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なぜ、30秒たつと値引きしてしまうのか

避けたい「カウントダウン・バーゲンセール」

2017年1月25日(水)

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「高いとお感じになるようでしたら、ご予算に応じてお値引きも可能ですので…」

 その会社(A社)の営業担当は、プレゼンの終盤、資料の最終ページにある価格表に視線を向けた私に対して、その台詞をぶつけてきました。

 私は自分が経営している会社で某サービスの導入を検討しており、複数の会社から提案を受けていました。3社の営業担当からプレゼンを聞くことにして、そのうち1社はお断りをしたものの、残り2社で迷っていたのです。

 A社のプレゼン資料にある価格表を見て、私から「高いですね」や「もう少し安くなりませんか」というコメントをしたわけではありません。その営業担当は、ページをめくって「ちょうど30秒後」に値引きの打診をしてきました。

 この、30秒という時間に対して、私は奇妙なめぐり合わせを感じざるを得ませんでした。「なぜ、どの営業マンも、価格表を出して30秒たつと値下げを申し出てくるのだろうか」――。

顧客は要求していないのに

 私の会社は、法人営業組織を抱えているクライアントに対して、営業力強化の研修やコンサルティングを提供しています。その研修では、「顧客から突きつけられた難しい場面」を題材にして、1日に何十回もロールプレイを繰り返しながら、参加者に対してフィードバックをしていきます。参加者は皆さん、現役の営業マンや営業マネジャーです。

 実はこの商談場面で一番多く取り扱うのが、「顧客との価格交渉」の場面です。価格交渉を題材にしたロールプレイをすると、A社の営業マンと同じように、ほとんどの研修参加者は、「顧客が『高い』と言う前に、営業の方から値下げを提案」してきます。

 その時間も、ほとんどの営業マンが「価格を見て顧客が悩みだしてから30秒後」なのです。

 私は、なぜ、こんなにも多くの営業マンが自ら値下げを提案してくるのか、最初はよく分かりませんでした。というのは、値下げをすれば会社の利益も減ってしまうし、その営業マンの業務目標にとってもプラスにならないからです。

 実際、冒頭に出てきたA社の営業マンにとっても、私が「高いから安くしてください」と言ったのであればともかく、別に値下げの要求はこちらからはしていません。

 もしかして、「定価で提案すると断られるのでは」という思いが営業側にあるのかもしれません。しかし、こんなにも多くの営業マンが自ら勝手に値下げを申し出てくるというのは、何とも言えない気持ちになります。

売れ残りを避ける「最終兵器」

 この現象、身近に思い当たることがあるなと、ふと私は思い出しました。

 たとえば12月、欲しくてたまらない服がいくつかあったときに、多くの消費者は「服は欲しいけど、年末年始になればバーゲンセールが始まって安くなるから、それまで待とう」という行動をとりますね。お店の側も、売れ残りを避けようとしますから、ほとんどの小売店舗では年末年始、バーゲンセールが行われます。

 これは、顧客側から見ると、「時間がたつと、自動的に安くなっていく」ように見えるのではないでしょうか。あたかも、「さあ、価格表を見て30秒間たっても『買う』とおっしゃらなかったお客様には、特別にお安くしますよ!」と、営業マンが勝手にバーゲンセールを始めるようなものです。

 では、なぜ営業が「自分からバーゲンセール」をしてしまうのかについて考えてみましょう。

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「なぜ、30秒たつと値引きしてしまうのか」の著者

高橋 浩一

高橋 浩一(たかはし・こういち)

TORiX代表取締役

東京大学経済学部卒。ジェミニコンサルティングで勤務した後、アルーを創業、取締役及び副社長として組織マネジメントに従事。2011年にTORiXを設立して代表取締役に就任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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