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ドラッカーと考える「民主主義と経営」

「機能する社会」を実現するための経営とは(後編)

2018年11月28日(水)

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(写真=Sipa USA/amanaimages)

 前回の本コラムで、「ティール組織」(フレデリック・ラルー著、鈴木立哉訳、嘉村賢州解説、英治出版、2018年。原題「Reinventing Organizations」)を取り上げました。階層も上下関係もなく、社員に責任と権限が委譲され、「セルフ・マネジメント」(自主経営)を前提に動く組織は、まさに民主主義的です。「経営(マネジメント)」は、自由で生産性の高い理想の形を求めて、日々進化しています。

 一方、「社会」に目を向けると状況は対照的に見えます。11月6日に行われた米国の中間選挙の結果、下院で民主党が8年ぶりに過半数を奪還しました。トランプ政権へ評価が下されて米国が落ち着きを取り戻したという向きもありますが、依然としてアメリカの世論は真っ向から分断されています。むしろこの選挙結果から、ますます憎しみ、対立が深まっていると見るのが妥当でしょう。

 他国でも、同様の懸念があります。ブラジルで新たに誕生した大統領は「ミニトランプ 」と揶揄されるほどの過激な言動で国民の熱狂的な支持を得ました。また、Brexitに揺れた英国をはじめ、ドイツやフランスなどの先進国でも、いわゆる「右派ポピュリズム」と呼ばれる勢力が台頭しています。

 世界の政治潮流は、「対話」「協力」よりも「強硬」「対立」に向かっているかのようです。過激で高圧的なリーダーの人気が高まり、「Yes かNoか」という二極対立が進み、多様な価値観が認められにくくなります。「敵」を明確に掲げるリーダーに多くの国民の支持が集まり、意見や立場の異なる人たちを阻害し、攻撃し始め、ますます対立が深まる悪循環です。

 この問題を解決できるのは誰でしょうか。政治家でしょうか。経済学者でしょうか。ピーター・ドラッカーは、一人一人の身近にある会社や職場の「マネジメント」がこの問題を解決する鍵だと断言しました。

 私たちが「マネジメント」を学び、それを自ら実践することがなぜ、民主主義を守り前進させる鍵になるのか。本コラムの最終回では、その理由と方法について、皆さんと一緒に探っていきたいと思います。

 まずは、中小企業を経営する父親と、大学生の娘との会話から見ていきましょう。

(経営者である父親と大学生の娘の会話)

:「パパ、今日大学のゼミで『ポピュリズム政治』について勉強したよ」

:「とても重要なテーマだな」

:「ポピュリズム政治色が強くなると、民主主義が機能しにくくなる、っていう話が出てきた。その辺のつながりがちょっと分かりにくくて」

:「そもそも、ポピュリズムって何だと思う?」

:「『大衆迎合主義』って習ったけど……。要するに、一般大衆に耳ざわりの良いことばかりを伝えて、熱狂的な支持者を得て行く方法、みたいな感じ?」

:「簡単に言えばそうだな。一般大衆の利益や権利、願望、不安とか恐れを巧みに利用して大衆からの支持を得る手法だと定義されることが多い。既存の体制を築いたエリート層や、学者などの知識人との対決色を前面に出すのも特徴だ」

:「アメリカのトランプ大統領なんか見ていると、そういう印象あるよね。でも、そのポピュリズムの何が問題なの?」

:「特定の指導者の信条や言動に、大衆の考えが影響されすぎることだろうな。自分はどうしたいのか、自分たちには何ができるか、自分はどう努力すべきか、どうすれば価値観の違う人達とも共存できるか、という建設的な考えを持たなくなり、闇雲に過激な言動に熱狂しやすくなるのは、怖いことだ」

:「そうなると、民主主義的でなくなるということ?」

:「ポピュリズムが民主主義と必ずしもぶつかる、というわけではない。民主主義は常にポピュリズムという影を生じやすい性質だとも言える。けど、一人の権力者の『思想』に支配されすぎる、というのは民主主義の危機だと言えるな」

:「反対意見を持つ人たちへの嫌がらせや仕打ちもひどいっていうしね」

:「それこそが問題だ。各々が自分の意見を自由に述べて対話する権利を失ったら、民主主義は絶対に成り立たない」

:「世界中でこのポピュリズムの問題が起きているよね。優秀な政治家がどの国にも不足しているということだね」

:「原因は、政治家だけではないよ」

:「違うの?」

:「ポピュリズムは、独裁者側というよりも、民衆の側が作り出している。それを作り出しているのは人々が持つ未来への恐怖、不安だよ」

:「じゃあ、国民の方に責任があるということ?」

:「誰が悪い、という話じゃない。ただ一つ言えるのは、国民が最も不安や不満を感じるのは、収入や暮らしに関する問題だ。例えば、仕事がない、所得が減る、という経済的な困窮が不満の根っこにある」

:「経済の問題ということ?」

:「そうだな。経済をもっと具体的に掘り下げれば、『経営』『マネジメント』の問題にたどり着く。要するに、その土地にある企業の経営がうまくいっていないと、その土地に住む人の暮らしも不安定になる。結果、ポピュリズム政治家に依存する傾向も高まるとパパは考えているんだ」

