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世界制覇へ、栗田工業と「サムライ連合」結成!

水処理最大手「40億円過半買収」までの曲折と感謝と決意を記す

2018年5月31日(木)

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 これまでフラクタの活動を応援してきてくれた読者の皆さんに、今日は僕から一つ大きな報告がある。僕たちフラクタは2018年5月30日、水処理の世界大手企業である栗田工業株式会社(東京証券取引所一部上場)との資本業務提携を発表した。

 この取引では、栗田工業が約3700万ドル(=1ドル110円換算で、約40億円)を投入して、フラクタ株式の50.1%を保有することになったので、これはM&A取引、つまり友好的な企業買収取引(半分だけではあるものの、フラクタにとっては事業売却取引であり、一方で、フラクタという社名は変わらず、僕は変わらずCEOとして会社をリードする)ということになる。

 資金調達に奔走する過程で、フラクタは結果として、栗田工業という願ってもない提携先を見つけることができた。かつて米Google本社に自分が作ったヒト型ロボット会社を売却したときのように、胸躍る、「電光石火の買収劇」だった。

コピー・キャットではなく

 栗田工業という会社名を聞いたことがある人もない人もいるだろう。栗田工業は、水分野では世界的にとりわけ有名な優良企業であり、一方でこの会社が1949年創業であることを考えると、70年近い歴史があることになる。

 ソニーや本田技研工業といった日本の大企業群は、栗田工業と同じく、第2次世界大戦直後に創業した。1960~80年代における高度経済成長期を超え、戦後のハングリー精神で事業を立ち上げた創業者が次々と引退を迎えると、大企業群は大胆な自己変革を迫られた。企業にとって、時代を切り拓き、常に自らが定義する産業の中でフロントランナーであり続けること、またフロントランナーにしか取りえない超過収益力を獲得し続けることは、企業価値を継続的に押し上げるただ一つの方法だ。

 一方で、ハードからソフトへ、日本から海外へ、移ろいゆく市場に合わせて、縦横無尽にビジネスを展開していくためには、これまで自分の会社の中にあったノウハウや資源といったものとは「異質のもの(=新しいもの、変わったもの)」を、自分の中から生み出すか、外の世界から取り込むしか道は無い。自分の中から異質なものを生み出すことは、これを考えるだけでも辛く、またそれが身内であるがゆえに甘さが残るのが人情というものだ。

 そうであればこそ、外の世界からそれを取り込むことが正しい選択肢のようにも思えるが、志を一つにしてくれる外の会社などあるのだろうかと悩んでしまい、多くの場合、結局手を出すことができない。この20年、30年、日本の企業はこうしたことに悩んできた歴史があるように思う。

 こうした自己変革に対して、アメリカの大手企業がそうであるように、ベンチャー企業の買収(M&A)を継続的に行うことによって、「外の世界で起こったイノベーションを企業の内側に取り込むこと」が日本の大企業、とりわけテクノロジー(技術)に軸足を置く日本の大企業共通の課題であり、それは言うなれば、ある意味で日本という国家全体の課題であった。

 アメリカという国が繁栄した過程には、そもそも「異質な人たちの集まり」である、アメリカという移民国家の強みを存分に活かした、外の世界(異質なもの)の取り込み活動、すなわちM&Aというものがアメリカという国の気質に合っていたことも影響しているだろう。

 しかし、10年単位でテクノロジーが世の中のルールを変えてしまう現代にあって、日本にとってもこれは待ったなしの課題になってしまったのだ。ストレートに言えば、日本の大企業はこれをやらなければならなかった。しかし…。

 日本から生まれるベンチャー企業は、残念なことに、いまだにアメリカのコピー・キャット型(モノマネ型)の企業が多く、海外市場にいきなり切り込んでいる会社は極めて少ない(海外市場に行っても、そもそも、その海外企業のモノマネだったので、海外市場は既に先行者に制圧されているというケースが大半だった)。

 つまり、日本のグローバル企業がこうした会社をM&Aしても、世界戦略上はほとんど意味がない(これまで、国内市場だけを対象にしている中堅企業が、これまた国内市場だけを対象にしているベンチャー企業を安値で買い叩く [M&Aする] というケースはままあったが、こんなことばかりしていると、日本が国際競争に負けてしまうということは、言わずもがなだろう)。

 一方で、日本の大企業が、アメリカやヨーロッパのベンチャー企業を、高値で買い急いだところで、志を一つにしてやっていくことが、また文化的に難しい。そこには構造的な理由があるにはあるので、あまり日本の大企業はダメだと大声で言うつもりはない(この処方箋について、僕なりの考え方があるのだが、その話はまた別の機会に譲ろう)。

 しかし、だからこそ、僕という日本人がアメリカの西海岸、シリコンバレーで創業したベンチャー企業フラクタは、アメリカの水道産業に、十分に差別化された機械学習(人工知能)技術で切り込んでいるという意味で、大変に稀有なベンチャーだったと言えるのかもしれない。後半に述べるが、栗田工業とフラクタが、いくつもの運や縁を経験しながら、志を一つにできると思えたということも、双方の安心材料になったはずだ。

 それにしても栗田工業の経営者はなぜこの意思決定ができたのだろうか。間違いなくその姿は、僕が社会人になってから、ずっと悩み続け、また一方でずっと望み続けた、日本の大企業のあるべき姿だった。日本はこれをやるべきだった。これは、日本の大企業が自らのイノベーションに向けて立ち上がった、最高の実例になると思う。しかし本当に、なぜこんなことが現実に起こったのか? せっかくだから、これまでの経緯を読者の皆さんと一緒に振り返ってみたい。

コメント8件コメント/レビュー

応援のつもりで、栗田工業株買いました! いろんな意味で、うれしい話でした!!  
ちくしょー、私もがんばる!(2018/06/20 14:19)

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「世界制覇へ、栗田工業と「サムライ連合」結成!」の著者

加藤 崇

加藤 崇(かとう・たかし)

加藤崇事務所代表

1978年生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京三菱銀行、KPMG日本法人、技術系ベンチャー企業社長などを経て、2013年、ヒト型ロボットベンチャーSCHAFTをグーグルに売却し、世界から注目を集めた。スタンフォード大学客員研究員(兼任)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

応援のつもりで、栗田工業株買いました! いろんな意味で、うれしい話でした!!  
ちくしょー、私もがんばる!(2018/06/20 14:19)

ずっとチームフラクタの物語を楽しく拝見してきました。応援したくても大して資本もない一個人では遠い世界の話とも思っていました。ところが栗田工業の資本を受け入れられるとの事でしたので、私にも応援のチャンスが訪れました。少額ですが、栗田工業の株主になりました。チームフラクタのご活躍を楽しみにしています。(2018/06/06 05:56)

加藤さん、アワードに続き良いニュースが続きますね。おめでとうございます。
栗田工業との「サムライ連合」でまた新しい何かが生まれそうですね。読んでいるだけでワクワクします。当面の資金調達の心配もなくなり、目標に向かって邁進できますね。
健康に気を付けて頑張ってください。毎度、メールでの応援のみで心苦しいですが、心底応援しています。(2018/06/01 08:30)

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