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習近平が震えた真夏の怪文書

政変に利用され始めた中国の農民たち(前編)

2017年11月13日(月)

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(写真:AP/アフロ )

 トランプ米大統領が3日間にわたる訪中を終え2017年11月10日午前、北京から中国を後にした。トランプ氏を迎えた習近平国家主席は、2017年10月末の中国共産党第19回党大会で2期目を決めたばかり。事前に党規約入りがうわさされた「習近平思想」という直接的な表現は見送られたが、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」と、個人名を盛り込むことに成功した。党規約に個人名が記されている中国歴代の指導者は新中国建国者の毛沢東、「改革開放の総設計師」として中国経済を今日の隆盛に導く礎を築いた鄧小平の両氏のみ。習氏の前2代の総書記である江沢民氏が打ち出した「三つの代表」、胡錦濤氏の「科学的発展感」も党規約に記されているが、個人名を入れることは叶わなかった。

 この党大会では次の5年を担う中国の最高意思決定機関、共産党中央政治局常務委員として7人が選出されたが、全員が60歳以上で、次代の中国を担う50歳代以下のホープの選出は見送られたため、習氏が長期政権を目指していることの証左だと指摘されている。習氏が2期目の総書記に選出された10月25日、トランプ大統領は、「extraordinary elevation」(異常な栄達)という表現を用いて直接祝福したことをツイッターに記している。

 新中国の2大カリスマ指導者である毛沢東、鄧小平に並ぶ権威に手が届きかけているとまで称されるようになった習氏。だが、党大会を控えた真夏の中国では、習氏打倒を画策する一派が仕掛けたと思しき怪文書が農民の間を中心に出回っていた。

SNSに飛び交った農民工宛て怪文書

 観測史上最も暑い40.9度を記録するなど酷暑に見舞われた2017年の上海の夏。その暑かった今年の上海で8月も半ばにさしかかろうとしていたある日のこと。真夜中になっても33度にピタリと張り付いて動かないスマホの温度計を恨めしく眺め、あまりの寝苦しさにベッドの上をゴロゴロと寝返りを打ちながら、中国のSNS「微信(Wechat)」を眺めていた私は、あるつぶやきに目を止めた。中国内陸の農村からある大都市へ出稼ぎに行き働いている「農民工」の知人の一人が、友人やグループに転送して拡散していたもので、表題には、

「たったいま得た重要な通知。8月18日、中国は徹底的に変わる」

という文字が躍っていた。少し追跡してみると、主に都会で働く農民工や彼らの故郷の農村にいる家族や友人の間で拡散しているようだった。

 興味を引かれ、投稿に貼られてあったリンクを開いてみた。PC版とスマホ版の両方があった。スマホ版のページは14ページ構成で、雑誌なら表紙に当たる最初のページの最上部には「一帯一路でウインウイン」と大書され、その下に、「中国共産党第19回全国代表大会を迎えるために、習大大(習お父さん)が間もなく、22項目の最新政策を公布し、祖国を新たな段階に導く。習主席を皆で支持しよう!」と呼びかけていた。

習近平体制を揺さぶる怒れる農民工たちのノンフィクション
3億人の中国農民工 食いつめものブルース

貧しくても、学歴がなくても、田舎者でも、希望を胸に生きてきた。
けれど、繁栄から取り残された――。
磐石の習近平政権を、絶望した3億人の農民工たちが揺さぶろうとしている。
これは、今まで誰も描くことのなかった、『中国版ヒルビリー・エレジー』だ。
本コラムの著者、山田泰司氏だけが知っている農民工の姿をこの1冊で。

コメント7件コメント/レビュー

当該記事を台湾独立主義者の仕業と受け止める筆者の知人の姿には、
洗脳の影響というよりは、現在の中国人民の限界を感じた。

確かにこの手の怪文書が出回り、庶民を失望させることができれば、
台独分子にとって(香港の民主運動家や、習近平氏の政敵にとってもだろうか)
都合がいいのかもしれない。
だが私自身は、「窒息しかかった庶民の魂の叫びの可能性もある」と考えた。
かの政策は、実現性はさておき、その知人にとっても喜ばしいものであるはずだからだ。

