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「ロボットが協働し、自律的に成長する未来がやってくる」、ファナックとPFNが対談

「BigData Conference 2015 Autumn」報告

2015.09.16池田 園子=フリーライター

「BigData Conference 2015 Autumn」の2日目の基調講演は、「自ら学ぶ産業用ロボットはどこまで進化するか~ディープラーニング活用の可能性」。ファナック専務取締役ロボット事業本部長の稲葉 清典氏と、Preferred Networks(PFN)/Preferred Infrastructure代表取締役社長兼最高経営責任者の西川徹氏が対談した。ファナックは8月、PFNに9億円を出資すると発表している。

 「ITの進化がめざましい中、注目を集めるのは、ロボット産業・機械・工作機械の進化に人工知能(AI)の進化、分散協調型の新しいコンピューティングだ。この3つの進化が融合して大きな価値が生まれ、新しい世界が見えてくる」

 対談の冒頭、PFNの西川徹社長はこう切り出した。

Preferred Networks代表取締役社長兼最高経営責任者の西川徹氏
Preferred Networks代表取締役社長兼最高経営責任者の西川徹氏

ロボットがロボットを作る時代

 西川氏はさらに、「今後、世界的にカギを握るのは自動化だ。少子高齢化が進むと、人が行ってきたことを自動化しなければ、人手が足りない。ビッグデータの世界でも、データ分析まではできるが、分析結果をアクションに落とし込むのに人手がかかることが課題となっている」と説明。自動化に長く取り組み、自社工場でも「産業用ロボットが産業用ロボットを作る」という自動化を実現するファナックに、自動化の展望について尋ねた。

 「グローバルで自動化の流れは強まっている。特に先進国では労働人口減少や高い人件費といった問題が山積している。米国はIoTをはじめとして、企業・生産活動でAI、IT技術が進展し、ヨーロッパではドイツを中心に最適化が起こり『インダストリー4.0』が注目を集めている」(稲葉氏)。

 対して、日本はロボット大国だと稲葉氏は話す。2020年の市場規模において、製造分野のロボットは約2倍に、サービス分野のロボットは約20倍になることが予想され、プロジェクトが進みつつある。

あらゆる分野でロボット活用が進む

 今やロボットは、食品や医薬品、化粧品、自動車、航空宇宙、物流、農業、家電まで、あらゆる分野で使われている。今後はソフトウエアがより一層賢くなり、それに応じて使い勝手が良くなるのに加え、他分野にも応用できるようになるだろう、と稲葉氏は予想する。

ファナック専務取締役の稲葉清典氏
ファナック専務取締役の稲葉清典氏

 ロボティクスの世界では今後、「学習」が、ますます大きな意味を持つようになる。現在、PFNではディープラーニングの技術を、実世界のデバイスを駆動するのに利用している。デバイスに学習させる際に“報酬”を与え、アルゴリズムを自動的に学習させる。

 例えば、複数のロボットカーが一定の範囲内を他車にぶつからずに走り回るようにする実験では、道にそって速い速度で進んだときにプラスの報酬を、壁や他の車にぶつかったり、道を逆走したときにマイナスの報酬を与える。学習初期は何もわからない状態でろくに動けなくても、学習を重ねるうちにランダムに動けるようになり、終期にはスムーズに動けるようになるという。深層強化学習によって、優れた運転操作を自動で獲得できた事例だ。

 「運転は人が得意なタスクの一つだが、機械が学習し得るようになる。運転方法も学習できるほど、機械学習手法が進化している。また現在、ロボットのプログラムを記述するのは人だが、今後は学習能力が高まるにつれ、自動化がより進むだろうと予想する」(西川氏) 

「分散協調型」がロボティクスのキーワードに

 個々のロボットが各々の知能をリアルタイムで交換できる「分散協調型」の強化学習もキーになる。他のロボットが経験したことを、次の瞬間から自分が経験したように振る舞えることで、学習スピードが速まり、未知の状況への対応も可能になる。

 「一方で、ロボットの分野に深層学習を応用する上では壁もある」と指摘する西川氏に対し、稲葉氏は人と一緒に安全に作業できる協働ロボットを例に挙げた。同ロボットは人に触れたのを感じると動作が止まる。この「安全のために必ず収束させる動き」の難易度が高かった、と稲葉氏は振り返る。

 西川氏はCPUやメモリー、ネットワークもボトルネックではないか、と指摘する。どうデータを集めて処理を行うのか、構造の見直しから関わっていく必要がある。例えばデータをクラウドだけでなく、エッジコンピューティングでも処理することで、負荷が少なく対応も速くなる。

 IoTと人工知能の融合は、単にマージするのではなく、互いの分野を理解するのはもちろん、コンピューターアーキテクチャへの深い理解を融合させることがより重要になってくるだろう。

 「状況に応じてロボット同士が会話し、協働して動けるような深層学習を行わせることが重要だ。深層学習の技術を持つPFNと共に、自律的に成長できるロボットの知能向上を目指していきたい」と稲葉氏は締めくくった。

■「BigData Conference 2015 Autumn」「地方創生☆RESASフォーラム2015」報告記事一覧

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