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「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」

社員の「本来業務」の明確化が不可欠に

2018年4月27日(金)

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社員を「クビ」にせず抱え続ける余裕がなくなった

 もともと副業解禁論が出てきたのは、多様な働き方を求める人が増えたことが背景にある。サイボウズの青野慶久社長が政府委員などとして、「副業禁止を禁止せよ」と強く主張したことなどをきっかけに、働き方改革を掲げる安倍内閣が一気に「解禁」に舵を切った。

 政府が「副業解禁」に動いたのは「働き方の多様化」も一因だが、最大の理由は深刻化する「人手不足」が背景にあった。ひとつの会社に縛り付けておく「働かせ方」を続ければ、労働人口の減少とともに、人手はどんどん足りなくなる。ダブルワークなどを解禁すれば、効率的にひとつの仕事を終えた人が、他の仕事に就くことで、人手不足を吸収する一助になる。そうした政府の方針変更を受けて、企業が「副業解禁」に動いているわけだ。

 もっとも、副業解禁と言っても会社によって「想定」が大きく異なる。冒頭の新生銀行では、英語の得意な人が翻訳の仕事をすることなどを想定しており、競合する金融機関や情報漏えいのリスクが生じかねない企業での副業は除くとしている。

 5月から副業解禁を決めたエイチ・アイ・エス(HIS)は、入社1年以上の正社員約5500人を対象にするが、訪日外国人(インバウンド)向けの通訳ガイドなどに就いてもらうことを想定しているという。他社の従業員として働くなど、雇用関係が発生する勤務は対象から外し、引き続き「禁止」する。個人の技能を生かし業務委託や個人事業主として働くことを認めるという内容だ。

 いずれも、個人の能力向上に役立つような「仕事」を社外でしてもらうことで、会社での「本業」にもプラスになると考えているようだ。一方で、会社で身につけた「専門能力」を社外、特に他社で発揮するような「副業」については躊躇している会社が多い。

 伝統的な日本企業は、いったん就職すれば、定年退職を迎えるまで、よほどのことがない限り、面倒を見続ける「終身雇用」を前提にしてきた。仮に社員のスキルを生かせる仕事がなくなっても、配置転換などで仕事をあてがい、生活を保障してきた。

 「就職」というよりも「就社」といった方が良い日本の雇用形態では、社員の能力はすべて会社のために使うのが前提だった。能力を発揮する場所は会社の人事部が考え、配置転換で仕事を与えてくれる。だから、その能力を会社の外で使うことは論外。副業禁止は当たり前だったわけだ。

 副業解禁はこの「日本型雇用」が崩れ始めたことを明確に示している。ひとつは会社自体の体力が弱まって、終身雇用を維持できなくなっていることがあるだろう。時代の変化とともに消えていく職種の社員をクビにせず抱え続けることは、会社に余裕がなければできない。

 また、収益力が高くない伝統的な大企業では、給与を大きく引き上げることが難しい、という事情もあるだろう。自社で稼げない分、外で働くことを容認せざるを得なくなったわけだ。そして、政府の方針転換に背中を押されている面もある。

 だが、いったん副業を解禁すれば、日本の「カイシャ」のあり方は根本から変わることになる。蟻の一穴になるのは間違いない。

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「「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」」の著者

磯山 友幸

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞で証券部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め2011年3月末に独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官