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日本の研究開発力は落ちていない

ノーベル物理学賞受賞の名古屋大・天野教授に聞く

2018年7月17日(火)

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イノベーションを起こす源泉の1つである基礎研究。近年は日本の基礎研究力の低下が叫ばれているが、実際はどうなのか。2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授(同大学未来材料・システム研究所の未来エレクトロニクス集積研究センター長)に話を聞いた。

■お知らせ■
日経ビジネスは、読者が自分の意見を自由に書き込めるオピニオン・プラットフォーム「日経ビジネスRaise(レイズ)」を立ち上げました。その中のコーナー「オープン編集会議」では、イノベーションに関する話題を皆さんとともに議論しています。ぜひ、ご参加ください。

<オープン編集会議>
Room No.01 日本のイノベーションは停滞している?
Room No.03 イノベーションを阻む「大企業病」、どう打ち破る?

名古屋大学の天野浩教授(未来材料・システム研究所の未来エレクトロニクス集積研究センター長、写真撮影:上野英和、以下同じ)

天野先生は青色発光ダイオード(LED)の研究開発で、2014年のノーベル物理学賞を受賞しました。青色LEDは、照明や液晶ディスプレーの省エネ化や長寿命化に貢献し新たな産業を生み出し、業界に「イノベーション」を起こしました。ご自身は「イノベーション」をどう定義していますか。

天野浩氏(名古屋大学教授):私自身が大学で研究を進める中で常に意識していたのは、「イノベーション」と「インベンション」の違いです。ゼロからイチを生み出す発明はインベンション。社会を変えることが、イノベーションだと言えるでしょう。

 青色LEDの研究でも、この点は意識していました。結局、大学ではシーズ(種)となる基礎技術しか生み出せなかった。照明などで最終的にイノベーションを起こしたのは企業です。

イノベーションには、青色LEDのような革新的な技術から生まれるモノと、既存技術の組み合わせから生まれるモノがあります。日本は前者が、米国は後者が主流という風潮がある気がします。

天野氏:米国で技術起点のイノベーションがまったくないわけではないでしょう。ここ数年、シリコンバレーを中心に(既存技術を組み合わせた)新しいビジネスが出てくるからそう言われているだけですよね。日本だって市場のニーズや課題から生まれたイノベーションもある。

 個人的には「社会を変える」という最終目標が達成できれば、どちらの手法でも良いと見ています。生活を便利にするためにどんなアプローチで取り組むか。実際、既存の技術を活用してできることはたくさんあります。ライドシェアの米ウーバーテクノロジーズや民泊仲介の米エアビーアンドビーなどはまさにそうでしょう。こうした仕組みを作り出せるのは凄いことですが、技術的には高校生にもできちゃう。

 そういう面では日本の理学・工学系の人間はまじめすぎるかな。新たな技術を確立し、そこからビジネスを生み出すべきという考えが強い。ゼロからイチを生み出すのが美しいと考えています。大学にいるのでそう感じるのかもしれません。新技術の開発はとても大切ですが、ビジネス感覚がある理学・工学系の人間が増えても良いでしょう。

天野先生自身、青色LEDの研究はどういった思いで進められたのですか。

天野氏:最初はパソコンやテレビの画質をもっと綺麗にしたいという思いからですね。それがあまりにも難しかったので、青色LEDに必要な窒化ガリウムの結晶を作り出す研究に打ち込んでいったわけです。シーズを生み出すのが目的になった側面はあります。今になって振り返るとビジネス感覚が大切だったのかなと思います。

 基礎研究はやはり大切です。組み合わせで生まれるイノベーションでは、人口減少や少子高齢化などもっと深刻な課題を解決する革新的なシステムを生み出しにくいですからね。課題が見えてくると必要な技術の方向性も明らかになってきます。基礎研究から生まれた新技術で社会を変える道をあきらめてはいけないでしょう。

 ただ技術だけでは、ビジネスが下手になるのも事実です。やはり技術に長けた人、ビジネス感覚に長けた人の両方を育成していくしかない。

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「日本の研究開発力は落ちていない」の著者

佐伯 真也

佐伯 真也(さえき・しんや)

日経ビジネス記者

家電メーカーで約4年間勤務後、2007年6月に日経BP社に入社。日経エレクトロニクス、日経ビジネス編集部を経て、15年4月から日本経済新聞社証券部へ出向。17年4月に日経ビジネス編集部に復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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