海外酒場事情

しゃれた酒のつまみがいっぱい! ウラジオストクでたしなむウオッカの夜

文:中村 正人/写真:佐藤 憲一 10.30.2018

ロシアの代表的なアルコールといえば、ウオッカである。ロシアや北欧など寒冷な地域で親しまれる蒸留酒で、原材料はライ麦や大麦、ジャガイモなどの穀類だ。ほぼ無味無臭で無色の酒とされるが、度数が40度以上と強いため、日本ではカクテルなどのスピリッツとして飲まれることが多い。ところが、ロシアに行くと、なぜかおいしく、しかもストレートで飲めてしまうのだ。今回ウラジオストクの夜に楽しむウオッカと絶品おつまみについて紹介しよう。

ロシア人と一緒にウオッカを飲むとき、彼らは瓶ごと冷凍庫で2〜3日ギンギンに冷やしてからショットグラスに注ぐ。アルコール度数が高いため、水のように凍ることもシャーベット状になることもない。好みでレモンやライムの薄切り、ときには荒塩を舐めつつ一気に口に含むと、トロリとした口どけがさわやかで新鮮だ。ウオッカ好きの彼らは、冬はボトルを雪の中に埋めて冷やすという。

とはいえ、彼らにならって調子よくショットグラスを何倍もくいっと飲み干していては、こちらの身体がもたない。欠かせないのが、「ザクースカ」と呼ばれるロシアの酒のつまみである。ザクースカは本来、前菜の意味だが、酒のつまみや軽食など全般をさしていて、これがウオッカによく合う。海外に行くと、その土地の酒がおいしく飲めるのは、つまみのおかげだろう。

サーモンの燻製、ニシンの酢漬け、イクラ、キャビアの絶品の数々

ウラジオストクのレストランでは、酒飲みを喜ばせる、しゃれたザクースカのメニューが多い。

たとえば、肉厚にカットした新鮮なスモークサーモンに、ハーブオイル漬けのオリーブやピクルスなどを添えて出すケターは絶品だ。

サーモンの燻製、ケターは一見刺身風だが、ほどよい塩味でうまい

ニシンをさわやかな芳香のあるディルなどのハーブやニンニクと一緒に酢と塩で漬け込み、小さな切り身として出すセリョトカもそう。タマネギの輪切りや茹でたジャガイモなどを添える。ウオッカにニシンとジャガイモという組み合わせは、ロシアの伝統的なウオッカの定番セットだという。これらの料理は、海鮮が豊富なウラジオストクで人気の老舗レストラン「スポイフェーテ」のザクーシカ二品であり、まさにウオッカのためのつまみといっていい。

ニシンの酢漬け、セリョトカもウオッカに合う
レストラン「スポイフェーテ」はビーチに向かう歩行者天国の噴水通りにある

唐辛子を多用するスパイシーな近隣アジア料理には中国の白酒のような臭みがある酒でも、むしろ合うくらいなのだが、ロシア料理の味付けは基本マイルド。特に冷菜は素材の味をそのまま引き出す淡白さなもので、これがすっきりした飲み口のウオッカに合うのだろう。これは日本人好みといえる。

日本酒のあてなら塩辛だろうが、ウオッカのあてとなれば、イクラだろうか。ウラジオストクでは市場に行くと、新鮮なイクラがパックで安価に売られている。レストランやバーで味わおうとすると、グリルしたシーフードに添えられて出てくることが多い。これはグム百貨店裏手の隠れ家レストラン「ミシェル」のシェフスペシャル料理で、上品に火を通されたサーモングリルの香ばしさがウオッカに合うのはいうまでもない。

サーモンのグリルに香草とイクラを添えて

さらに高級素材といえば、チョウザメの卵であるキャビアだろうか。ロシアではカスピ海産が最高級とされるが、ロシア沿海地方を流れるウスリー川にもチョザメは棲んでいる。

小さく切ったパンの上にキャビアやイクラをのせて食べるのが一般的だ。砕いた氷の上にキャビアやイクラの入った容器を入れたまま冷やして出すこともある。こうしたつまみがあれば、日本では飲みなれないウオッカも十分楽しめるだろう。