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経営者とは「フェアか?」と問い続ける者である

より速く、より先へ、厳しさも寂しさも抱えて進むために

2018年7月18日(水)

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 6月中旬にラスベガスの展示会(全米水道カンファレンス)が終わると、立て続けにいくつかの仕事が決まった。南カリフォルニアの非常に大きな市が、僕たちフラクタのソフトウェアに対する導入を検討し、パイロット製品とサービスを購入する契約にサインをした。営業に行ってから1カ月くらい音沙汰の無かった北カリフォルニアのある街も、いきなり「御社のソフトウェアを使いたい」と言って、ぶっきらぼうに向こうから契約書を送ってきた。

 何かが動き始めている気がするが、しかしその動きはまだ完全なものではない。油断は禁物だし、とにかくこうしたBtoB(ビー・トゥー・ビーと読む:Business to Businessの略。法人向けに売る製品という意味。個人向けの製品ではないことの総称)のソフトウェア製品は、あまり派手なことをせず、きちんとした方針のもと、しっかりとした製品を作って、手堅く売っていくしかないのだ。

次は、製品・エンジニアリング担当副社長を

 そうこうしているうちに、僕は資金調達が終わるまで抑制してきた人材採用を本格化させた。何より重要だと思っていたこと、ずっとやりたいと思っていたことは、製品・エンジニアリング担当副社長を採用することだ。

 製品のヘッド(長)にはマティーがいて、エンジニアリング(=技術)のヘッドには吉川君がいる。フラクタには、ものすごくエッジの効いた(大変に高度な)技術があれど、それをきちんと水道会社の人たちが使いやすいように整理して、きちんとお客さんに届けていくためには、この分野で多くの経験がある、「売れる製品をきちんと定義でき、かつ製造できるボス(=親分)」を雇う必要があり、正直半年くらい前から、このポジションに人を投入しなければ製品として大きな成長は期待できないと思っていた。

 しかし、資金調達が終わるまで、自らの生存が確認できるまで、僕はこの採用に手をつけずにいたのだ。また何よりこの話を難しくしていたのは、現職で製品担当をやっているマティーの「気持ち」に対する配慮からだった。

 ラースさんからダグへ、営業・マーケティングの責任者をスイッチしたときもそうだったが、ものすごく短いタイムフレームの中で、テンポよく成長を確保していくためには、人の入れ替え、ポジションの変更をきちんと行っていく必要があった。人間の成長よりも組織の成長の方が早いといったことが、健全なベンチャー企業では時として起こる。また、思いもよらない方向に会社が成長した結果、既存の従業員の経験だけでは、安全な航海を達成できないことがあり、外部から船員を雇ってこなければならないことがある。

 こうした状況下、組織として正しいことをやる、つまり「いま目の前で起こっていることを即座に解決できる人材を、既存の従業員よりも高いポジションで雇う」こと、それを決断することがCEOの仕事ではあるものの、その組織として正しいことが、多くの場合、個人の利害やプライド、思いと相反することがあり、それをきちんと乗り越えていかなければならない。

 マティーがフラクタの製品を担当するようになってからもう1年半以上経っており、吉川君が書いたソフトウェア・コードを、ウェブブラウザ(ウェブサイトを閲覧するソフトウェア)で表示できる製品に仕立ててくれたのはマティーだった。

コメント3件コメント/レビュー

加藤さん、今回も大変楽しくかつとても興味深く拝読させていただきました。Fairnessは私にとっても重要というか、少し大げさかもしれませんが「人生の基準」です。日本ではあまりなじまない(と私は感じている)ですが、人の価値観や生い立ちそれを含めた性格は様々でそれに対して何かを判断する時には「Fairness」しかないと思っています。最近はダイバーシティーが様々な場面で取り上げられていますが、ダイバーシティーや真のグローバル化を考える時には正に「Fairness]しかないと思います。そういった思いを持つ者としてこの記事を読ませていただいた時に、非常にわかりやすい1例だと感じました。加藤さんには色々な意味で感心させられることばかりです。応援しています、頑張ってください。(2018/07/19 08:51)

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「経営者とは「フェアか?」と問い続ける者である」の著者

加藤 崇

加藤 崇(かとう・たかし)

加藤崇事務所代表

1978年生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京三菱銀行、KPMG日本法人、技術系ベンチャー企業社長などを経て、2013年、ヒト型ロボットベンチャーSCHAFTをグーグルに売却し、世界から注目を集めた。スタンフォード大学客員研究員(兼任)

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

加藤さん、今回も大変楽しくかつとても興味深く拝読させていただきました。Fairnessは私にとっても重要というか、少し大げさかもしれませんが「人生の基準」です。日本ではあまりなじまない(と私は感じている)ですが、人の価値観や生い立ちそれを含めた性格は様々でそれに対して何かを判断する時には「Fairness」しかないと思っています。最近はダイバーシティーが様々な場面で取り上げられていますが、ダイバーシティーや真のグローバル化を考える時には正に「Fairness]しかないと思います。そういった思いを持つ者としてこの記事を読ませていただいた時に、非常にわかりやすい1例だと感じました。加藤さんには色々な意味で感心させられることばかりです。応援しています、頑張ってください。(2018/07/19 08:51)

加藤さんの様な上司や経営者が、もっと多く居ればなあ。自分も違う人生があったかもしれないし、上司の立場だった時にもっと上手くやれたかもしれない。今からでも遅くはないですね。
日本でも、これくらい人材の流動性を高めた方が、安い報酬で無理矢理働かせるブラック労働が減って良いと思う。(2018/07/18 12:33)

毎回どきどきしながら加藤さんのサムライ経営者、アメリカを行く!を読ませていただいています。
本当に今の日本企業、特に大企業にはないエネルギーがうらやましいです。
今年に入っていろいろ新たな提案をしていたところ、当部門を統括して3年目の役員に呼ばれて、去年も一昨年も問題なくやってきた。今年も問題を起こさないでほしい、と言われて、驚きと憤慨、いえそれを通り越して哀れみさえ感じました。
加藤さん、是非これからもサムライの力を見せてください。期待しています。(2018/07/18 10:02)

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