海外酒場事情

老舗「蓮香楼」の飲茶を食べ比べ、本場の広州より香港の方が心躍る理由

文/写真:中村 正人 02.21.2019

先日、香港を訪ねる機会があったので、以前に何度か足を運んだ老舗の飲茶に行くと、昔ながらの雰囲気を残していた。数日後、中国の広州で同名の飲茶を訪ねてみると、ずいぶん雰囲気が違った。この違いは何だろう。その昔「食在広州(食は広州にあり)」と言われたが、いつからか「食在香港」と言われるようになった。今回はお酒の話は出てこないが、香港と広州の飲茶食べ比べの話をしたい。

香港に行ったら食べたいものがふたつある。飲茶とワンタン麺だ。路地裏にあるような庶民的な店がいい。できたてのカニシュウマイ(蟹皇蒸焼賣)やエビ入り蒸し餃子(鮮蝦餃)、チャーシュー飯(叉焼飯)がたまらない。淡い広東風だしのスープに浸かったぷりぷりのエビワンタンもそう。それを食べるだけのために香港に行ってもいいと思ってしまう。

飲茶が運ばれ、籠のふたを開けた瞬間、心が躍る

だから、香港に来て初日から駆け込んだのが、香港島セントラルにある飲茶の老舗「蓮香楼(リンヒョンラウ)」だった。香港島と九龍を結ぶスターフェリーのターミナルから陸橋を渡り、坂道を少し歩くと、小さな門構えが見えてくる。

香港の「蓮香楼」はウェリントンストリート(威靈頓街)にある

いまでは香港でも数少なくなったといわれるワゴン式の飲茶が楽しめる店だ。お昼どきをかなり過ぎていたせいか、店内はそこそこの混みぐあいだが、すぐに席に着くことができた。地元の人と観光客がほどよく混じり合っているが、昔ながらの気のおけない雰囲気が残っていて心地よい。返還前から変わらない風景である。

丸テーブルを囲み、飲茶を楽しむ人たち。少々うるさい歓談の声もここでは気にならない

お茶を注文し、座っていると、ワゴンを押したおばさんが近づいてくる。籠のふたが開けられる瞬間に心が躍る。ところが、目当てにしていたカニシュウマイは見当たらない。聞くと、売り切れとのこと。この店は朝6時から開いているが、点心が売り切れ次第店を閉めるという。遅くとも、午後4時で閉店なのだ。なんと気ままな営業方針だろう。

ワゴンが来たので、席を立ち、籠の中を覗く客たち

仕方なく、ワゴンに残っていたチャーシュー饅(叉焼包)をいただくことに。ちょっと物足りないので、周囲のテーブルを見渡すと、家族でチャーシュー飯を食べている人たちがいた。チャーシューかぶりだが、煮豚とローストは別だ。注文することにした。

甘めのソースで煮た豚肉入りチャーシュー饅(叉焼包)。具の中身が顔を出す無造作な包み方に特徴あり

正解だった。照りのあるロースト豚がごろんと白飯の上に載っている、この感じがいい。甘くて香ばしい豚の脂身は相当なものだが、濃い目のプーアール茶(普洱茶)があれば、問題なくいける。実際、飲茶に行くと、なぜこんなにガブガブとお茶が飲めてしまうのか、不思議である。

色艶のいいロースト豚にはほどよい甘みの利いたタレが塗られている

香港ではワンタン麺屋にも足を運んだ。スープには大きく2種類、清湯と呼ばれる澄まし系の醤油味と、白湯と呼ばれる潮州系のまろやかな白濁スープがある。麺も種類があり、選ぶのに困るときもあるが、個人的には定番の生麺が気に入っている。そして、何よりワンタンの味が店によって違うので、食べ歩きしたくなる。

九龍の佐敦地区にあるワンタン麺屋の清湯スープ。庶民の店ではワンタンは麺の上にある
潮州系の白湯スープのワンタンは具が小さくてひと口サイズ
ピルゼンアレイ