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米国とトルコ、強権大統領の経済音痴が招く危機

トランプvs.エルドアン、米国の経済学者はいずこへ

2018年8月22日(水)

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2018年7月11日、ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)の夕食会で談笑するトランプ米大統領と、エルドアントルコ大統領(右)(写真=ロイター/アフロ)

 強権大統領の経済音痴が危機を増幅している。トルコショックがおさまらないのは、「金利は搾取の道具」と考えるエルドアン大統領が中央銀行を支配して利上げを認めないからである。利上げという通貨防衛の鉄則を無視するのは、経済常識の欠如を示している。

 トルコショックは対外債務を抱える新興国に連鎖する。そのトルコに対して、制裁関税を課したトランプ米大統領もまた無知をさらけ出している。二国間の貿易赤字を「損失」と勘違いし、赤字解消を要求するのは、グローバル経済の相互依存を知らぬ大きな過ちである。こうした強権大統領の経済音痴は、民主主義と資本主義に複合危機をもたらし、世界経済を大きく揺さぶっている。

トルコショックをもたらした利上げ拒否

 強権政治は経済危機を招く。その典型が2016年のクーデター未遂事件以来、強権化を極めたトルコのエルドアン大統領である。強権によって、いっさいの批判を許さず締め付けを強めており、欧州連合(EU)も警戒感を高めてきた。問題は、エルドアン経済政策が独善に陥っていることだ。米欧が金融緩和からの出口戦略に動いているのに、内需刺激をやめなかった。

 なにより、エルドアン大統領は金利引き上げを認めなかった。「金利は搾取の道具」と考える強権大統領がいるかぎり、市場は安心して通貨リラを売り込める。トルコショックのきっかけは、米国との対立だった。トランプ米大統領は、トルコが拘束する米国人牧師の解放を求めて、鉄鋼・アルミニウムの関税を倍増する制裁関税発動を打ち出した。

 しかし、トルコショックの基本的な要因は、強権大統領の経済音痴にあることは間違いない。中央銀行は大統領の完全支配下にある。心配したメルケル独首相が「中央銀行の独立性を確保せよ」と忠告したほどだ。中央銀行は、エルドアン大統領の「金利は搾取」論を忖度して、政策金利は上げられず、なんとか市場金利の利上げ誘導でしのごうとしているが、限界は明らかだ。

 巨額の対外債務を抱え負担が膨らむ民間企業の団体などは、通貨防衛のための利上げを求めるが、封じ込まれている。インフレの進行が経済を危機に陥れ国民生活を圧迫するなかで、トルコ国債は格下げされた。

IMFにも背を向ける

 通常、通貨危機に陥った国は、国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐが、ここでもエルドアン大統領は「政治主権の放棄になる」と自説に固執し、IMF依存を避けている。中南米債務危機やアジア通貨危機で、支援の見返りに厳しい財政緊縮など改革を要求された経緯をみているからだろう。

 IMF依存を避ける代わりに、サウジアラビアとの断交で孤立しているカタールと直接投資などで関係を深め、通貨スワップ協定を結んだ。いかにも付け焼刃だ。独仏などEUからの支援も期待しているが、限界はあるだろう。

コメント8件コメント/レビュー

>トランプ大統領が米国の主要メディアを「国民の敵」と呼び、批判的な報道を「フェイク(偽)ニュース」と決めつけるのは、言論の自由を最優先してきた米国の建国の精神を真っ向から否定するものだ。


トランプ大統領はフェイクニュースを国民の敵と言っただけ(2018/08/26 12:48)

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「米国とトルコ、強権大統領の経済音痴が招く危機」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト/武蔵野大学 国際総合研究所 フェロー

1969年 日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授、明治大学 国際総合研究所 フェローなどを歴任。2018年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>トランプ大統領が米国の主要メディアを「国民の敵」と呼び、批判的な報道を「フェイク(偽)ニュース」と決めつけるのは、言論の自由を最優先してきた米国の建国の精神を真っ向から否定するものだ。


トランプ大統領はフェイクニュースを国民の敵と言っただけ(2018/08/26 12:48)

トランプ大統領は「民主主義の雄」とも言える存在になりました,悪い意味で。選挙に勝てる者こそ強いという象徴です。
中間選挙でどうなるのかは正直分かりませんが,どうなろうが大統領令やSNS発信で人気をとり続けるでしょうし,おそらくは2期目も当選するでしょう。
ただ,世界経済がどうなるかは別として,戦争の火ぶたを自ら開くことは無いでしょう。人道的な理由では無く,自国軍人が死んで集票出来なくなるとまずいから。米国軍人に死者が出すぎないように,相手を選んだ火遊びはするかもしれませんし,相手の方から仕掛けられるかもしれませんが。(2018/08/22 16:38)

国際政治学の学徒から見ると
自由貿易の予定調和の世界観は全く現実的じゃない。
主流派経済学には使用価値という発想が無いから
比較優位の理論では財一単位当たりの交換比率が等しいなら
バッグや靴を作っていようが戦闘機やミサイルを作っていようが等価と見なすが
政治学的に見ればそのどちらを作っている国が‘強い’かは言うまでもない。
国際政治の本質がアナーキーで国であれ個人であれ所有権というものが
究極的には軍事力によってしか担保されない以上、
貿易の及ぼす軍事的生産力への影響は無視できない。
実際、だからこそWTO協定が引き継いだGATT21条には
安全保障上必要な場合はあらゆる貿易制限的措置が取れて
しかもその安全保障の定義も加盟国が自己判断出来るという例外条項がある。(2018/08/22 12:27)

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