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清水建設、入社1年目からいきなりベトナムへ

課題の国際化を若手に託す

2017年9月29日(金)

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都市の再開発や東京五輪に伴う建設需要の増加で、業績は2期連続で最高益を更新した。だが、将来には不安要因も。成長に不可欠な海外事業の拡大には人材が不足しているからだ。意識的に若手社員を海外の現場に送り込み、典型的な内需産業の単一文化を変えようとしている。

日経ビジネス2017年7月17日号より転載

ベトナム初の地下鉄工事を受注。地盤が不安定なため技術力が要求される(写真=宮下 良成)

 ベトナム最大の経済都市ホーチミン。空港から街の中心部に向かう道は、市民の足であるバイクであふれかえっている。朝夕のラッシュアワーは激しい渋滞となり、自動車で1kmを移動するのに数十分かかることも珍しくない。

 そんな劣悪な交通事情を改善するため、あるプロジェクトが動いている。旧市街を覆う巨大なバリケードの下でベトナム初の地下鉄トンネル工事が始まった。「都市鉄道1号線」は2020年の開通を目指している。街の交通事情を根本から変えるプロジェクトで、最も難工事の区間を任されたのが清水建設だ。受注額は約246億円、前田建設工業とのJV(共同事業体)で工事を担当する。成長するベトナム市場にくさびを打つ最重要案件だ。

 5月26日、地下トンネルを掘り進めるシールドマシンの発進式が開かれた。建設予定のバーソン駅の真上で、ベトナム国旗と同じ赤と黄色の民族衣装に身を包んだ男性たちによる太鼓の演奏から式典は始まった。挨拶に立ったグエン・タン・フォン市長(人民委員会委員長)は「公共交通の近代化において、特別な意義を持つ節目となる。無事故で、品質の高いインフラが完成することを期待している」と述べた。

 もっとも、この地下鉄プロジェクト、そう簡単なものではない。サイゴン川に沿って形成されたホーチミンの市街地は、もともと湿地帯で地盤が不安定。地下鉄が通る上には、100年以上前に建てられたオペラハウスなどの歴史的建造物が並ぶ。トンネル掘削の過程で、地盤のバランスを少しでも崩してしまうと、地上の建物が傾きかねない。施工管理には細心の注意が必要となる。

 ベトナムは年率5~7%のGDP(国内総生産)成長率が続く。中間層の拡大も著しく、インフラ整備が急ピッチで進む。難易度の高い案件を成功に導けば次なる受注につながる。清水建設からはえりすぐりのベテラン社員がベトナムに送り込まれていると思いきや、現場事務所には入社してまだ2年目という竹内章人さん(27)の姿があった。

トンネルを掘削するシールドマシンの発進式にはホーチミン市長(右から4人目)らが出席(写真=宮下 良成)

入社1年目からベトナム赴任

 大学の先輩が清水建設の海外現場で活躍していたという竹内さん。会社として海外案件に積極的に取り組んでいると教えてもらったことがきっかけで16年に入社した。学生時代に留学経験もあり将来は海外で勤務したいと考えていたが、1年目からベトナムで働くことになるとは思いもよらなかった。

 国内での現場経験をほとんど積まずにベトナムに来て早速、異国ならではの洗礼が待っていた。まず担当したのはトンネルの基礎杭の品質管理。日本なら発注時に求めた規格通りの杭が届くのが当たり前だが、現地ではそうはいかない。長さが違う杭が準備されていることもしばしば。品質や工期に影響を与えないよう対応に追われた。

 2年目は地下鉄駅舎の骨組みの建設を担当している。「最初は専門用語も全く分からなかった。現場を見ながら常にどのような工程管理が最適かを意識している。将来は海外で現場監督が務められるようになりたい」と話す。

 かつての清水建設では、海外勤務は、若くても30代の中堅社員からというのが常だった。だが、海外展開を広げていかねばならない時代、これでは対応しきれない。井上和幸社長は「最重要課題は世界で現場を管理できる人材の育成だ」と社内にも指示を飛ばす。

 そこで意識的に若手社員に海外経験を積ませている。入社10年目までの社員のうち、海外の現場で働いた経験がある者を3割にするという社内目標が11年度に設定された。これまでに130人を超える若手社員が海外の現場に送り込まれたが、竹内さんのように海外の重要プロジェクトに入社1年目から配属となる事例も出始めた。

