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米国の支配権めぐる争い:トランプは敗北したか

ウォール街は制御不能な政権の出現に驚愕した

2018年11月15日(木)

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中間選挙を終え、記者会見に臨んだトランプ大統領(写真:AP/アフロ)

 米中間選挙は、トランプ共和党と「反トランプ」民主党との接戦に終わった。外交上の決定権を持つ上院では共和党が勝利したが、下院は僅差で民主党が制した。下院の選挙区別得票率を見れば、東海岸とカリフォルニアが野党民主党の、中西部が与党共和党の票田であることがわかる。このことの意味については、あとで触れる。

 2016年の大統領選以来、大手メディアは総力をあげて猛烈な「トランプ叩き」を展開してきた。ロシアの情報機関が大統領選でトランプ陣営を支援したという「ロシア・ゲート」疑惑にはじまり、トランプ個人の女性スキャンダルから、トランプが指名した最高裁判事候補の高校時代のスキャンダル暴露まで、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の図式である。

 米国は完全に2つに分裂している。この分裂は1990年代からはじまり、ブッシュ・ジュニア時代に顕著になった。オバマは国民の統合(ユナイト)を呼びかけて当選したが、その巧みな演出にもかかわらず、対立の根深さを覆い隠すことはできなかった。トランプがこの対立を激化させたという見方は誤りである。対立の根深さが、トランプを大統領にまで押し上げたのだ。

トランプはリンカーン以来の共和党本流!?

 19世紀の米国も2つに分裂しており、ついには血で血を洗う内戦に突入した。

 「南北戦争」というのは日本語で、英語ではthe Civil War 「あの内戦」と呼ぶのだが、これこそ米国が体験した最大の戦争であった。犠牲者数は南北合わせて30万人。これは、日本・ドイツと戦った第二次世界大戦での米兵の犠牲者15万人の倍である。

 大統領エイブラハム・リンカーン率いる北軍は、南部連合の首都リッチモンドを焼き払い、南部人が選挙で選んだ大統領ジェファソン・ディヴィスを反逆罪で逮捕、投獄した。

 「敗戦国」となった南部は12年間にわたって北部軍の軍政下におかれ、「近代化」が強制された。同時期の戊辰戦争で「賊軍」とされた東北諸藩が受けたような精神的な傷跡が、南部諸州の人々(ただし白人のみ)にはいまも残っている。

 南北戦争の原因は、保護貿易主義と奴隷制廃止を訴える北部の産業界と、自由貿易主義と奴隷制維持を訴える南部綿花地帯の大地主(プランター)との対立だった。南部人にとって、大量の綿花を買ってくれる工業国・英国との自由貿易は死活問題。奴隷という形で、外国人労働力が自由に入ってくることも歓迎していた。この南部人が中心になって結成した政党が「民主党」である。当時の民主党は、奴隷制を擁護する地主の政党だった。

 一方、弱い産業は、常に保護主義を求める。産業革命を始めたばかりの北部人は、英国綿製品の大量流入が自分たちの弱々しい産業にとってダメージとなることを知っていた。この北部人が中心となって結成した政党が「共和党」であり、共和党初の大統領に当選したのがリンカーンである。国境線を高くして米国を守ろうとする「保護貿易主義者」という点で、トランプはまさにリンカーン以来の共和党本流といえる。

コメント31件コメント/レビュー

ユダヤ人経済人が一つの国家の通貨発行件を手に入れた事実をきちんと書いたことは、良かった。
私はただの大手企業の中間管理職だった(笑)けれど、記事の内容と同じ理解をもっています。
まだ、日経の記者がこの様な記事を書くことには難しさがあるのでしょうが、予備校の講師に名を借りてこの内容を記事にしたことは、とても評価できます。(2018/11/16 08:21)

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「米国の支配権めぐる争い:トランプは敗北したか」の著者

茂木 誠

茂木 誠(もぎ・まこと)

駿台予備学校世界史科講師/N予備校世界史講師

東京都出身。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を得ている。世界史の大学受験参考書・問題集のほか、ビジネスパーソン向けの歴史教養・ニュース解説の雑誌記事、書籍を多数執筆。YouTubeもぎせかチャンネルで時事問題について発信中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ユダヤ人経済人が一つの国家の通貨発行件を手に入れた事実をきちんと書いたことは、良かった。
私はただの大手企業の中間管理職だった(笑)けれど、記事の内容と同じ理解をもっています。
まだ、日経の記者がこの様な記事を書くことには難しさがあるのでしょうが、予備校の講師に名を借りてこの内容を記事にしたことは、とても評価できます。(2018/11/16 08:21)

〈トランプはツイッターという武器を手にし、情報操作を繰り返すメディアに対しては「フェイク・ニュース(嘘報道)!」と痛罵し、大衆は溜飲を下げる〉

そうではない。事実を報道しているCNNなどの既存メディアを「ファイク・ニュース」と決めつけ、ツイッターで「フェイク・メッセージ」を垂れ流しているのはトランプ自身であるる。

論理的な思考ができない米国民の約半数の人々は、トランプの「フェイク・メッセージ」に、いとも簡単にだまされている。(2018/11/15 22:48)

素晴らしい。
歴史から現在の状況を概観できる解説に感謝します。(2018/11/15 22:00)

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保岡 興治 元法相、自民党憲法改正推進本部特別顧問