海外酒場事情

ロシアの大衆食堂「スタローヴァヤ」で庶民の味に親しもう

文:中村 正人/写真:佐藤 憲一 02.28.2019

ロシア旅行で困ることのひとつが、レストランでロシア語しか書かれていないメニューを手渡されたときだ。笑顔で迎えてくれた地元のウエーター、ウエートレスの前で、キリル文字の羅列を目にして固く身をこわばらせるばかりで、自分の食べたいものがうまく伝えられないときほど、もどかしく残念なことはない。そんなとき、救われた気がするのが、ロシアの大衆食堂「スタローヴァヤ」の存在である。今回はスタローヴァヤで味わえるロシアの庶民の味を紹介しよう。

ロシアで外食できる場所として、レストランやカフェ(ロシアではお茶だけでなく、しっかり食事がとれる店を指す)、バー(こちらもたいてい食事ができる)などがあるが、最もお手軽なのはスタローヴァヤと呼ばれる食堂だ。

スタローヴァヤは、ひとことでいえば、ビュッフェスタイルのファミレス。もともとソ連時代の企業や工場、大学に併設された食堂の流れをくむものだが、最近は若者向けのおしゃれなチェーン店も現れている。

安くて豊富なメニューの魅力

メニューの中身も庶民的でリーズナブルだ。コーヒーや紅茶など、ドリンク類も豊富。つくりおきの料理が並ぶところは、昔ながらの日本の定食屋みたいでもある。何よりロシア語のメニューに悩まされる必要がないのがうれしい。料理を見ながら好きなだけ選べるので、ひとり旅でも気軽に利用できる。

ロシアの町にはスタローヴァヤはいたるところにあるが、ウラジオストクでおすすめなのが、ヴェルサイユホテルの隣にある「ニ ルィダイ」だろう。2016年にリニューアルされた、リーズナブルなのにレストランのような雰囲気が楽しめる店だ。地元の若い家族連れの姿もよく見かける。

入り口の前にメニューが出されている
朝一番に来たので、店はすいていた。簡素だが、ファミレス風の店内

利用方法は簡単で、キッチンから運ばれた料理が並ぶショーケースの前でトレーを持って好きなものを指差し、皿にのせて渡された料理をレジでお会計するだけ。VISAなどの国際クレジットカードは普通に使える。平日は朝9時から開いているので、開店直後に行くと、できたての朝食が楽しめる。

ショーケースにたくさんの料理が並ぶ

では、どんな料理が食べられるのか。ショーケースに並ぶのは、チキンと野菜の炒め煮や卵とじ、ハンバーグ、いんげん炒め、ブロッコリーなど、日本人にも親しみのあるメニューばかり。味つけもほぼ見た目のとおり。ロシアっぽさを感じさせるのは、ボルシチなどのスープ類が豊富なことだろうか。

メインディッシュになりそうなチキンとトマトの炒め煮
野菜の卵とじは朝ごはんにピッタリ
ハンバーグやフランクフルトなどの肉類も充実
ロシア人はそばの実をよく食べる。ダイエットに効く健康食だそう
ボルシチはロシア人にとっての味噌汁みたいなもの
定番メニューを並べ撮りしてみた

その日の主なメニューをざっと並べ、下の写真の左上から料理と値段を調べてみた。

*1ルーブル=1.68円(2019年2月現在)

A 食パン 3ルーブル
B 家庭風ボルシチ 90ルーブル
C キュウリのサラダ 50ルーブル
D 黒パン 3ルーブル
E チキンとトマトの炒め煮 110ルーブル
F ソバの実 30ルーブル、ロールキャベツ 70ルーブル
G ナス炒め 90ルーブル、カツレツ 70ルーブル
H タマゴとじ 100ルーブル
I ソーセージ 120ルーブル、ポテトチーズ焼き 85ルーブル、インゲン炒め 60ルーブル
J 野菜スープ 70ルーブル
K 海藻サラダ 100ルーブル

どれも驚異的な安さではなかろうか。コートをクロークに預けるようなレストランではこうはいかないが、こうした日常食の並ぶ食堂の定食メニューは日本と比べてもずいぶんリーズナブルなのだ。

実をいうと、各国の経済力を測るひとつの指標とされる「ビッグマック指数」(ビッグマック1個の値段)でいえば、ロシアは世界55位の1.65ドルである(日本は22位で3.6ドル)。ちなみにウラジオストクにはマックはまだ進出していない。世界中どこにでもある外資系外食チェーンはないが、ローカル色豊かな飲食店が多いところが魅力といってもいい。

ピルゼンアレイ