• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「ずっとここにいて」と言われるシニアたち

製造業の国タイを支える日本の「定年退職者」

2017年7月10日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 GDPの約34%、輸出額の90%弱。
 タイ経済の中核をなすのは、自動車産業をはじめとする製造業だ。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)の生産拠点として揺るぎない地位を確立したタイ製造業の飛躍的な成長劇を語る上で見逃せないのが、日本のシニアたちの存在である。日本でキャリアを積み、タイに駐在し、その力量を買われて、定年退職後もタイの製造業の発展と向上に従事してきたシニアたち。異国の地で彼らが成し遂げてきたのは、製造業には絶対不可欠の「安全」の確保だった。3人のシニアのチャレンジを紹介したい。

 「タイで仕事をするコツ。それは辛抱の一言ですね」 

 こう苦笑するのは、三井物産グループのタイの鋼板加工拠点バンコクコイルセンターでアドバイザーをつとめる中村博記さん(65歳)だ。

「安全を守れない会社にモノづくりの資格なし」がポリシーの中村博記さん(65歳)。バンコクコイルセンターでアドバイザーとして活躍している。

 1975年にトヨタ自動車に入社し、2001年にトヨタモータータイランドの駐在員としてタイに赴任した中村さんは、豊田通商のタイ子会社であるTTスチールプロセッシングの工場長を経て、2016年から現職に就いた。携わっているのは一貫して、自動車用鋼板の切断や加工業だ。

トヨタ式のツールが揃い、そして使われていない

 タイで働き始めた中村さんがまず驚いたのが、トヨタ自動車が長い時間をかけて構築してきた管理用のツールが現場に豊富に揃っていたこと。
 そして、それらがほぼ形骸化している惨状だった。

 「人材別のスキルをグラフ化したスキルマップや帳票など、トヨタの現場で使っていたツールはほぼすべて導入されていましたが、最初に使っただけで更新されていない。現場に根付いていませんでした。理由は、出張ベースで日本からやってくる指導者が3か月の出張期間中になんとか成果を出して本社に報告をしようと、無理やりタイ人にやらせていたためです。現場の人間が特に必要性を感じていない以上、定着するはずがない。その人が日本に戻ると誰も使わなくなって、現場には使われないツールが山積みでした」

 技術指導ができる人材を1人バンコクに駐在させればその費用は莫大だ。だからこそ、多くの会社はビザが許す期間を利用し、技術指導員を派遣している。限られた期間中に成果をあげたいと懸命に指導に走る日本人指導者の気持ちがわからないではない。

 だが、タイ人従業員が腹落ちしていなければ、それは絵に描いた餅だ。

 一番好ましいのは、タイ人従業員がニーズを感じて自ら動くことだが、ただ待つだけではいつ機会が熟するのかわからない。かといって、上から「やれ」と押し付けてしまったら、期間限定でやってくる日本人指導員と五十歩百歩。中村さんは現場の人間が「必要だ」と実感し、行動せずにはいられないような働きかけをした。

 「一つの方法は競争心を煽ること。たとえば、世界中の工場の監査の結果、品質レベルが日本が100でタイが90、トルコが95という結果だったら、『いいところまで来ているけれど、まだ上にはトルコがいる。日本に追いつくように頑張ろう』と発破をかける。この競争心は効きますね」

 問題意識が芽生えてきたタイミングで人を選び、自社よりももっと優れた仕組み、優れた生産性を実現している他社工場を視察する機会を作ることも効果的だという。百聞は一見にしかず。現場を見せて、自分たちに足りないのは何かを実感し、「今のままではまずい、と思わせる試みが、改善への意識を高めていく。 

コメント3件コメント/レビュー

このレポートに書いてある事柄は国内の中小ものづくり企業でもおなじです。役にもたたない横文字好きコンサルタントではなく、このような現場のベテランたちが海外に行ってしまう、行かざるを得ない現実にメスを入れるべきと思います。尤もその様な方々もタマ切れが近いかも知れませんが。(2017/07/10 21:34)

オススメ情報

「バンコク繁盛記」のバックナンバー

一覧

「「ずっとここにいて」と言われるシニアたち」の著者

三田村 蕗子

三田村 蕗子(みたむら ふきこ)

フリーライター

福岡生まれ。津田塾大学学芸学部卒業。出版社勤務後、フリーライターに。ビジネス誌、経済誌、流通専門誌などで活躍中。2014年末から活動拠点をアジアのハブであるバンコクに移した。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

このレポートに書いてある事柄は国内の中小ものづくり企業でもおなじです。役にもたたない横文字好きコンサルタントではなく、このような現場のベテランたちが海外に行ってしまう、行かざるを得ない現実にメスを入れるべきと思います。尤もその様な方々もタマ切れが近いかも知れませんが。(2017/07/10 21:34)

この人達に拍手を贈りたい。人間歳をとったら、後は「教える仕事」以外に残らないよと先輩が言っていたのを思い出します。私もその先輩よりも歳が上になりましたが、「教える内容」はともかく「教え方」ですよね。ステキなお話でした。(2017/07/10 17:02)

日本の年配者には素晴らしい方々が多い。年配者の皆様の努力があったからこそ、今の我々がある。

日本はすごい、日本の技術は世界一、というような主張は多いが、そうではなくて、素晴らしい先輩達のおかげで今の我々があるだけだと思う。

しかしそれも今や中国や諸外国の頑張りに脅かされようとしている。そういう危機感を持って頑張ることが大事だ、という話だと考える。(2017/07/10 11:26)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トレンドの移り変わりが早い日本での経験は、海外にも応用できる。

桝村 聡 高砂香料工業社長