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矛盾をマネジメントする「両利きの経営」で勝つ

『Hit Refresh』から読み解く、マイクロソフトのしたたかな復活戦略(第3回)

2018年1月22日(月)

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 前回、マイクロソフトが「両利き経営」で、かつての勢いを再び取り戻しつつあることを述べた。実は、この「両利き経営」の上手な実践が、現在の多くの企業にも求められている。そこで、本稿では「両利き経営」について、さらに掘り下げたいと思う。新しい技術は古い技術と矛盾する部分がある。つまり、左手で新しい技術に取り組もうとすると、右手にある既存の古い技術を否定しないといけなくなる。マイクロソフトの例で言えば、新しい技術がクラウドで古い技術がパッケージソフトやサーバー事業だった。右手の事業だけに集中すると時間の経過とともにじり貧になってしまうので、両方をうまくやっていって、右手の既存事業が元気なうちに左手の新技術の事業を軌道に乗せていくマネジメント能力が、経営者には求められる。

 クラウド事業と既存のサーバー事業。この2つは、相矛盾する関係のように見える。クラウドを推進すれば、サーバー事業の足を引っ張ることになる。しかも、ナデラがマイクロソフトのCEOに就任した2014年時点では、クラウドはマイクロソフトの利益にほとんど貢献していなかった。一方で、サーバー用ソフトウェア事業は、オフィス事業、OS事業と並んで会社の屋台骨を支える収益源だった。

 しかし、会社の将来を考えると、クラウドにシフトしていくことが必須だと、ナデラは考えていた。そこでナデラは、クラウド事業と既存のサーバー事業の両方を同時に追求することにした。つまり、「両利きの経営」を目指したわけだ。

 手詰まり状態を打開するため、私はSTB(サーバー&ツール事業部)の管理者チームのメンバー全員と個別に会い、意向を探り、質問しては耳を傾けた。私たちが目指すべきはクラウド中心の戦略だという点で一致する必要があった。私たちの製品やテクノロジーを、顧客企業の敷地内に置かれたプライベート・サーバーのためだけではなく、クラウドのためにも最大限利用しなければならない。ただし、いくらクラウド中心とはいえ、サーバー事業の強みを生かし、プライベート・サーバーとパブリッククラウドの両方を求めている顧客に、両者を組み合わせたハイブリッドな解決策を提供することはできる。そうすれば、他社との差別化を図ることも可能だ。

 こうした新たな枠組みを示すと、議論の中身が変わり、クラウドへの全員一致した取り組みを阻む障害が取り除かれていった。私は、企業顧客のニーズを満たす独創的な方法を探り、革新を生み出す道が新たに開けてくるのを感じた。(『Hit Refresh』chapter 2より)

 矛盾する中にも、既存の資産を活かす方法を見いだし、両利きの経営につなげていくあたりが、いかにもマイクロソフトらしいやり方だと思う。

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「矛盾をマネジメントする「両利きの経営」で勝つ」の著者

根来 龍之

根来 龍之(ねごろ・たつゆき)

早稲田大学ビジネススクール教授

早稲田大学ビジネススクールのディレクター(統括責任者)と早稲田大学IT戦略研究所所長を兼務。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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