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文科省が新設する「AI研究センター」、トップに41歳の東京大学の杉山将教授

2016.04.11多田 和市

文部科学省が2016年4月内に新設する、人工知能(AI)研究拠点のセンター長人事が固まった。41歳の杉山将・東京大学教授が就任する。日経ビッグデータの取材で明らかになった。杉山氏は、経済産業省、総務省がそれぞれ所管するAI分野の研究センター長と比べて30歳近くも若い。若手を抜擢して10年後を見据えた研究を目指す。

※本記事は、日経新聞電子版への寄稿記事に一部加筆したものです。

自身が取り組んでいる研究分野について説明する東京大学教授の杉山将氏

 文部科学省が所管する理化学研究所に4月に新設する、国内最大級の人工知能(AI)研究拠点「AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター」のトップ人事が、来週正式に発表される。センター長には、機械学習などの基礎理論で国際的に活躍している東京大学の杉山将教授(41歳)が就任する見通しだ。

 杉山氏は「NIPS(Neural Information Processing Systems) 」という、世界的にトップのAI関連国際会議でアジア初のプログラム委員長になるなど、研究者として高い評価を受けている。同センターが目指す10年後を見据えた研究という観点で適任者であると判断されたもようだ。

 AIPセンターは次世代の革新的な技術の研究を目指す。2016年度の研究予算は14億5000万円、研究者やスタッフを合わせると全体で約100人規模になる予定。人選はこれからだが、40代の有能な若手研究者を集める計画だ。杉山氏の理論研究を主軸として、画像処理や自然言語処理などで活躍している若手研究者を集める方針だ。

 加えて、AIやコンピュータビジョン、ロボット工学の世界的権威である米カーネギーメロン大学の金出武雄教授(70歳)など複数の著名な研究者を招聘する見込み。金出氏は特別顧問として、40代前半の杉山センター長に助言していくとみられる。

 金出氏は米国での実績が豊富だ。米大陸自動運転横断ロボット車をはじめ、複数のカメラの画像を組み合わせてスポーツの好プレーなどを周囲360度から見ることができる「アイビジョン・システム」などの開発でリーダーシップを発揮した。アイビジョン・システムは、米フットボールリーグ(NFL)のスーパーボウルで採用された。自動運転や自律ヘリコプター、アイビジョン、顔認識、仮想現実、一人称ビジョンなどを専門とする。

 AIPセンターをより有効に運営するために、経済産業省や総務省と連携していく。具体的には、3省が所管するAI関連の研究所を束ねる司令塔となる組織を設立。その議長に日本学術振興会の安西祐一郎理事長が就任する予定だ。

 経産省は産業技術総合研究所人工知能研究センター(辻井潤一センター長)、総務省では情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター(柳田敏雄センター長)などがAI関連の研究を進めている。60代後半の両センター長と比べて、杉山氏は30歳近く若くしてセンター長となる。

研究員の約3割は海外から

 AIPセンター長の仕事はかなりの激務だとみられる。世界に通用する研究成果を上げるために、AIPセンターならではの研究テーマを選び、社会にインパクトをもたらす必要がある。関係者の話によると、研究テーマを選ぶ作業は「とてもハードだ」という。40代前半でバイタリティーがある杉山氏なら、この重責を全うする力があると見込まれたようだ。

 しかも、グローバルで評価が高く実績がある研究者だけに、優秀な研究者を国内外から引っ張ってこられると期待されている。特別顧問になる金出氏の海外人脈も生かせるはずだ。

 「研究員の約3割は海外から連れてきたい」という文科省の方針に対応できる人事だと言えそうだ。センター長人事が正式に決まることで、文科省が省を挙げて取り組んでいる政策「人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」の中核となる、AIなどの統合研究拠点の体制が整うことになる。

機械学習の基礎理論から応用まで

 杉山氏は今後、東大での教授職を続けながらAIPセンター長の業務に取り組む。ただし、AIPセンター長の仕事が中心になるという。

 杉山氏が取り組んでいる研究テーマは大きく3つある。まずは学習理論の構築だ。主に確率論と統計学に基づいて、学習していない未知の状況に対応できる能力であり、コンピューターが知的に振る舞うために不可欠な能力を獲得するメカニズムの理論的研究に取り組んでいる。

 もう1つは、学習アルゴリズムの開発。「機械学習分野には、入出力が対になったデータから学習する教師付き学習、入力のみのデータから学習する教師なし学習、環境との相互作用を通して最適な行動規則の獲得を目指す強化学習など、様々な課題がある。理論的な裏付けを持ちつつ、実用性の高い機械学習アルゴリズムを開発している」(杉山・佐藤研究室ホームページより)という。

 さらに、機械学習技術の応用だ。「インターネットやセンサー技術の発達と普及に伴い、文書や音声、画像、動画、電子商取引(EC)、電力、医療、生命など、工学や基礎科学の様々な場面で膨大な量のデータが収集されるようになってきた。国内外の企業や研究所と連携し、最先端の機械学習アルゴリズムを駆使して実世界の難問解決に挑戦している」(同)。

 AIPセンターの重要な役割に、研究者の育成がある。東大における学生の指導とともに、杉山氏には10年先を見据えた次世代の革新的な研究を通じて、世界に通用するAI研究者を育ててほしいという強い期待が寄せられている。

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