 若手の海外配属はすんなり受け入れられたわけではない。「特に海外の現場から反対された」と、海外事業を担当する北直紀・常務執行役員国際支店長は打ち明ける。限られた人材で現場を回す海外からすれば、「配属するのは日本で教育してからにしてほしい」というわけだ。こうした意見もあったが、「育ててもらってから使うという甘い考えは捨てろ」(北常務)と実行に移した。

同じホーチミン市内で橋も建設中。受注額207億円の大型プロジェクトだ(写真=宮下 良成)

コメント3件コメント/レビュー

記事の内容にも、お二方からのコメントにも、大変感銘を受けました。私の仕事は建設業ではありませんが、励みになります。勇気をいただきました。ありがとうございました。(2017/09/29 19:52)

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「清水建設、入社1年目からいきなりベトナムへ」の著者

浅松 和海

浅松 和海(あさまつ・かずうみ)

日経ビジネス記者

2013年日本経済新聞社入社。整理部で2年間紙面編集をしたあと、証券部で化学業界や株式相場を担当。2017年4月から日経ビジネス記者に。ウリ科が苦手。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

記事の内容にも、お二方からのコメントにも、大変感銘を受けました。私の仕事は建設業ではありませんが、励みになります。勇気をいただきました。ありがとうございました。(2017/09/29 19:52)

タイトルの『入社1年目からいきなりベトナム』も『現地採用の人材を日本で育成』も、『日本企業も漸くここまで来たか!』と感慨深い。私自身は大卒で、純日本的な企業で2年間働き、その後米系企業に中途入社して定年まで働いた。この二つの企業体質はまるで違うものだった。その米系企業で30歳丁度でアメリカ駐在の仕事で派遣された。基準は仕事の能力以外に英語で当時の社内基準を超える事だった。試験は筆記と面接で、辛うじて合格し家族同伴で初めての海外旅行に旅立った。当時、筆記にはそれなりに自信はあったのだが、英会話能力は酷いものだった。対面での会話なら身振り手振りも交えて何とか意思疎通出来たが、初日から早速電話で話しかけられたのには困り果て、「名前と要件、それと席の場所を教えて下さい。今から行きます!」と電話で応対する状態が半年続いた。オフィスは建物の番号と通路番号があればその人の所には辿り着ける。敷地が広いので、建物が離れている場合は、マイカーで尋ねる建物まで運転し、電話をかけて来た人を訪ねては用を足していた。アメリカで仕事した事で身に付いたのは、自分の意思や意見を相手に伝える事。綺麗な英技でなくても良いから、自分を主張しないといつも貧乏くじを引かされると分かったから『背に腹は代えられない』から恥ずかしかってなどいられない。この駐米の経験を経て、日本に帰ると自己主張が強くなっている事に気付く。10人の会議で9人が自分と違う意見でも、それに『合わせる』と言う対応を嫌う様になっていた。日本人は「長い物には巻かれろ」とか「郷にいらば郷に従え」、酷いのは皆と違う意見を持っていると「村八分」と言って仲間外れにされたりと言う村社会が基本で、「民主主義国家」と言う事すら疑わしくなる有様だ。そんな日本の企業で「入社1年目からいきなりベトナムへ」は読んだだけで嬉しくなってしまう。こう言う企業が増えれば日本も人口減少とともに沈没してしまう事は避けられるのではないかと期待出来る。事建設業界に限っていうと、未だに政府や地方公共団体に公共事業で金を使う事に期待している状態はみっともない限りで、もっと世界で活躍して欲しいと思っている。帰国した人は自己主張が強くなっていると思うが、それを許容する風土も醸成して欲しいものだ。(2017/09/29 10:12)

タイトルと中身がだいぶ違うが、ベトナムで11年仕事をしてきた私からすると、若手を海外にいきなり送るのは実はとても合理的だ。

というのも、若い方が余計な固定観念がなく、現地の人とも馴染みやすく、また、最近の若い人のモチベーションは好奇心や自己実現に大きなウェイトがあることが昨今よく言われているためだ。

若い世代は、単純な昇給や待遇ではなく、自分がチャレンジできる環境、新しいことにとても興味を示して頑張るところが昭和世代よりも大きい。

むしろ昭和世代は保守的であると言って良いくらいだ。

そこで、若手がどんどん海外で新しいことを頑張って現場を切り開いていくというのは、とても健全な形だと感じる。

若手は経験もでき、実力と自信がつき、逞しくなっていく。自分も含め昭和世代の年配者は柔軟性に乏しいので、若手に上手く任せて、彼らが大きな失敗をしないよう注意しながら挑戦させたらいい。(2017/09/29 08:59)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官