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火をつけろ、幕を引け、すべては次の研究のため

「ぶれないn」を求めて/研究所リーダー 中原光一さん

2017年8月28日(月)

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 ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が、その重要性を強調した「基礎研究」。しかし、それに携わる人々は「研究所の奥で日々ひたすら研究にいそしんでいる」イメージで、実像になかなか触れる機会がありません。
 例えばメーカーの「商品開発」に関しても、脚光を浴びるのはヒットアイテムの商品化を手掛けた「商品企画」部門で、その基盤となった基礎研究にはなかなか光が届きません。
 このコラムでは、メーカーの研究所で働く「基礎研究の人々」にお話をうかがっていきます。なぜメーカーで基礎研究をすることを選んだのか、なぜその研究テーマを選んだのか、日々どんな研究生活をしているのか、手応えや悩みは? などなど、知られざる生態に迫ります。
 今回訪れたのはサントリーワールドリサーチセンター。2015年5月、京都府精華町に新しい研究開発拠点として作られた「基礎研究の館」です。

 サントリーは2004年からR&Dの表彰制度を設けているが、その第1回MVPに選出されたのが中原光一さんだ。現在は研究所を率いる立場にある中原さんには、映画『コラテラル・ダメージ』を見て、頭の中にあったものが映画の中にあったものと思いがけずつながり、「この映画を見たのは、このためだったのか」と腑に落ちた経験がある。

サントリーグローバルイノベーションセンター 研究部 上席研究員 博士(農学) 中原光一さん(写真:行友重治、以下同)

 1988年に入社以来、取り扱いが難しいがゆえに、教科書がほとんどなく先輩研究者もあまりいなかった烏龍茶に含まれるポリフェノールの研究をしてきた中原さんは、10年近く過ぎたところで“超臨界水”に出合った。

「酵素いらないじゃん」

 液体の水は温度が0度で固体になり、100度で気体になるが、これは気圧が1気圧の場合の話。高所でお湯を沸かすのが難しいのは、気圧が低いからだ。気圧が上がりすぎても、1気圧のときには見られないような現象が起こる。気圧を「22.1MPaより高い圧力をかけると、0.3くらいの、ものすごく濃い水蒸気、高圧の水のガスになるんです」と中原さんは言う。生活環境では、空気中の水の密度は何万分の1という薄さなので、かなり濃厚な水蒸気である。

 「あ、これがあるなら酵素いらないじゃん、と思ったんですね」

 この説明だけで理解可能な人は中原さん級だ。
 超臨界状態の水では、水(H2O)が水素イオンと水酸化物イオンに分離される。水素イオンは陽イオン、水酸化物イオンは陰イオンだ。これらが活発に動き出して、イオン状態が増大するのだ。

 「ということは、でんぷんに圧力をかけると糖になるということなんですよ。デンプンを糖に分解する酵素にアミラーゼというものがありますが、これはつまり、酵素を使って加水分解をしていることになるんです。私はそれまで、デンプンを糖にするには酵素が必要だと思っていた。でも、超臨界水のようなものを持ってくると、酵素がいらない。ワクワクしますよね」

 そのワクワクを中原さんは烏龍茶にぶつけた。

コメント2件コメント/レビュー

 さすがにいい言葉をお持ちだ。「理学(ことわりの学問)」「工学(実体化のための技術)」。さすればその背骨として”教養”が必要とされる。
 いくら目標を達成しても、それが悪影響を広げるようでは大問題になる。そういった結果を避けようとすれば、当然のこととして教養=人としての常識が重要になる。
 いい記事です。(2017/08/29 06:11)

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「火をつけろ、幕を引け、すべては次の研究のため」の著者

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 さすがにいい言葉をお持ちだ。「理学(ことわりの学問)」「工学(実体化のための技術)」。さすればその背骨として”教養”が必要とされる。
 いくら目標を達成しても、それが悪影響を広げるようでは大問題になる。そういった結果を避けようとすれば、当然のこととして教養=人としての常識が重要になる。
 いい記事です。(2017/08/29 06:11)

基礎研究の人々って皆さんおおらかで、好き。少なくとも直近でのノーベル賞受賞の方々が物差しであって、浅学菲才な私にとって、厳密な基礎的研究の意味も定かでないのだが、産・学協働乃至、産・学・官協働と言ったスローガンの下、即刻ギンギラギンの様相で登場の方々と異なる。陶芸の世界でもよく聞く、土と火を見つめ釉薬のたたずまいを無心に瞑想して出窯を期す心根とも類似している。根本に自然界に科学は厳然として存し、技術はその改善、人間の生活に利するよう創意工夫を施すに過ぎないと言う人間の分際をわきまえていることが肝要なのではないだろうか。これを忘れた処には人間の傲慢や生活の改善どころか改悪に繋がるものさえ散見できる。自然災害の悲惨さの記憶から忘却に至る所謂当該件の風化が姦しいが、つたえる、そしてつなぐが科学と技術の密接ではあるが、決定的に異なる事を念頭に、この事をつたえつなぐ信念がないといけない。火をつけろ、幕を引け、すべては次の研究のため-は、独立のフレーズでは如何にも物騒ながら、そのこころを問うて心がおおらかになった。火をつけるのも、幕を引くのも、次の研究のため― は、真に重且つ大なる言葉であると考えるが如何。(2017/08/28 10:19)

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