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「米欧休戦」から読む、日米貿易協議の行方

TPPベースの「日米EPA」を目指せ

2018年7月31日(火)

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日米交渉での自動車問題をどう見るべきか

 これは日本にとっても参考になる。

 自動車分野は米国の自動車関税が攻められる立場にあるにもかかわらず、「相手国の自動車市場を攻めることによって、これを回避する」というのは米国の常套手段だ。攻撃は最大の防御なのだ。昔から日本市場に対して非関税障壁の閉鎖性といって難癖をつけ続ける理由はそこにある。そもそもビッグスリーは日本市場から撤退しつつある。こうした難癖には右往左往せず、米国のアキレス腱を堂々と突くのが正解だ。

 かつて1995年に締結された日米自動車協定が2000年に期限を迎えた。そこで米国は再延長を強く求めてきたが、当時交渉担当だった私はこれを拒否した。その際、やはりこのアキレス腱を突くのが効果的だった。

 日本のメディアは米国の主張をそのまま伝えて、日本の自動車市場が議論の焦点であるかのような報道をするが、これでは米国の思うつぼだ。8月から始まる日米のFFRを巡っても、そういう自虐的な報道には注意したい。米国は自動車の脅しを単に「交渉カード」として使っているのだ。

日米新貿易協議での米国の本音は何か

 日米のFFRは7月中にも開催と報道されていた。日本のメディアも今か今かと待ち構えていたが、なかなか日程が決まらずヤキモキしていたようだ。

 北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉についてメキシコの新大統領が予想に反して柔軟姿勢を見せたことから、米国もNAFTA交渉を優先することにしたようだ。

 また、現在行われている自動車の追加関税引き上げのための商務省調査の大統領報告を公表して、「脅し」に現実味と迫力を持たせてから交渉に臨んだ方が効果的との計算も働いたようだ。

 日本に対してもEU同様、自動車の追加関税は「脅しの道具」だ。

 しかし、自動車分野で日本がやれることは限られる。日本の自動車メーカーによる対米投資を増やすことで、米国での雇用に貢献することをアピールすることぐらいだ。ただし、これは今までの日米首脳会談でも切ってきたカードで、限界もある。

 他方、米国の要求の本丸は農産物市場だ。中間選挙を控えて、米国抜きTPP (TPP11)によって相対的に不利になる米国畜産業界などの不満解消が急務だからだ。日本としては米国に対して「TPPレベルまでの関税引き下げ」というカードを切るかどうかがポイントになる。

 ライトハイザー米通商代表は7月26日、議会の公聴会での証言で、「日米FTAを交渉すべきだ」として改めて意欲を示した。多くのメディアは、米国の狙いは日米FTAだと報道したが、この発言の意味するところを正確に理解する必要がある。

 ライトハイザー米通商代表がこう発言するのは、二国間で農産物の関税引き下げは、FTAという道具立てがないと世界貿易機関(WTO)の制度上できないからだ。FTA自体が目的ではなく、あくまでも米国が欲しいのは「農産物の市場開放」という果実だ。FTAはそのための手段に過ぎない。

TPPを内容とする「日米EPA」を

 ここが日本の考えどころだ。

 FTAにするためには、農産物だけでは成り立ち得ない。TPP交渉で農産物とパッケージで合意した自動車も当然含めて、大部分の製品をカバーしたものでなければWTOの制度上FTAとならないからだ。従って、米国にはTPP交渉で獲得した、米国の自動車関税の25年での撤廃を当然要求すべきだ。そして仮に米国が農産物でTPP以上の要求をしてきたら、もちろん拒否すべきだが、日本も米国の自動車関税の撤廃を25年よりも前倒しして要求すべきだ。

 この協議の名称「FFR=Free, Fair and Reciprocal」通り、日米が相互的(reciprocal)である必要があり、こうした要求は当然だ。

 さらに言えば、先進国間のFTAとしては、関税だけでなく、TPPで合意したような電子商取引や知的財産権などのルールも含めることによって、日欧と同様に経済連携協定(EPA)にすることが肝要だ。これも広義のFTAだ。しかし本来そういう交渉は日欧EPAのように何年もの歳月を要する。米国は決してそれを望まず、短期的成果を求めよう。本格的議論をする余裕もないだろう。

