キーパーソン

AIによりクラフトマンシップは価値を失う 人に求められるのは文脈作り

ライゾマティクス取締役 真鍋大度氏

2016.03.02杉本 昭彦、中村 勇介=日経デジタルマーケティング

ライゾマティクス取締役の真鍋大度氏は、Perfumeのコンサートの演出サポートなども手掛けるメディアアート分野で注目の人物。人工知能の活用にも取り組む同氏に、その可能性などを聞いた。

 いずれも評価は簡単で、ゴールは来店客が全員ダンスフロアに降りてきている状態を作りだすこと。iPhoneの加速度センサーと3Dスキャナーを組み合わせることで、来場者の総数といる場所は把握できている。バーカウンターにいる人のプレイリストもデータとして取り込んでいるので、彼らをダンスフロアに集めるには、好みの曲をかければいい。

 だが、まだまだ人間がやった方が盛り上がり、観客も集められる。ただ、それでも何度も続けていくことで、データが集まるので学習にかけたら面白い結果が得られるかもしれない。

現時点では、DJは人間の方が向いているという結果が出ているが、今後、AIと人間はどのような関係を築いていくと考えているのか。

 人間とAIは協業していくことになると思う。例えば、DJで考えた場合、ドラムのパターンやコード、ベースラインが合う曲を見つけるといったことは、機械なら一瞬でできる。その中から、バーカウンターにいる人のプレイリストに入ってる曲の候補を絞り込むところまでは、AIの得意領域だ。

 だが、今の観客の雰囲気や盛り上がりも鑑みて、本当に流す1曲を絞り込む最後の作業については、やはり人間にしかできないだろう。そういった、文脈やコンセプトを作ることが人間には求められると考えている。

 写真であれば、構図の正しさやカラーバランスの良さは数値化できるが、それが人の心を動かす写真かを判断することは機械には向いていない。例えば約20人のポートレート写真を200枚ほど撮影して、様々な人に写真を選んでもらうと好かれる写真はおおよそ似通ってくる。

 しかし、それを機械にやらせようとすると非常に難しい。文脈やコンセプトに合わせて撮影する対象物や、撮影した写真を選んでいくことが人の価値になっていくだろう。

 一方、職人的な作業、クラフトマンシップ的なものは価値を失っていくとみている。写真なら、それを機械が撮ったのか、人間が撮ったのかはあまり重要ではなくなっていく。また、楽器の演奏ではしばしば、人間離れした複雑な演奏、といった表現をされるが、それはむしろ機械の得意領域だ。そういった職人的な作業よりもコンセプトを作ることを人間は求められるようになる。

 ただ、私自身はAIへの関心は薄れつつある。

論文から実用化へのスピード競争

それはなぜか?

 AIも実装段階に入っているからだ。AIは想像以上に早期に広告案件など仕事として成立するようになった。例えば、企業が持つデータを解析してグラフィックにしたいといった要望は数多く寄せられている。

 これまでは新しい技術が仕事になるまでに、5年程度を費やすことが多かった。それまで、メディアアートとしての作品を制作し続けて、ようやくエンターテインメントなどにも使えるというスピード感だ。ところが、AIや機械学習はその期間が短すぎる。

 AIの新しい論文が発表されると、その論文をどれだけ早く解釈して、実用化に結びつけるかは早い者に勝ちになっている。さらに実用化されたものを基に、今度はどれだけ応用できるかといった競争が起きる。論文、解釈、応用、この3つがものすごいスピードになっている。

 我々もその論文などを基に作品は作っているものの、あまりにも周囲のスピードが速い。AIは今後、人類全体に関わる大きなテーマなので非常に面白いとは思うものの、この波に乗り続けていくのは困難だと判断した。そこで戦うなら、土俵を降りて、違う取り組みをすべきではないかと考え始めた。

 最近は、FinTechの分野、複数のドローンの自動制御などに力を入れている。ドローンを使って、ダンサーを撮影しようとした時に、ダンサーの動きや照明が当たる角度、影の付き方などから判断して、自動的に最適な構図から撮影するといった仕組みを作りたいと考えている。

■修正履歴
リード文中で、Perfumeのコンサートに対する役割の説明で不正確な表現があったため、修正しました。[2016/04/06 10:30]

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