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東北に見る「希望」の条件

「希望学者」玄田有史・東大教授に聞く

2018年3月11日(日)

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 「ちょっと表現が難しいんですが、震災があったからここまでできた面があります」。東北で地域創生に取り組む住民の中から、そんな言葉が聞こえるようになってきた。3・11という未曾有の悲劇は、未だ多くの住民の心に深い傷を残している。一方、「希望」を探し出すきっかけにもなった。岩手県釜石市などでフィールドワークを展開し、「希望学」を研究する玄田有史・東京大学社会科学研究所教授と語り合った。

寺岡篤志(以下、寺岡):岩手県釜石市などで、地方における希望の研究をされていますね。特に、希望を持ちながら地域のために活動する人の多さに着目する「希望活動人口」という考え方は、ユニークです。

玄田有史(以下、玄田):2005年から希望という言葉をキーワードに、少子高齢化 、人口減少に直面する地方のあり方を研究してきました。釜石の場合、1960年代の製鉄業が最盛期だったころに、人口は9万2000人に上りました。今は3万5000人を切りました。

 経済への影響を考えると、当然、消費市場が縮小します。市場が一定規模ないと地域経済が安定しない。一定のディマンド(需要)を確保するのが地方の原則ですよね。 サプライ(供給)はどうか。新日鉄住金の製鉄所が釜石にはあり、雇用吸収の役割を果たしてきました。89年に高炉が休止になって一時期迷走します。その後、企業誘致で空気圧制御機器のSMCが工場を建て、また雇用吸収の役割を果たしている。結局大きな企業をどう誘致して、どう引き止めるのか、という視点になってしまう。

 単純な需要と供給だけで、地域経済がうまくいくのかというと、疑問です。例えば、企業城下町にはデメリットもあります。公害問題はもちろん、一部の企業関係者だけが恩恵を受け、地域の分断を生むこともある。

 じゃあ、良い地域には、そんな対立構造を生まないように住民や企業や行政を結びつける人が必要ではないかと。それは坂本龍馬のような偶発的に誕生するスーパースターかというと、違うと思うんです。もっと住民全体の中から、地域の未来に希望を抱き、自ら行動する名もなき人たちがたくさん出ていくことが大事です。そんな希望活動人口が増えていれば、たとえ全体の人口が減っていても地域に未来はあると思います。

震災で「希望活動人口」が増えたと提唱する玄田有史・東京大学社会科学研究所教授

「希望は実存よりも宣言」

 出張先でタクシーに乗るだけでも、その地域の雰囲気って結構把握できますよね。外見的には寂れているけど運転手が「以外となんとかなると思うんです」「昔が良すぎただけで、これぐらいがちょうどいいんです」なんて話してくれる。面白い活動をしている人を紹介してくださいと聞けば、「あの人の所に行って来なよ」とすぐに名前が出てくる。こんな地域に注目しています。

 希望なんてあやふやな概念だとも言われますが、そこまで難しい話ではありません。何かやりたい、何とかなると思う、そう言えるかどうかです。言い出さないと、人と人は繋がりませんから。実存かどうかよりも、「希望がある」と言えるかどうかが大事です。

寺岡:アイリスオーヤマの大山健太郎社長も同じ趣旨のことをおっしゃっています。(こちらの記事も参照)。「具体的なビジョンを設定し、その志を社員、お客さん、地域に向けて発進することが第一歩」と。希望活動人口が多い地域は、どんな所なのでしょうか。

玄田:困難に向かい合った地域です。悲劇的な出来事があればすぐには動き出せません。震災でもすぐに希望なんて言い出せる状況ではなかった。

 でも、震災翌月に避難所へ物資支援に行った知人から聞いた話には希望の芽生えを感じました。その頃、食料や衣料品は十分に支給されていて余っている。一番喜ばれたのは卓上カレンダーだったそうです。日々の希望を感じる予定や出来事を書き込んでいたんじゃないかと思うんです。離れ離れの家族と会える日とかね。仮設住宅に移り住む人が出て落ち着き始めると、ポツポツと希望という言葉も出て来ました。希望のニュアンスってどこか薄暗いイメージがありませんか?挫折から生まれるものなんですよ。

寺岡:言われてみるとそんな気がします。

コメント2件コメント/レビュー

地域の閉じ方、というのが面白い。

限界集落、消滅自治体という言葉が出てからなのかわからないが、集落や町が消えることが悪のように言われるのには、どこか違和感があった。
天災や、人災によるものは評価が難しいが、自然に人が減るのは、居住の自由がある以上仕方がなく、課題があるとしたら今いる住民の福祉(幸福)をいかにするか、なのではないか。

町が自然と閉じるなら、それはそれで自然の理のように思う。そのとき、終わり方、地域の閉じ方を考える必要がある。(2018/03/11 22:12)

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「東北に見る「希望」の条件」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

地域の閉じ方、というのが面白い。

限界集落、消滅自治体という言葉が出てからなのかわからないが、集落や町が消えることが悪のように言われるのには、どこか違和感があった。
天災や、人災によるものは評価が難しいが、自然に人が減るのは、居住の自由がある以上仕方がなく、課題があるとしたら今いる住民の福祉(幸福)をいかにするか、なのではないか。

町が自然と閉じるなら、それはそれで自然の理のように思う。そのとき、終わり方、地域の閉じ方を考える必要がある。(2018/03/11 22:12)

被災地の復興を考える時、被災者や役所の公務員も、自治体の長や政治家も皆目先しか見ていない。少子高齢化の進む日本では百年後には人口が半減すると言う。現時点では総人口は減り始めたものの、地方から大都市への人口移動で『地方の過疎化と大都市の膨張』が続いている。そんな大都市ですら人口が半減した時点では現在の人口は保てないだろう。そんな百年後の日本に人口をどの様に配するのが最も災害に対して安全か、地震、津波、洪水、土砂崩れ、台風等の可能性を考慮して、最小のインフラで効率の良い国の有り様を青写真として描くべきだ。確かに『先祖伝来』の土地を離れるのは、特に年配者にとっては苦痛であろうが、百年後に描いた青写真が完成する様時間をかけて前に進みたい。人口減少地域では『消滅可能性都市』から逃れようと、夫々がいろいろな手を打っている。ある自治体では既に効果を出し始めているとニュースにもなった。然し、これも減少を続ける人口の『奪い合いゲーム』でしかなく、『他所はどうでも良いから、自分の町は生き残りたい』という利己主義そのものだ。一旦『自分の町』のことは置いておいて、50年後、100年後の日本の『あるべき姿』を設計し、何かの理由で自分の住む町が消えるなら、それを皆が受け入れるべきだ。そうしないと日本は未来に向かって良い国に変われず、過剰なインフラを少ない住民で背負わざるを得ない、負担ばかりが多い町だらけになってしまう。(2018/03/11 17:38)

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