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「米欧休戦」から読む、日米貿易協議の行方

TPPベースの「日米EPA」を目指せ

2018年7月31日(火)

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7月25日に開催された米欧首脳会談に挑む、ユンケル欧州委員長(左)とトランプ米大統領(写真:AP/アフロ)

 米欧間の貿易摩擦は、首脳会談で当面の摩擦拡大を回避した。メディアは、「ひとまず『休戦』を演出」と言う。しかし、そこには報道だけでは見えてこない本質が潜んでいる。それは、これから始まる日米の新貿易協議(FFR)への示唆だ。

合意にない「自動車と農産物」にこそ本質がある

 まず米欧首脳会談の合意では、「自動車を除く工業製品の関税、非関税障壁、補助金の撤廃に取り組む」という。これをどう読むべきか。

 むしろ、この対象外である「自動車と農産物」こそが、米欧間の貿易摩擦の本丸だ。

 自動車の関税撤廃は米国が難色を示して除外された。これは欧州連合(EU)の高等戦術の結果だ。トランプ大統領はEUが課す10%の自動車関税を批判して、EUが譲歩しなければ、20%の追加関税を課すと脅している。これに対して、EUは米欧双方で自動車の関税を撤廃することを提案した。これは米国を逆に揺さぶることになる(参考:「メガFTA」が対米、対中戦略を左右する)。

米国のアキレス腱は「ライトトラック」

 実は米国は自動車分野にアキレス腱を抱えている。それは米国で言うところの「ライトトラック」だ。

 米国は乗用車の関税は2.5%だが、ビッグスリーの儲け頭であるピックアップトラック、SUV(スポーツ用多目的車)などを「ライトトラック」として25%の関税をかけている。米国はこれを死守したいのだ。乗用車では収益を上げられないビッグスリーにとって死活問題だ。米国は50年以上も前からこの高関税を譲らない長い歴史がある。

 米国の「ライトトラック」へのこだわりは尋常ではない。

 かつてTPP(環太平洋経済連携協定)交渉でも、29年間25%を維持して、30年後に撤廃することで合意した。信じられないぐらい先だ。先般の米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉でも、韓国に対して鉄鋼の追加関税の脅しを武器に圧力をかけて、「2021年までに撤廃する」とされていたものを、20年先延ばしして2041年までにした。EV(電気自動車)などの台頭で激動の自動車産業は30年後には様変わりで、そんな先の関税撤廃を約束してもほとんど無意味だ。

自動車は単なる「交渉カード」であることが露呈

 さらに言えば、トランプ大統領は自動車関税を単なる「交渉カード」として使っているに過ぎないとも見ることができる。「自動車関税の相互撤廃」というEUの揺さぶりで、それが露呈しただけだ。「今回EUから譲歩を得られたのも、自動車関税での脅しが効いたからだ」とロス商務長官は正直に吐露している。まだこの脅しのカードを米国は手放したくないのだ。EUは「交渉が続く限りは自動車への追加関税はない」と説明するが、これを裏返して米国から言えば、「脅しのカードを持ち続けて交渉する」というものだ。

 他方、EUの守りたい本丸は農産物だ。農業国フランスの抵抗もあって、大豆の輸入以外、農産物については今回の合意には全く触れられていない。「貿易障壁の撤廃を話し合う対象から農産品は除外された」とする報道は、EUサイドからの都合のいい説明を鵜呑みにしたものだ。

 米欧の本丸である自動車、農産物はまだこれからの交渉なのだ。合意文にも、「これは対話のスタートであって、多くの他の産品、問題に今後取り組む」とされている。従って「自動車は棚上げ」「農産物は交渉の対象外」という報道は表面的過ぎるだろう。

コメント7件コメント/レビュー

今度米国大統領が日本を訪れる機会があったら、是非とも相撲観戦を予定に入れてもらいたいものだ。特に横綱がどの様な相撲を期待されているのか、説明を要する。横綱相撲は、『脅し』や『せこい手』を使う横綱が尊敬されない事を強調して伝えるのが良い。米国は相撲番付で言えば、『東の正横綱』である。トランプ大統領のやり口には横綱相撲の美しさが無い。正直言って、ロシアのプーチンや中国の習近平の方が横綱相撲に近い政治の取り口に、少なくとも表上は見える。たとえやっていることが正しいとしても、あの品格の無さでは世界をリードする器とは言えない。独裁者の方が見かけ上品格が高く、民主的に選ばれた指導者が品のない手ばかり使っていると、一体どちらが正しいのか分からなくなってしまうではないか!(2018/07/31 17:10)

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「「米欧休戦」から読む、日米貿易協議の行方」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

今度米国大統領が日本を訪れる機会があったら、是非とも相撲観戦を予定に入れてもらいたいものだ。特に横綱がどの様な相撲を期待されているのか、説明を要する。横綱相撲は、『脅し』や『せこい手』を使う横綱が尊敬されない事を強調して伝えるのが良い。米国は相撲番付で言えば、『東の正横綱』である。トランプ大統領のやり口には横綱相撲の美しさが無い。正直言って、ロシアのプーチンや中国の習近平の方が横綱相撲に近い政治の取り口に、少なくとも表上は見える。たとえやっていることが正しいとしても、あの品格の無さでは世界をリードする器とは言えない。独裁者の方が見かけ上品格が高く、民主的に選ばれた指導者が品のない手ばかり使っていると、一体どちらが正しいのか分からなくなってしまうではないか!(2018/07/31 17:10)

TPPの評価が解らない。なぜTPPベースなのだろうか。TPPはそんなに優れた合意なのだろうか。今ここで水を差してもあまり意味はないが,素朴な疑問だ。TPPが歴史的に意味があるかどうかは,ブロック経済や鎖国主義的な「壁を立てる」経済システムを阻止できるかどうかだ。その意味では2通りの疑問がある。一つはTPPは理念として世界経済を発展させる基本要素を持っているか。もう一つは,現在の自由主義的資本主義が行き詰りかけている状況を打開できるか。ということだ。後者については過渡的な仕組みとして「一定の役割を果たす」だけの存在ならばそんなに盛り立てても意味は少ないだろう。前者については基本的にわからない。何が基本要素でそれをどう実現する仕組みなのか。どこかに初心者向けの手短な解説は無いだろうか。(2018/07/31 14:07)

残念ながら日本のメディアは、朝日を筆頭に政権の足を引っ張ることが最重要ミッションであるから、この様なコラムを理解する能力は持ち合わせていなさそうだ。
日経だけはそうではないと信じたい。(2018/07/31 12:14)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官