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「80年代の総決算」を迫られるミドルたち

次の世代に残せることはあるか?

2017年12月22日(金)

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「あの頃」を懐かしむ空気が広がる中で

 空気が冷え込んで街なかが慌ただしくなると、「今年を振り返る」ような企画が増えてくる。さまざまな分析があるけれど、最近は「1980年代」との類似性を指摘する記事などもあるようだ。

 80年代に流行った音楽をとある高校のダンス部が踊り、ネット動画からブームになったり、80年代に売り出された人気のロールプレイングゲームの最新版が人気になったという。
 そして、上野動物園にパンダが生まれたのも、1986年以来のことだ。
 50代半ばとなるMさんは、そんなニュースを見ると苦笑してしまう。

 そういえば、就職活動の頃にパンダの赤ん坊が話題になっていたなぁ、と思い出す。もちろん、Mさんはパンダどころではなかった。夏の盛りが就職活動の山場で、暑さに辟易とした記憶が蘇ってきた。
 大手の消費財メーカーに入社したMさんは、営業や商品開発の現場を経験して、いまは営業本部で部長を務めている。おもに首都圏の大手スーパーマーケットを担当する大切なポジションだ。

 その夜は、仲のいい後輩のEさんと二人だけで「早めの忘年会」をする予定だった。
 Mさんは、出先の会社から直接店に向かう。ざわざわした人ごみの中を歩いている時、ふと壁にあるポスターに目を引かれた。
 鉄道会社のスキーツアーの広告だ。冬の風物詩のようなものだが、今年はちょっと雰囲気が違う。懐かしい「あの映画」がテーマになっていたのだ。

 会社に入って、2年目。想像もしなかったバブル景気がやって来て、Mさんもその波の端っこの方でどこかウキウキしていた。
 そのスキー映画はヒットして、Mさんも見に行った。面白かったし、主人公がサラリーマンだったのも、どこか共感できた。
 (もう30年なのか……)
 「節目の年」ということで、再びスポットが当たったのだろう。
 すると、先ほどまでいた取引先で言われた「ちょっとしたこと」が再び気になってくるのだ。
 Eさんと会うと、Mさんはまずその話題を切り出してみた。

取引先の30代社員に言われた「ひとこと」

 「いやぁ、さっききついこと言われちゃってさ」
 挨拶もそこそこにMさんが口火を切るから、Eさんは聞き役である。

 Mさんは来春以降の自社の新商品キャンペーンの概要説明のため、大手流通企業に行っていた。既に部下が何度も根回ししており、今日は最終確認の挨拶のようなものだ。
 今回の商談自体は順調だった。商品への期待も大きく、広告プランなども歓迎された。

 Mさんの会社では、本社のマーケティングと宣伝セクションがキャンペーンを決める。そして、今回は「1980年代」を意識した内容だったのだ。当時活躍したタレントを起用して、いまの40代後半以降の女性を狙っていくという企画だった。
 最近のニュースでも取り上げられていたし、キャンペーンとしてもどこか既視感はある。ただ、先方の同年代のマネージャーたちの受けは良く、他の社員も「面白そうですね」と盛り上がった。

 ところが説明も終わり、四方山話になった時に先方の女性社員がふと言った。
 「みなさん、お好きなんですねぇ、こういうの」
 何気ない一言だったのだろうが、その場には一瞬微妙な空気が流れた。
 「まぁ元気がいいし、それが売り場では一番だから」
 先方のマネージャーが取り繕うように言って、そのミーティングは終了した。

 意外な発言をしたその社員は30代半ばで、たしか子育てをしながら働いているはずだ。仕事ぶりもしっかりしていて、いつもにこやかだ。
 (どうしたのかな……)
 Mさんの気持ちを察するように、帰りがけにはマネージャーがわざわざロビーまで一緒に歩いてきて、小声で言う。

 「すいません、さっきは失礼しました」
 そこまで気をつかうことないのに、と思ったが彼は気にしているようだ。話を聞いていると、どうやら、彼女は「バブル的なモノ」が嫌いらしいのだ。とくに「あの頃を楽しんだ女性」に対しては、どうも割り切れない思いがあるらしい。
 きっと、日頃からいろいろあるんだろうな。そう察したMさんは、気にする素振りも見せずに別れた。
 そして、店に向かう途中であのポスターを見たのだ。

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「「80年代の総決算」を迫られるミドルたち」の著者

山本 直人

山本 直人(やまもと・なおと)

コンサルタント・青山学院大学講師

博報堂でクリエイティブ、研究開発、人事などを経て2004年に独立。キャリア開発とマーケティングの両面から企業を対象にした活動をおこなう。著作に「グッドキャリア」など多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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