づいて考え、50年という数字を口にしたのだろう。それが、この世の終末を思わせるような色をしていた空が、若い研究者の考える常識を覆す4年足らずという短期間で目に染みるような青さを取り戻すことができたのは、常軌を逸するような手段を執ったのだろうということが容易に想像がつく。

 当コラムで2月に2回にわたって取り上げた低所得者層の北京からの追い出しも、青空が戻ったことと大いに関係している(「売血・売春…行き場なくす中国の『下層の人間』」、「中国の出稼ぎ青年を無差別殺傷に追い込んだもの」参照)。

 中国の華北地方では長い間、煮炊きに練炭と七輪を使っている家庭が多かった。私が1988年に留学していた山西省太原もそうで、朝晩の炊事時ともなると、集合住宅の階段や廊下は、各家庭が煮炊きに使う練炭の饐えたような臭いと煙が建物に充満した。慣れればなんとか対応できるものではあるのだが、こうした中国人宅に日本から観光できた友人を連れて行くと、階段を上り始めて程なくして鼻と口を手のひらで覆い、目をしょぼつかせて「息ができない」といって悶絶するほどの濃度だった。

今まで誰も描くことのなかった中国版ヒルビリー・エレジー
3億人の中国農民工 食いつめものブルース

この連載「中国生活「モノ」がたり~速写中国制造」が『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として単行本になりました。各界の著名人からレビューをいただきました。

●私はこの例外的に「間合いの近い」取材方法を成り立たせるために著者が費やした時間と労力を多とする。長い時間をかけて、息づかいが感じられるほど取材対象の間近に迫るというスタイルは現代ジャーナリズムが失いかけているものである。
(哲学者 内田樹氏によるレビュー「感情の出費を節約する中国貧困層のリアリズム」より)

●「ブルース」という単語に何とも(やや古びた)哀愁があり、そしてカバーの写真の農民工の写真には、記念写真では決して撮れない、私自身が感情移入して泣いてしまいそうなリアリティがある。
(中国問題の研究家 遠藤誉氏によるレビュー「執念の定点観測で切り取った、中国農民工の心?」より)

●だが、最近の日本のソーシャルメディアでは、「親の時代はラッキーだった」、「親の世代より、子の世代のほうが悪くなる」といった悲観的な意見が目立つ。中国においても、農民工の楽観性や忍耐がそろそろ尽きようとしているようだ。
(米国在住のエッセイスト 渡辺由佳里氏によるレビュー「繁栄に取り残される中国の『ヒルビリー』とは?」より)

●同書で描かれるのは、時代と国家に翻弄される個人たちだ。歴史的背景や、共産党政権の独自性うんぬんといった衒学的な解説はさておき、目の前で苦悶している、もっと距離の近い苦痛の言葉だ。
(調達・購買コンサルタント/講演家 坂口孝則氏によるレビュー「年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先」より)

コメント6件コメント/レビュー

上海の路線バスでも似た様な事は起きてますよ。
さすがに市内で降車させるまではないですが、バス停に止まりっ放しで充電し続けるとかは普通になりますよ。
なので、普通に行けば20分程度の距離をタイミングが悪いと40分以上掛かります。
文句を言う乗客も居ますが、ほとんどは「没办法」と思っているみたいですけど。(2018/03/08 18:35)

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「「充電だ」と消えた運転手、北京のEVバス事情」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

上海の路線バスでも似た様な事は起きてますよ。
さすがに市内で降車させるまではないですが、バス停に止まりっ放しで充電し続けるとかは普通になりますよ。
なので、普通に行けば20分程度の距離をタイミングが悪いと40分以上掛かります。
文句を言う乗客も居ますが、ほとんどは「没办法」と思っているみたいですけど。(2018/03/08 18:35)

いつも関心を持って読ませていただいております。ただ、今回は。中国生活「モノガタリ」…という題名なので、読者にほっとした感想で異なる理解を与えてしまいます。今回は北京生活、一時的なとしていただいたほうが(笑)が良いかと。
中国は一つの国ではなく、欧州のような地域ですから、北京以外では、環境汚染が依然として深刻な地域都市は捨てて余るほどあるでしょう。今回の記事は、中国共産党という名称の政治団体が推し進める方向を是認するものに聞こえてしまいます。それで良いのと?
私は昔、重慶市政府幹部と食事したことがあり、環境汚染が話題になりました。件の環境部長殿は、日本にも大気汚染の被害が広がるなら、日本も費用を負担して改善策を中国に申し出るべきだと主張されました。その考えに賛成は出来ませんが、これが高級官僚の考え方かと、理解しました。(2018/03/08 17:53)

法律だけでは伝わりにくい中国独自の空気が良く表現されていて、深く頷いた。(2018/03/08 14:07)

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