塩見なゆの一寸一杯

浅草「水口」:無性に食べたくなる名物「いり豚」、地元の人々に愛される老舗

文/写真:塩見 なゆ 05.20.2019

1927年(昭和2年)に浅草・上野間で開通し、「東洋唯一の地下鉄道」と謳われた現在の東京メトロ銀座線。古い歴史をもつこの路線は、駅ごとに街の印象が大きく変化していくのが特徴です。街が変われば、もちろん酒場とそこに集まる人々の雰囲気もがらりと変わります。酒場案内人の塩見なゆさんが紹介してくれる銀座線の沿線酒場、第1回は銀座線発祥の地・浅草の「食事処・酒肴 水口」です。

東京の街は網の目のように鉄道が走っています。そして、どの駅も同じように見えて、少しずつ表情が違うのがおもしろいですね。今回は、東京の中心部を走り、主要な観光地を結ぶ日本最古の地下鉄である銀座線に乗って、酒場から東京の表情を見ていこうと思います。

スタートは浅草駅。銀座線は当初、ここから上野を結ぶ路線として開業しました。駅周辺には浅草寺・雷門や吾妻橋など、これぞ東京といった名所がいっぱい。

「あら、いらっしゃい!」「どうもご無沙汰しています」

この街で1950年(昭和25年)に創業した「食事処・酒肴 水口」(水口食堂)は、地元の人々に愛され続けてきた老舗です。

二代目、三代目が厨房を守り、笑顔が素敵な明るい女将さんが迎えてくれる家族経営のお店。名物は長く続くお店ならではの仕入れルートを活かして手に入れる上質なマグロと、看板料理の「いり豚」です。

看板料理「いり豚」(左)と、マグロブツ切

1階は2~4人用のテーブル席と一人で来店するお客さんが共有する大きなテーブル席。2階には小上がりもあります。昔ながらの食堂の雰囲気がそのまま今に続いています。

こちら、なんと平日のお昼には満席になるほどの賑わいです。食堂というと飲まない人が多そうですが、水口食堂は早いうちからお酒を飲む人でいっぱいです。アジフライなど定食のおつまみでちびちびと日本酒を進める人もいれば、お昼の定食ながら瓶ビールをお供にする人も多数。ほとんどが地元で働く人々です。



女将さんに「あら、いらっしゃい!」と笑顔いっぱいに挨拶され、「どうもご無沙汰しています」と苦笑いしつつ店内へ。一人ではだいたいテレビ前の大きなテーブルに通され、お一人様の皆さんとご相席です。お隣さんと世間話をすることもあって、それもまた下町の食堂の魅力でしょう。

まずは瓶ビールを頼み、トトトとビアタンを満たしてでは乾杯!

カンパネラナイト