• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「米中対立のAPEC」が「成功」と言えるワケ

「米国のアジア関与」と「中国の外堀を埋める」意味

2018年11月28日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

11月18日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)への評価が厳しい。「米中対立」で首脳宣言を採択できず、「大混乱」「機能不全」と言われる。だが、本当にそうなのか。むしろ、「中国の孤立」「米国のアジア関与」が鮮明になり、「APECは目的達成した」と見るべきだ。

APECは”失敗”だった?(写真:AFP/アフロ)

 先般のパプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が、首脳宣言の採択を断念して閉幕した。そして5日後になってようやく格下げされた議長声明だけが発表された。日本のメディアは一斉に「米中対立で」「APECの機能不全」「APECの存在価値が問われる」と報道した。

 果たしてそうだろうか。

実態は「中国の孤立」だった米中対立

 「米中対立」と言っても、実態は「中国の孤立」だったことを、日本の報道は伝えていない。米国は中国を念頭に「不公正な貿易慣行の撤廃」「そのための世界貿易機関(WTO)改革」を要求した。中国は米国を念頭に「一国主義と対抗する」「保護主義と対抗する」との表現を求めた。こうした米中間の対立、溝が埋まらなかった。そういう解説で終わっている。

 確かに、その解説は間違いではないが、それだけでは誤解を招きかねない。

 宣言文の調整作業では、米国は意外にも柔軟姿勢に転じてコンセンサス形成を重視した。「あらゆる不公正な貿易慣行を含む保護主義と対抗する」との最終原案に最後まで激しく抵抗したのは中国だった。国有企業への巨額の補助金などの支援が不公正な貿易慣行として攻められることへの警戒感からだ。

 WTO改革についても最終原案ではWTOのルールをメンバー国が遵守しているかモニターして、改善を求めることの重要性を記述されていたが、中国はWTOの補助金ルールを順守しない自国に対する攻撃と受け止めて抵抗姿勢を貫いた。

 会議では20対1という形で中国は孤立した。

 そのことは5日後に出された議長声明にはっきりと表れている。さすがに「中国が孤立した」とまで言うのは控えているが。

 これらのポイントはいずれも「ほとんどの国はこの最終原案の合意をしたが、少数国が異を唱えた」となっているのだ。 ところが日本の新聞は、「これらのポイントは少数意見」だと報じたり、「米国に配慮して削除した」とするなど誤報も甚だしい。

 危機感を持った中国代表団は土壇場で議長国パプアニューギニアの外相執務室に押し入ろうとしたとまで海外報道されている。

 事実関係は兎も角、中国があからさまに議長国に対して強圧的、高飛車に圧力をかけていたのは参加各国の衆目の一致するところだ。

 普通、最後は議長国がまとめの記者会見をするのが通常だが、その直前に中国が異例の単独での記者会見をして、自国の孤立が流布しないようプロパガンダに必死だった。そのせいかどうかは分からないが、結果として、日本の新聞は、「中国の孤立」ではなく、「米中対立」としか報じていない。

 中国は総論として口先だけは「WTO改革」「保護主義に対抗」に賛成しても、一歩踏み込んで「WTOルールを遵守するための改革」「不公正な貿易慣行の撤廃」となった途端に自分に矢が向けられたとして反対する。そうした中国の実態がAPECで露呈したのだ。そして議長国への異常な圧力のかけ方は中国の焦りの裏返しでもある。

 日本のメディアの多くはそうした実態を見逃している。

オススメ情報

「細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」」のバックナンバー

一覧

「「米中対立のAPEC」が「成功」と言えるワケ」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トレンドの移り変わりが早い日本での経験は、海外にも応用できる。

桝村 聡 高砂香料工業社長