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英語力のものさし「CEFR」の可能性とリスク

現実的なアプローチが成否を分ける

2018年11月10日(土)

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(写真:PIXTA)

 最近、英語教育では、CEFR(セファール)という英語力判定基準が注目を浴びています。これは、もともとはEUがその圏内の就学、就労、経済活動、文化交流などを促進するために作り上げた基準で、現在のところ40言語前後に対応するものが作られています。レベルは下から、A1, A2, B1, B2, C1, C2となっており、C2がネイティブレベルです。ネイティブレベルといっても、CEFRの記述を見る限り、「高度なネイティブレベル」と考えた方が良いかも知れません。

 また、CEFRはレベル別に、4技能すべての運用能力について基準を設けています。4技能すべてということは、ある意味でバランスが取れており、また、その中には当然ながら私たちの苦手なスピーキング能力も入っていますので、注目されるのも当然なことかと思われます。

 このような流れの結果、様々な英語試験が、それぞれの何レベル(もしくはスコア)がCEFRの何レベルに相当するという関連性を示すようになりました。しかし、これには少々首をかしげる点があります。なぜなら、CEFR自体は判定基準を提供しているだけで公式のテストを実施しておらず、民間の英語試験はいわば独自の解釈で、「後付け」でCEFRとの関連付けを行っているからです。これは、「後出しジャンケン」みたいなもので、どこまで本当にCEFRのレベルと適合しているのかについて疑問が残ります。小規模でも、CEFRが公式テストを作成して実施し、試験問題を開示して、その結果を数値で示してくれると、この辺りの問題はかなり整理されるはずですが、元々異なる目的、異なる基準で作成されたテストをCEFRに関連付けるのにはかなり無理があると予想されます。

 しかし、もっと大きな問題は、CEFRが日本人にとって、本当に現実的な判定基準なのかという点です。なぜなら、言語そのもののルーツの違いや、環境の違いのためにEU諸国の人たちに比べると、私たちは全般的に不利で、特にスピーキングを苦手としているからです。その証左に、CEFRの判定基準が日本人にはハードルが高過ぎるということで、CEFR-Jという基準が公的資金によって作成されています。

 スピーキング能力の扱いにはとても難しい点があります。それは、同じスピーキング能力といっても日常会話能力とスピーチ能力やプレゼン能力は全く異なるからです。普通に考えると、日常会話の方が簡単であるように思え、CEFRでも大きくはまず日常会話、そしてスピーチやプレゼン、ディスカッションの能力という流れになっています。しかし、ここは大変誤解の多いところなのですが、外国語として学ぶ場合には、難度は逆で、スピーチやプレゼンなどよりも日常会話の方がはるかに難しいのです。

 どうしてでしょうか。それは、皆さんもきっとご経験があるはずで、日常会話では常に変化する状況の中で、言いたいと思ったことを瞬時に言うだけでなく、相手が発した言葉にも瞬時に応答しないといけないからです。たとえば、自分からは「Thank you.」とは言えても、相手に言われてさらりと「You're welcome.」(フォーマル) もしくは、「Anytime.」(インフォーマル)と適切に返せるかというと、こんな初歩的なところでも、そう簡単にはいかない場合があります。

 また、「Sorry.」と「Excuse me.」の使い分けなどもそう簡単ではありません。これらはほんの一例で、日常会話ではあいさつだけでなく、天気・季節のことや、健康・医療、そして仕事のことなど、多種多様な情報が扱われるため、よほど「慣れ」を養わないと、言葉に詰まり、スムーズなやり取りができません。

 これは、言い換えると、内容的には浅くてよいが、それなりにしっかりとした情報のネットワークが必要だということです。このような情報のネットワークは、基本的には、実体験を通じてしか作ることができません。つまり、実際の生活の中でコミュニケーションを積み重ねないと身に付かないのです。それも、半端な時間ではだめで、最低数百時間の体験が必要です。

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「英語力のものさし「CEFR」の可能性とリスク」の著者

池田 和弘

池田 和弘(いけだ・かずひろ)

大阪観光大学国際交流学部教授

「学習者に優しい」をコンセプトに、認知言語学、レキシカル・グラマー、エマージェント・グラマー、並列分散処理など最新の知見を駆使して、受験英語と実用英語を融合。日本有数の英語学習法のスペシャリスト。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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