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陶器のような質感でビールを味う、ミネラルを配合した樹脂で実現

文・写真 / カンパネラ編集部 03.20.2018

「プラスチックの食器って味気ない」──。プラスチックの研究者の一言から開発された、陶器のようなぬくもりを感じられる熱伝導プラスチック「NAGORI樹脂」。この樹脂で作られたビールをおいしく楽しめるタンブラーが登場した。その開発の背景にはどんな狙いがあったのだろうか。

病院や介護施設などで出される食事の味がかならずしも評判がよくない。カロリーや栄養はきちんと計算されているものの、なんとなく料理としてその味を楽しめないからだ。

「肌合いに伝わる、ほのかなぬくもり」をコンセプトにした三井化学の熱伝導プラスチック「NAGORI樹脂」。この樹脂で作られた食器は、ある技術者の一言から開発が始まった。「プラスチックの食器って味気ないですよね」──。

プラスチックに足りないものは質感、重量感、温冷感

同社が3月7日から11日に開催した組織横断的なオープン・ラボラトリー活動である展示会「そざいの魅力ラボ(Mitsui Chemicals Material Oriented Laboratory:MOLp)」のクリエイティブパートナー、田子学さん(エムテド代表取締役/デザイナー)は次のように説明する。

「料理のおいしいレストランやホテルではプラスチックの食器は使われていません。味はもちろんのこと、そこに醸しだされる雰囲気や『熱量』を感じることができないと、おいしいと感じられないからです」

そして田子さんはこう続ける。「化学メーカーであれば数値化して特性を測り、研究開発を繰り返していきます。もし、同じような特性の製品が他社から出てきたら、結局は価格競争になってしまいます。しかし、そうでない軸を持っていれば、他社にないポートフォリオを作っていける。その軸が『感性』ではないでしょうか」

そんなところへ「プラスチックの食器って味気ないですよね」と発言したのが研究開発本部でプラスチックの重合について研究する齋藤奨(すすむ)さんだった。「軽すぎてすぐに倒れてしまったり、温かいもの冷たいものの温度感がわからないまま食べたりしているのが、少し味気ないと思いました。なんとかプラスチックという素材面から変えることはできないかと考えました」(齋藤さん)

従来のプラスチックでは質感が足りない。それ以外に足りないものは何かというと、重量感、それに温冷感つまり熱伝導率が低いことと考え、試行錯誤の末に海のミネラルを配合することを思いついた。ポリプロピレン(PP)樹脂にマグネシウムなどの海のミネラルを配合し、陶器のような質感と熱伝導率を併せ持つ特性を実現。比重は約2、熱伝導率は陶器と同じにしたという。

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