:「へえ、ポピュリズムって政治だけの問題なのかと思っていた」

:「もちろん、政治への不信感も大きいし、あるいは逆に政治のシステムによってポピュリズム政治を抑制することも可能だ。けど、実際に我々一人一人が実践できるのは、会社や勤め先での『マネジメント』という舞台だけだよな」

:「大学で勉強する『経営学』が、政治や社会とも繋がっているということだね」

:「そうだ。一人一人が、優れた『経営』『マネジメント』を学んで、実践して、好業績で働きがいの高い会社が増えれば、ポピュリズムに支配されることはない」

:「『経営』『マネジメント』を学ぶのって、社会とか人を幸福にすることにつながるんだね。なんか、興味が湧いてきたな」

コメント4件コメント/レビュー

ドラッガーのマネジメントは精神論的理想論としては理解できる。だが,実践の段階でどう活用するかはまた別の問題だ。現実的問題・課題へのインプリメントでどんな手法があるかは学ばなければならないにもかかわらず,具体的にどこにその学び(の場)があるかが今ひとつ理解・習得できずに難儀している。人間の可能性を広げる手法としてのマネジメントを具体的に実践するノウハウを大衆に伝える情報・教材があるなら紹介して欲しい。実践事例集などはときどき目にするが,そこからどう学ぶかが今一つ分からない。(2018/11/28 11:03)

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「ドラッカーと考える「民主主義と経営」」の著者

藤田 勝利

藤田 勝利(ふじた・かつとし)

経営教育事業家/コンサルタント

1996年上智大学経済学部卒業後、商社勤務などを経て、2004年、米クレアモント大学のビジネススクール(通称ドラッカー・スクール)で経営学修士号を取得。現在はリーダー育成とコンサルティング/コーチングを融合した独自の経営教育事業を手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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ドラッガーのマネジメントは精神論的理想論としては理解できる。だが,実践の段階でどう活用するかはまた別の問題だ。現実的問題・課題へのインプリメントでどんな手法があるかは学ばなければならないにもかかわらず,具体的にどこにその学び(の場)があるかが今ひとつ理解・習得できずに難儀している。人間の可能性を広げる手法としてのマネジメントを具体的に実践するノウハウを大衆に伝える情報・教材があるなら紹介して欲しい。実践事例集などはときどき目にするが,そこからどう学ぶかが今一つ分からない。(2018/11/28 11:03)

ケネディの演説は正に全体主義でありファシズムそのものである
ポピュリズムとは大衆の感情を利用しファシズムは大衆を洗脳する
この文章における優れたマネージメントとファシズムを分けるものは筆者の主観に過ぎない
組織論で洗脳や先導はある程度許容すべきものと考えるが政治の範囲を語るには不適当
理論はそれの適用範囲を理解してこそ成り立つ(2018/11/28 10:45)

『誰が「有害なリーダー」を生み出すのか?』の答は『騙され易い大衆』だと思っている。彼らは民主主義を『多数決』だと考えている。だから、まともであっても少数の意見は無視したり踏み潰してしまう。
民主主義は、本来成熟した個人主義の上に立たないと、ポピュリズムが台頭し易い。民主主義が一番発達している西欧の国々ですら、多数こそ得ていないものの、ポピュリイズムが足場を築いていることは間違いない。具体的には、国政で代議員を各国で増やし続けている。少数とは言え、与党が過半数を維持できない場合にキャスティングボードを握られる可能性が高まる。
日本は西欧と比べると格段に個人主義の発達が遅れている。安倍首相も『ポピュリスト』に限りなく近い政治家の典型だ。「耳触りの良い言葉」は専門のコピーライターを抱えているのではないかと思うほど巧みだ。『女性活躍』や『一億総活躍』も耳障りは良いが、要は『安い労働力』を得る為の呼び水でしか無い。『大衆のため』の様なコピーで、やっている事は大企業や一部の金持ちの為にしかならない事ばかり。
面白いのは、騙されている人達が『騙されている』と気付いていない点だ。こういう人達は『フェイクニュース』にも騙され易い。日本で個人主義が発達しないのは、古くからの風習や教育に問題があるからだ。『長いものには巻かれろ』や『郷に入らば郷に従え』は古人の生活の知恵の様に扱われているが、『悪習』そのものだと言える。少数意見に拘れば『村八分』にされてしまうぞ、という脅しでもある。
私は、アメリカでの合計5年の生活で、自己主張と自分の考え方を大事にすることを学んだ。然し、日本国には『多数決』しか無い。『多数』が間違っている事も少なくないのに。『自由で機能する社会を作るのは「政治家」ではなく「経営者」』という考え方が披露されているが、私は教育改革が必要だと思う。『自己主張』は小学生から訓練しなくては血肉になり難い。交代で皆の前に立ち、多数と違う意見を最後まで負けずに応答する様なロールプレー等を取り入れるのも良いだろう。日本は『改善』は得意だが『改革』が難しいのは、改革派が常に少数だからだ。(2018/11/28 08:23)

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保岡 興治 元法相、自民党憲法改正推進本部特別顧問