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Retty対談「回顧2018 外食」(後編)──サバ缶ブームは「食の活性化」「地方創生」の好モデル

女性の視点が新たな市場を開拓し、生産者の声はより高まる

写真:大槻 純一/構成:橋富 政彦 12.25.2018

女性の視点を獲得することで新しい市場が広がる

池田 これまで漁港から加工業者を含めて、“魚”の世界って基本的に男性中心に回ってきたところがあるんです。それがここに来てサバ缶以外にもサバグルメに女性目線を意識した商品が一気に増えてきました。今年、そういった中でとくに印象的だったのは静岡県焼津市の「岩清」が出した「鯖デリ」シリーズです。これは「パンとワインに合う鯖料理」をコンセプトにしており、「サバマリネード」「サバタパス」「サバリエット」の3ラインナップ。どれもおしゃれで本当に美味しくて、とくにバルサミコ酢で〆てたっぷりのドライフルーツと合わせたマリネードには感激しました。「岩清」は創業180年以上の歴史を誇る老舗水産加工品メーカーですが、「鯖デリ」を開発したのは六代目社長の娘で、東京の外資系企業で働いた後に焼津に戻って企画をされたそうです。

こういう動きはサバに限らず出てきていて、東京・白金台のフレンチ「ティルプス」の田村浩二シェフらが干物をアップデートした「アタラシイヒモノ」は、なんと金目鯛の干物をアクアパッツァにして食べるんです。こちらは伊勢丹新宿本店で販売されて女性客を中心に話題になりました。さらにサバの干物にチョリソー風味を加えた新作も発売されています。

「アタラシイヒモノ」のホームページ(写真引用元:Rettyグルメニュース、https://retty.news/35543/ )

大木 「肉食女子」や「ホルモン女子」なんてブームがありましたが、次は「魚食女子」がブームになるかもしれないですね。『東京最高のレストラン』で今年もっとも注目されたレストランのひとつ、代官山のフレンチ「サンプリシテ」は“熟成魚”をメインにしていて、女性客からとても人気があるんです。

草深 肉はいろいろなブームがあってブランド化も進んでいく一方、魚もまた女性の視点を獲得することで新しい広がりを見せてきたんですね。焼き肉は高級・ブランド志向から揺り戻しがあったという話ですが……。

小関 タレ肉に完全揺り戻しということでもなく2極化と言いますか。やっぱりブランド牛の人気は相変わらず高いですね。もちろん値段も高い(笑)。それは海外から和牛が注目を集めて輸出が増えているということもあると思います。

例えば、個人ブランド牛の先駆者でもある宮崎県大瀬町の牛肉商尾崎のブランド牛「尾崎牛」なんかは月間40頭しか出荷していないのですが、その半数は海外に輸出しています。和牛は血統や手間暇、関わる人の数を考えるとまだ安いのだと思います。需要拡大している海外の方が適正価格で取引できるから、どんどんグローバル化していくでしょう。

小関尚紀氏 サラリーマン作家/MBA
大阪府生まれ。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院ビジネススクール修了経営学修士。趣味である焼き肉は週2ペースで都内の焼き肉店を訪店。予約困難店含め160店舗以上を訪店している。Rettyグルメニュースにおいて連載『国民支持率No1メニュー"焼肉道"の極め方』を執筆。著書は、『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)、『「即判断」する人は、なぜ成功するのか?』(サンマーク出版)、『世界一わかりやすい「ゲーム理論」の教科書」』(KADOKAWA)

草深 美味しいお肉を日本で食べる機会が減りそうですね。

大木 和牛は世界的に希少な食材として注目を集めていますからね。和牛の輸出に限った話ではなく、食の世界の「国際化」も今年のキーワードとして挙げていいと思います。インバウンドの増加で日本のレストランはすでにかなりインターナショナルな場になっているんです。先ほど寿司の高級化が進んでいるという話をしましたが、堀江貴文さんは「それでもまだ安い」と言うんですね。というのも、日本の寿司は全世界に客がいるからなんです。海外でも寿司は高級な食べ物ですが、日本はより安くてよりクオリティが高い。実際、自家用ジェット機で日本に来て「すきやばし次郎」で寿司だけ食べて帰るというマンガみたいな富裕層が実在しているんですよ。

それと、客だけではなくレストラン側も国際化が進んでいます。『世界のベストレストラン50』で注目のレストラン賞を獲得した「傳」なんかはすでに数多くの外国人が働いていますし、印象的なところでは銀座の寿司「はっこく」でデンマーク人の職人が修業をしていましたね。すでに帰国して自分の店を出す準備をしているそうですが、「はっこく」ではつけ場のひとつを任されていました。2020年には東京オリンピックが開催されますし、こうした国際化はより進んでいくでしょう。