 しからば、既に交渉結果として合意した経緯のあるTPPの内容をほぼそのまま「日米EPA」とすればよい。

 米国のTPP撤退を受けて、TPP11では参加各国が米国に対して譲歩した知的財産権などの項目が凍結されている。これらも日米間では解凍して、日米EPAに含めることにするのだ。その中には、中国を念頭に置いたルールも含まれているので、これらを含めることはTPPのルールをグローバル・スタンダードにするうえで大きな意味がある。また日本にとっても、TPP11とその拡大、日欧EPAを合わせて、グローバルにルール重視の通商戦略を展開することになる。

 問題はそれによって将来、米国がTPPに復帰する誘因を減殺しないかどうかだ。まだTPP11は日本の国会承認は終わったものの、未だ発効していない段階では、他のTPP11参加国が反発しないかも気になるところだ。これらを慎重に見極めたうえで判断することが必要だ。

 なお、こうした対応は米国の自動車の追加関税を逃れるためではないが、少なくともこの交渉をしている間は、米国が日本に対して発動しないのはEUと同じだ。

コメント7件コメント/レビュー

今度米国大統領が日本を訪れる機会があったら、是非とも相撲観戦を予定に入れてもらいたいものだ。特に横綱がどの様な相撲を期待されているのか、説明を要する。横綱相撲は、『脅し』や『せこい手』を使う横綱が尊敬されない事を強調して伝えるのが良い。米国は相撲番付で言えば、『東の正横綱』である。トランプ大統領のやり口には横綱相撲の美しさが無い。正直言って、ロシアのプーチンや中国の習近平の方が横綱相撲に近い政治の取り口に、少なくとも表上は見える。たとえやっていることが正しいとしても、あの品格の無さでは世界をリードする器とは言えない。独裁者の方が見かけ上品格が高く、民主的に選ばれた指導者が品のない手ばかり使っていると、一体どちらが正しいのか分からなくなってしまうではないか!(2018/07/31 17:10)

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「「米欧休戦」から読む、日米貿易協議の行方」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

今度米国大統領が日本を訪れる機会があったら、是非とも相撲観戦を予定に入れてもらいたいものだ。特に横綱がどの様な相撲を期待されているのか、説明を要する。横綱相撲は、『脅し』や『せこい手』を使う横綱が尊敬されない事を強調して伝えるのが良い。米国は相撲番付で言えば、『東の正横綱』である。トランプ大統領のやり口には横綱相撲の美しさが無い。正直言って、ロシアのプーチンや中国の習近平の方が横綱相撲に近い政治の取り口に、少なくとも表上は見える。たとえやっていることが正しいとしても、あの品格の無さでは世界をリードする器とは言えない。独裁者の方が見かけ上品格が高く、民主的に選ばれた指導者が品のない手ばかり使っていると、一体どちらが正しいのか分からなくなってしまうではないか!(2018/07/31 17:10)

TPPの評価が解らない。なぜTPPベースなのだろうか。TPPはそんなに優れた合意なのだろうか。今ここで水を差してもあまり意味はないが,素朴な疑問だ。TPPが歴史的に意味があるかどうかは,ブロック経済や鎖国主義的な「壁を立てる」経済システムを阻止できるかどうかだ。その意味では2通りの疑問がある。一つはTPPは理念として世界経済を発展させる基本要素を持っているか。もう一つは,現在の自由主義的資本主義が行き詰りかけている状況を打開できるか。ということだ。後者については過渡的な仕組みとして「一定の役割を果たす」だけの存在ならばそんなに盛り立てても意味は少ないだろう。前者については基本的にわからない。何が基本要素でそれをどう実現する仕組みなのか。どこかに初心者向けの手短な解説は無いだろうか。(2018/07/31 14:07)

残念ながら日本のメディアは、朝日を筆頭に政権の足を引っ張ることが最重要ミッションであるから、この様なコラムを理解する能力は持ち合わせていなさそうだ。
日経だけはそうではないと信じたい。(2018/07/31 12:14)

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