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リーマン・ショック10年(下)資本主義が危うい

強権と独占で複合危機に

2018年9月12日(水)

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(写真=ロイター/アフロ)

 リーマン・ショック10年後の世界は、強権政治と独占経営によって、資本主義が揺らいでいる。トランプ米大統領による保護主義・排外主義と習近平中国国家主席による国家資本主義の「強権対立」は、米中間の覇権争いに発展した。

 デジタル革命を先導するアマゾンなど米国のIT(情報技術)5強は独占の弊害が目立ってきた。問題はそれが格差拡大とポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭によって、民主主義の危機に連鎖しているところにある。金融危機はいつ再燃してもおかしくないが、この複合危機の根はもっと深い。自由な市場と民主的な政治を前提にしてきた戦後の世界システムの危機である。

次はトランプショックか

 リーマン・ショックの後遺症がまず表れたのは2010年からのユーロ危機だった。PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)というありがたくない呼び名の国々が、危機に見舞われた。

 とりわけギリシャ危機は深刻だった。欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカ支援体制のもとで苦しい改革を進め、ようやく最近、危機から脱したが、成長力は乏しくまだ難題が残る。ポピュリスト政権下のイタリアには銀行不安がなおくすぶる。

ギリシャ危機は深刻だった。2014年4月1日、ユーロ圏財務相会合でギリシャ追加融資を承認。アテネでは、抗議する人々が議会に押し寄せた(写真=AP/アフロ)

 リーマン・ショックに対応した金融緩和から各国が出口に向かうのは当然だが、その余波も見逃がせない。先頭を行く米連邦準備理事会(FRB)の利上げで、対外債務を抱えた新興国からの資本流出が相次いでいる。とりわけアルゼンチンやトルコは大幅な通貨安に直面している。新興国危機が危機の火種になっている。

 しかし、次の金融危機が起きるとすれば、ユーロ圏や新興国発ではないだろう。やはり震源地は米国になるはずだ。それも今度はトランプショックの恐れがある。

貿易戦争に金融政策・為替介入

 リーマンショックの反省から、ボルカー元FRB議長を中心に金融規制「ボルカー・ルール」がまとめられた。しかし、トランプ大統領はこの金融規制の緩和を打ち出した。反ウォール街を売りにしていたはずなのに、ウォール街寄りを鮮明にしている。出口戦略に実績があった当時のイエレンFRB議長をあえて交代させたのは、大統領の金融規制緩和に抵抗したせいかもしれない。トランプ流の金融規制緩和は、金融資本主義の肥大化を加速する可能性がある。それは潜在的危機の温床になりかねない。

 もうひとつの危険は、パウエルFRB議長が進めている利上げ路線に、「低金利好き」のトランプ大統領が介入して、本来あるべき利上げが見送られてしまうことだ。パウエル議長が政治圧力に抵抗しきれないと、再びバブルの発生と崩壊につながりかねない。

コメント11件コメント/レビュー

ここのコメント欄を読むと、
「選挙に勝った」とか「多数派を占めた」のだから「民主的」あるいは「民主主義」である、と浅はかな誤解をしている輩が多い、ということがわかる。

「選挙に勝った」とか「多数派を占めた」というのは、「民主的」とか「民主主義」を意味しない。これは、初等・中等教育で習うことである。

この程度のことも理解しないまま、岡部氏の議論を批判している(つもりになっている)人々の国(=日本)こそ、もっとも民主主義が危機的に瀕している国なのだということを、岡部氏の議論は明らかにしてくれた。(2018/09/19 14:02)

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「リーマン・ショック10年(下)資本主義が危うい」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト/武蔵野大学 国際総合研究所 フェロー

1969年 日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授、明治大学 国際総合研究所 フェローなどを歴任。2018年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ここのコメント欄を読むと、
「選挙に勝った」とか「多数派を占めた」のだから「民主的」あるいは「民主主義」である、と浅はかな誤解をしている輩が多い、ということがわかる。

「選挙に勝った」とか「多数派を占めた」というのは、「民主的」とか「民主主義」を意味しない。これは、初等・中等教育で習うことである。

この程度のことも理解しないまま、岡部氏の議論を批判している(つもりになっている)人々の国(=日本)こそ、もっとも民主主義が危機的に瀕している国なのだということを、岡部氏の議論は明らかにしてくれた。(2018/09/19 14:02)

このコラムを含め、最近のマスコミに懐疑的にならざるを得ない一つに、欧州で台頭している自国主義を「極右」とひとまとめに訳す事にある。「極右」である。

極という文字を使うからには最も右に寄っていなければならないが、欧州の場合、正当な選挙を経ての結果なので、果たして「極」か? と疑問を持たざるを得ない。

ようするに、彼らの台頭の理由が理解できないので、ひとまとめにして「極右」という文字をあてがっているだけじゃないの? というのが正直な感想になる。

更に言えば、米中の関税合戦をアメリカ議会が容認している事を考えれば、強権トランプの暴走ではない事は明らかで、ともすれば上辺だけの論が多いコラムになっているのが残念です。(2018/09/14 12:03)

ヘイトスピーチは規制すべきというのであれば、リベラルからのヘイト的な言動も規制されないのはおかしくないですか?
また、トランプ大統領がマスメディアをフェイクニュースと侮蔑するのは、情報を加工し、恣意的な解釈を加えてねじ曲げたり、本当に重要なことを報道しないという、不誠実さが原因なのに、反省すらせず、やりたい放題と自由を履き違えて垂れ流し続けるからだと思いますよ。(2018/09/13 09:01)

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