誰かに都合がいい事柄だからと言って、「そいつが仕掛けたに違いない」と断じるのは
その断じた人物自身が、欲と打算だけで思考、行動している証左ではなかろうか。
理念や理想を信じず、他人の純粋な想い、意思に共感できない。

欲望は社会の発展には必要だが、理想を持たず、欲望のままに突き進む社会は
遠からず破綻するだろう。(2017/11/15 00:34)

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「習近平が震えた真夏の怪文書」の著者

山田 泰司

山田 泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター

1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年の上海在住後は、中国国営雑誌「美化生活」編集記者、月刊誌「CHAI」編集長などを経てフリーに。2010年からは、「EMSOne」編集長も務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

当該記事を台湾独立主義者の仕業と受け止める筆者の知人の姿には、
洗脳の影響というよりは、現在の中国人民の限界を感じた。

確かにこの手の怪文書が出回り、庶民を失望させることができれば、
台独分子にとって(香港の民主運動家や、習近平氏の政敵にとってもだろうか)
都合がいいのかもしれない。
だが私自身は、「窒息しかかった庶民の魂の叫びの可能性もある」と考えた。
かの政策は、実現性はさておき、その知人にとっても喜ばしいものであるはずだからだ。

誰かに都合がいい事柄だからと言って、「そいつが仕掛けたに違いない」と断じるのは
その断じた人物自身が、欲と打算だけで思考、行動している証左ではなかろうか。
理念や理想を信じず、他人の純粋な想い、意思に共感できない。

欲望は社会の発展には必要だが、理想を持たず、欲望のままに突き進む社会は
遠からず破綻するだろう。(2017/11/15 00:34)

山田氏も取り上げているが、日本でほとんど知られていないのが、彭麗媛夫人の人民解放軍における権力基盤の強固さだろう。文工団は、民撫活動部隊として、八路軍発足時から共産軍の拠点であった農村部民衆への直接プロパガンダ主力として活動し(背景には清朝以来の低い識字率から党機関紙・人民日報を母体とする共産党宣伝部の影響力の低さがあった)、過去の軍閥勃興・内乱を教訓として複数の地方面軍区(軍管区)や空・海・第二砲兵(戦略ミサイル)軍に指揮系統が分割遮断された人民解放軍組織内で、全解放軍内に政治将校的位置づけも併せ持ちつつ、軍区を横断した独立組織構造を現在も維持している。文工団の民撫活動の顕著な影響は、文革時代に軍が紅衛兵と協調する為に普及させた文革劇(江青が主導)や、文革舞踊の名残りとして、今でも夜な夜な壮年の紅衛兵世代が公園に乱舞する中国中の普遍的風景にも見られ、根強い毛沢東信奉にも大きな影響を与え続けている。この組織の最高位将軍(日本では想像も難しいかもしれないが、人民解放軍軍が提供するTVチャンネルがあり、夫人が将軍の軍服姿で歌謡番組のトリを務める姿が頻繁に放送されている)が彭麗媛夫人であり、彼女の元に、全人民解放軍部隊の司令官幕僚将官の思想動静はもとより、公私にわたる行動が逐一レポートされていることは明らかで、これが習主席の軍全体掌握の鍵となっている。それゆえに、現在の習体制(及び共産党文民官僚)の軍支配の根幹である文公団の解体はあり得ないと、山田氏も指摘したのではないかと思う。(2017/11/14 23:44)

日本人目線でチェックすると、2の医療と教育を完全無償化、4の養老(年金)の待遇を引き上げ、6.計画生育政策を撤廃し多子多産を許可、15.対外援助を止める、17の公用車を廃止、21の都市と農村で戸籍を一本化 あたりで、これデマでしょ? それともツッコミ待ちかな…などと思うのですが、これを台湾独立主義者の仕業と受け止める農民工の知人にも吃驚。
思想洗脳がいかに怖いかを示す格好の事例だと思います。(2017/11/14 13:00)

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