海外酒場事情

上海の飲茶レストラン、店選びから予約・注文・支払いがスマホで“一気通貫”

文/写真:中村 正人 07.26.2018

中国では、買い物はもちろんタクシーや飲食店、そして酒場での支払いがモバイル決済で行えるケースが増えている。カード払いの時代を経ずに、現金払いからモバイル決済に一気に移行しているのだ。ある飲茶レストランでは料理の注文もスマートフォンで行うなどスマホ対応が進んでおり、そうした現状を知れば日本はずいぶん時代遅れに思えてしまう。

いま中国では、上海のような大都市に限らず、かなり辺鄙な地方の町や村でも、買い物はもちろんタクシーや飲食店、そして酒場での支払いはモバイル決済という光景が見られる。特に地方の場合は、クレジットカードや中国版デビットカードの「銀聯カード」のようなカード決済が普及する時期を迎えることなく、現金払いからモバイル決済に一気に移行しているようだ。

あるサービスの仕組みが社会に浸透すると、利用者の新たなニーズに応えたり、不便さを解消するべく、次々とイノベーションが起こるものだ。日本のようにモバイル決済がまだ普及途上だと、事業者、消費者ともにサービス改善の余地がどこにあるかを明確に自覚・共有されることが少ないため、イノベーションが起こりにくいのとは対照的だ。

こればかりは現地の人たちと同じようにこのサービスを使ってみないとわからないことが多い。そこで、日本でふだん使っているスマートフォンに中国の各種アプリをダウンロードして、実際にモバイル決済やそれに付随したさまざまなサービスを体験してみると、いろんなことが見えてきて面白い。

店員に注文する必要のない飲茶レストラン

これは上海在住の友人に連れていってもらった飲茶レストラン「避風塘(ビーフォンタン)」の話である。中国全土に展開しているよく知られたチェーン店だ。

中国全土に店舗を持つ飲茶チェーン「避風塘」

酒好きの友人は飲茶でも「とりあえずビール」のタイプだが、「この店では店員に注文する必要はないんです」。そう笑いながら言うと、テーブルの上に貼られたQRコードを指さすと、「これをウィチャットでスキャンしてください」と話す。

テーブルに店のQRコードが貼られていて、これをスキャンするとメニューが見られ、注文できる

言われたとおりにスキャンすると、画面にこの店のページが立ち上がり、メニューが現れた。テーブルにはふつうのメニューも置かれているのだが、スマホを使えば、店員を呼ぶこともなく、そのまま料理を注文できるのだ。周囲をみると、客はみんなそうしているようだし、店員は料理を運ぶことだけで、注文を取りにくるのは自分の仕事とは思っていないようだ。

「避風塘」のメニューページ。ここから注文する
テーブルに置かれたメニューと同じだが、ウィチャットペイなどで支払うとたまに割引サービスがあるのでお得
注文した飲茶一式。広東風ダッグのパリパリの皮がおいしい

食事がすむと、そのままウィチャットペイでモバイル決済できてしまうので、特に店員になにも告げずに店を後にすることもできる。食い逃げをしようとしても、注文履歴が残っている以上、それはできない相談なのだ。

上海の飲茶レストランでモバイル決済。スマホのQRコードを店員にスキャンしてもらう

この種の一気通貫のサービスが体験できるレストランはまだそれほど一般的ではないかもしれないが、最近上海では政府の通達で飲食店が地方出身の労働者を雇うことが難しくなっているため、経営上有効だと思われる。だが、外食チェーンでは外国人スタッフの姿が当たり前になっている日本でこそ、この種のしくみの導入は必要なのではないだろうか。居酒屋などでタッチパネル式の注文端末が日本でも普及しているが、いま上海で起きていることを知ると、ずいぶん時代遅れに思えてしまうのだった。

支払い履歴はスマホに残るが、レシートもくれるので安心