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北朝鮮が核を手放した際の日本のリスクとは?

多様なシナリオを想定した国のかじ取りを求む

2018年3月20日(火)

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 最近の北朝鮮情勢はめまぐるしい。

 平昌オリンピックを機に韓国と急接近をし、その後、平壌で国家安保室長の鄭義溶氏や国家情報院長の徐勲氏が率いる韓国特命使節団による金正恩氏との会談を経て、4月に南北首脳会談が実現すると発表された。この際、金氏は自国の安全が保障されれば核を持つ理由がないと語ったり、南北合同軍事演習の容認まで口に出したという。

北朝鮮による核ミサイルの保有を巡り、米国では対話路線と強硬路線が交錯している。(写真=KCNA/UPI/アフロ)

 さらに韓国の特使はアメリカに出向き、金氏による米朝首脳会談の意思を伝えると、なんとトランプ氏はそれを受けた。

 これに対して、日本はトランプ氏のフライングを避けるために河野外相がアメリカに出向いて調整を行う予定だったのに、その会合相手になるはずだったティラーソン国務長官が電撃解任されてしまった。

 そして、後任にはポンペオCIA長官が就任することが発表されたが、北朝鮮対話派のティラーソン氏と違い、北朝鮮強硬派とされる人物である。

 アメリカも北朝鮮も真意がまったく見えない中、日本は蚊帳の外に置かれているとされているのが現状だ。

蚊帳の外より問題はシミュレーションのなさ

 確かに日本が蚊帳の外に置かれることで、仮に非核化が決まったとしても、拉致問題が置き去りにされる危険は小さくない。

 アメリカにしても自国の国益を考えると、北にミサイルと核を放棄させれば目的が達せられるし、国境が接する韓国も、その暴発を抑えることが一番の関心事だ。実際、北朝鮮有事の危険が残る限り、韓国への投資も手控えられかねないから、安全保障だけでなく、経済的にも重大な懸案事だ。アメリカや韓国が、日本の拉致問題をついでに取り上げてくれると考えるほうが甘いのかもしれない。

 ただ、このような「蚊帳の外」に置かれること以上に、日本のサバイバルにとって重要なのは、今後についてきちんとしたシミュレーションがないことだと私は考えている。

 今回、米朝会談を前に強硬派のポンペオ氏を指名したように、アメリカは対話路線と強硬路線の両方のシナリオを用意しているようだ。「すぐに退席するかもしれないし、最高の取り引きをするかもしれない」と明言している。

 北朝鮮のほうも2月21日の段階では、「対話と戦争、両方に向けて十分な準備ができている」と発表している。

 要するに、合意と対決継続の両方のシナリオが用意されているということだろう。日本のように圧力一辺倒という単純思考(認知科学の上では「この道しかない」というのが不適応思考と考えられていることは何回か触れたとおりだ)ではないのだ。

 もちろん米朝首脳会談が、どちらかの思惑でドタキャンになる可能性だって残されている。

 仮に決別という話になれば、それこそトランプは軍事オプションという選択をするかもしれないし、その際に、日本も韓国もどの程度のとばっちりを食うかは分からない。

 北朝鮮が勝つことはないだろうが、金正恩が殺されたとしても、終戦を認めない可能性もある。内戦状態が長く続くことは、今以上に日本にとっても危険な状態なのは間違いないだろう。

 仮に北朝鮮が負けを認め、終戦になったとしても、その間に韓国経済が大混乱したり、イラク戦争後のイラクのようにゲリラ戦争が続く可能性も残されているし、麻生蔵相が問題にしたように武装難民が押しかけてくるかもしれない。韓国内では、旧百済と新羅の間で長らく差別が続いた。旧北朝鮮の人が差別を恐れて、朝鮮総連の親戚などを頼って、武装していない難民が日本に押しかけてくる可能性もある。韓国と北朝鮮が併合されれば、彼らは韓国のパスポートを持つことになるから日本に簡単に入ってきてしまう。財産を全く持っていない人たちだから、治安問題にも当然発展するだろう。

 米国との対話の決別は北朝鮮の崩壊を早めるかもしれないが、その分、大混乱が早く訪れるかもしれない。しかし日本では、その準備の声はほとんどといっていいほど聞こえてこない。

 韓国のほうは、混乱を避けるために全力を尽くしているように見えるが、日本にその準備があるようにはどうしても感じられない。

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「北朝鮮が核を手放した際の日本のリスクとは?」の著者

和田 秀樹

和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

精神科医。『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(自己心理学)などが専門。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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