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ロシアはもうG8復帰を望まない

米国の過去の“裏切り”も一因に

2018年6月22日(金)

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 6月上旬にカナダで開いた主要7カ国(G7)首脳会議(シャルルボワ・サミット)。貿易問題で米国と他国の対立が鮮明となり、G7体制の限界を浮き彫りにしたが、もうひとつ話題となったことがある。ロシアを呼び戻して再び「G8」にしようと、トランプ米大統領が提案したことだ。

(写真=提供:GERMAN FEDERAL GOVERNMENT/UPI/アフロ)

 トランプ米大統領の“爆弾”発言は、シャルルボワ・サミットの開幕直前に飛び出した。ワシントンのホワイトハウスで記者団に「なぜ、我々はロシアのいない会議を開くのか」と表明。ロシアを再びサミットに参加させ、G8の枠組みに戻すべきだと主張したのだ。

 トランプ氏はその理由について「好き嫌いは別にして、我々は世界を統治していかなければならない」と指摘。ロシアも交渉プロセスの参加者として、「テーブルに着いてもらう必要がある」などと語った。

 ウクライナ危機やシリア和平など世界の懸案を話し合うには、一定の国際的な影響力を持つロシアの参加が欠かせないというのがトランプ氏の認識だ。もっとも、他の参加国が貿易問題をめぐって米国批判ばかりを続ける状況に嫌気がさし、ロシア・カードを唐突に持ち出すことで、首脳会議のテーマが貿易問題に偏らないよう事前にかく乱したとのうがった見方もある。

 いずれにせよ、先進国クラブへのロシアの再加入案に対し、他の参加国の間からさっそく反論の声があがった。とくにドイツのメルケル首相は「ロシアがG8に復帰する条件はまだ整っていない」と反発。「ウクライナ問題で明確な進展がない限り、ロシアがG7の枠組みに復帰することは決してあり得ないという認識で我々は合意しているはずだ」と述べ、トランプ提案を不用意な発言とみなして批判した。

 G7首脳がロシアをG8の枠組みから排除したのは2014年春のことだ。ロシアによるウクライナ領クリミア半島の併合を受け、ロシアの行動が戦後の国際秩序を大きく揺るがしたとみなし、直ちに「対ロ制裁」措置の一環として打ち出した。つまり、クリミアの返還がG8復帰の前提条件となるわけだ。

 ただし現実的にみれば、ロシアが「歴史的に自国の領土」と主張するクリミアをウクライナに返還する可能性はほぼゼロだ。こうした事情から米欧諸国もクリミア問題は事実上棚上げし、ウクライナ東部の政府軍とロシア系武装勢力による紛争の収拾と和平プロセスを規定した「ミンスク合意」の履行を対ロ制裁解除の実質的な条件に掲げている。

 今回のメルケル首相の発言も、ロシアがミンスク合意を完全に履行しない限り、対ロ経済制裁の解除はもちろん、ロシアのG8への復帰もあり得ないとの認識を暗に示したとみられる。

ロシアはクリミアを諦めてまでG8に復帰することはない

 とはいえ、G7首脳の中でもロシアに対する認識は一枚岩ではない。今回、ロシアのG8復帰を提案した当のトランプ大統領はもともと、ロシアとの関係改善に前向きだ。

 欧州でも大きな認識の違いがあり、イタリアの新首相に就任したばかりのコンテ首相は「私はトランプ大統領の提案に賛成だ。ロシアのG8復帰はすべての国々の利益に合致する」と賛同した。また、北方領土問題の解決をめざしてロシアとの関係強化を進める日本の安倍晋三首相も、ロシアのG8復帰案に関して明確な賛否の意思表示をしていない。

 ロシアの復帰を認めるかどうかはG7の全参加国の同意が必要とされ、現実には近い将来、G7がG8体制に戻る可能性はほとんどない。しかし、今回のトランプ提案を発端にしたごたごたは、貿易問題をめぐる対立と同様にG7の亀裂を露呈するとともに、図らずも国際社会におけるロシアの存在感を際立たせる事例となったようだ。

 では、肝心のロシアの反応はどうだったのか。

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「ロシアはもうG8復帰を望まない」の著者

池田 元博

池田 元博(いけだ・もとひろ)

日本経済新聞社編集委員

1982年、日本経済新聞社に入社。90~93年にモスクワ特派員、97~2002年にモスクワ支局長。その後、ソウル支局長(05~08年)も歴任。08年から論説委員会に在籍。編集委員も兼務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官