今月のビジュアライゼーション

安倍氏と枝野氏「最後のお願い」、人流データ決戦

2017.10.27中川 真希子

2017年10月21日夜、約1時間半の時間差で2人のキーマンが選挙活動の最終日に演説した。安倍晋三首相は東京・秋葉原、立憲民主党の枝野幸男代表は新宿と、どちらも都市部のターミナル駅前で熱弁をふるった。それぞれの場所にいた人々を人流データを使って1カ月前と比較した。

 分析にはソフトバンクグループで位置情報を用いたビッグデータ事業を行うAgoop(東京都港区)の協力を得た。アプリ利用者の位置情報や通信可否など接続の状況について、許諾を基に匿名化データとして取得している。

 くしくも秋葉原駅と新宿駅は小選挙区の東京1区(千代田区、港区の一部、新宿区の一部)に属し、自民党から山田美樹氏、立憲民主党から海江田万里氏が立候補して激戦を演じていた。

 気象庁のデータによると、枝野氏が演説した18時台の降水量は0.5mm、安倍氏の演説があった19時台は0mmで、気温はそれぞれ17.1℃と17℃でほぼ同じ。終日、肌寒さを感じた一日だった。

秋葉原駅前で安倍氏の演説を聞く人々

秋葉原に1時間以上滞在、7.4ポイント増

 秋葉原は自民党陣営が過去の選挙戦でも打ち上げた場所だ。演説場所はガンダムカフェ秋葉原店前。安倍首相、立候補者の山田氏、麻生太郎副総理が演台に立った。

 人々は明らかに足を止めたようだ。まず秋葉原の演説エリアでの人流を、9月第3週の土曜日(16日)を通常日として演説日当日と比べる。比較する時間帯は19時台(19時00分~59分)で、対象エリアに入ってきた人の滞在した時間を調べた。

 両日とも10分未満の滞在者が一番多い。計測エリアは秋葉原駅を含んでおり、移動中の人口が最も多いからと推測される。

 注目は1時間以上の滞在人口だ。通常日には1時間以上の滞在(実際には2時間以上)は6%だが、演説日は7.4ポイント増の13.5%だった。通常日に2時間以上滞在した人口は、飲食店など商業施設での滞在と考えられる(ヒートマップ参照)。

演説日に1時間以上滞在した人口は通常日に比べ7.4ポイント増。2時間以上はほぼ見受けられない。計測エリアはJR秋葉原駅を含むので、通りすがりなど10分未満の滞在が4分の3を占める
安倍氏の演説エリア。演説当日は明らかに人が増えている。9月16日に見える赤い部分は商業施設のアトレ秋葉原。演説当日はここから人が少なくなっているのが分かる。演説がこの場所で行われた目印として、付近のおよそ100メートル四方を便宜的に囲んだ。実際に計測したのは演説場所付近の4メッシュ(1メッシュ=100m×100m)地図(c)2017 Google, ZENRIN

新宿南口、30分以上滞在が23.4ポイント増

 一方、立憲民主党の枝野氏が演説した新宿駅南口、バスタ新宿付近を見よう。枝野氏の演説時間帯を含む18時台(18時00分~59分)を通常日の同時間帯と比較した。海江田万里氏や福山哲郎幹事長などが枝野氏の前に演説した。

 こちらもターミナル駅ゆえ、通常日も演説日も10分未満で立ち去る人口が最多だ。枝野氏演説で顕著だったのは30分以上滞在した人口で、通常日と比べ23.4ポイント増の34.1%だった。移動客が多いだろうバスタ新宿付近のエリアでこの割合は注目だ。

 ただし1時間以上の人口は極めて少ない。1時間以上の人口が13.5%存在した安倍氏と比べると、ややあわただしい傾向が見て取れる。ここから、枝野氏が演説した新宿には通りすがりの人が聴衆になり、とどまった可能性が考えられる。

枝野氏の演説時間(18時台)に30分以上滞在した人口は通常日に比べ23.4ポイント増だった
枝野氏の演説エリア。当日の演説ポイント(枠内右上)には明らかに人が増えている。枠内右下には、9月16日には存在していなかった人流がある。ここにも聴衆がいた可能性がある。枠外に見える赤い部分は新宿駅出口付近 地図(c)2017 Google, ZENRIN

 結果はいかに。肝心の選挙の勝敗は、海江田氏が山田氏を制し東京1区で当選した。

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