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覚醒物質オレキシンの働きを抑える快眠術とは?

発見者に取材! 体に優しい睡眠薬の普及も進む

  • 伊藤和弘=フリーランスライター

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2018年5月2日(水)

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仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。

 オレキシンという言葉をご存じだろうか? 今から20年前の1998年に発見された脳内物質で、人間の「覚醒状態を維持する」働きを持っているという。

1998年に発見された脳内物質「オレキシン」は、人間の覚醒状態を維持する働きを持っている。この働きを知って、眠りの改善にどうつなげればいいのか。(c)Erwin Purnomo Sidi-123RF

 これは日常生活を送る上で欠かせない脳内物質だ。あり得ないような場面で突然眠り込んでしまう疾患であるナルコレプシーも、オレキシンが作られないために起こることが分かっている。また、最近は脳内のオレキシンに作用する安全性の高い睡眠薬も登場している。

 このオレキシンを発見したのは、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構で副機構長を務める同大医学医療系教授の櫻井武さんと同機構長である柳沢正史さんらのグループ。オレキシンの働きを知って、眠りの改善にどうつなげればいいのかを櫻井さんに聞いてみた。

お互いを抑え合う覚醒システムと睡眠システム

 「1910年代から20年代にかけて、最初に脳内における睡眠と覚醒の制御システムに着目したのはウィーン大学の神経精神科教授だったコンスタンチン・フォン・エコノモという人物。当時、脳炎を伴う感染症がはやったことがきっかけでした」と櫻井さんは話し始めた。

 この感染症にかかると、ある人は過眠症になり、ある人は逆に重度の不眠症になった。調べてみると、どちらも脳の視床下部という場所に病変が見つかった。視床下部の後ろのほうに病変があると過眠症になり、前の方(視索前野と呼ばれる部分)にあると不眠症になる。つまり、視床下部の後ろ側に覚醒に関わる領域が、前側に睡眠に関わる領域があることが分かったという。視床下部の前側にある神経細胞はGABAという抑制系の神経伝達物質を作っており、睡眠中に活発に活動している。要は覚醒を抑えているのだ。

脳の視床下部の後ろ側で覚醒物質が作られる
図は左側が前方(目のある方向)。脳の視床下部の後ろ側に覚醒に関わる領域が、前側に睡眠に関わる領域がある。覚醒に関わる領域では、オレキシンやヒスタミン、セロトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリンといった覚醒物質が作られる。(図は櫻井さんの話を基に編集部で作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 「その後、米国ノースウエスタン大学の研究で、脳の底に位置する脳幹が覚醒をつかさどっていることも分かりました。脳幹で血流障害を起こすと意識がなくなることからも脳幹が覚醒に重要なことが分かります。また、覚醒作用のあるモノアミン(ノルアドレナリンやセロトニン)やアセチルコリンが脳幹で作られ、脳全体に運ばれています」(櫻井さん)

 覚醒を促すモノアミンやアセチルコリンを作る神経細胞は、起きている間は活発に働き、眠っているときは活動が鈍くなる。

 このように、視床下部の後ろ側や脳幹にある覚醒システムと、視床下部の前側にある睡眠システムはシーソーのようにお互いを抑え合い、バランスがどちらかに傾くことで覚醒と睡眠が作られるわけだ。

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