海外酒場事情

“マリインスキー劇場”の「くるみ割り人形」、カフェで傾ける一杯のほの甘いスパークリングワイン

文:中村 正人/写真:佐藤 憲一 12.21.2018

現代屈指の指揮者ヴァレリー・ゲルギエフ率いるサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場は、モスクワのボリショイ劇場に並ぶ世界的なオペラとバレエの殿堂である。だが、極東ロシアのウラジオストクにも、オペラやバレエが日々上演されている同じ名前の劇場があることをご存じだろうか。その劇場で一足先に、クリスマスシーズンにぴったりの華やかで心温まるバレエ「くるみ割り人形」を観賞してきた。

ウラジオストクにあるその劇場は、2012年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)にあわせてオープンしているが、2016年にマリインスキー劇場の傘下に入り、「マリインスキー沿海州劇場」と呼ばれている。場所は、ウラジオストク港に架かる金角湾大橋の対岸のすぐそばにある。収容人数1356名の大ホールがある現代的な劇場だ。

マリインスキー沿海州劇場は金角湾大橋の対岸のすぐそばにある

日本ではバレエなんて縁がないけれど、せっかくウラジオストクを訪ねたら、行ってみたい。以前からそう思っていたのだが、2018年11月上旬、それが実現した。

ほの甘く冷えたスパークリングワインを一杯、公演前のささやかな楽しみ

公演は昼の部と夜の部があるが、昼間の時間は街の散策に使いたい。いったんホテルに戻ってシャツとジャケットを着替え、日が暮れる頃、劇場をゆっくり訪ねるというのが気分だろう。

ウラジオストク港に沈む大きな夕日

それでも、開演の午後7時の1時間近く前に劇場に着いてしまった。事前にネット予約していたチケットを手にして劇場内に入ると、地元ロシア人に交じって、日本や韓国から来た観光客の姿もあちこちに見られた。

マリインスキー沿海州劇場のガラス張りを多用したモダンな外観

クロークでコートを預け、周囲を見渡すと、カフェがあった。公演は休憩を入れて約2時間半。早めの夕食をとってくる手もあったかもしれないが、それではせわしなさ過ぎる。

カウンターに行くと、ケーキやマカロンなどのスイーツ、コーヒー、紅茶などに加え、アルコールもある。

劇場内のロビー
劇場内のカフェは1階ロビーの両端にふたつある

メニューを見ると、白のスパークリングワインがあった。ロシア産とフランス産から選べる。1杯250ルーブル(約420円)と手頃なロシア産にした。小腹がすいてきたので、クロワッサンサンドも注文した。

ボリュームたっぷりのクロワッサンサンドとスパークリングワイン

ロシア産というが、おそらくジョージアやモルドバのものだろう。ロシア人は一般にウオッカのような強いお酒ばかりを好む人たちだと思われているが、実際は甘いカクテルやスパークリングワインもお好みで、食前や食後によく飲むようだ。バレエの公演が始まる前に劇場のカフェで傾ける一杯。ささやかすぎる楽しみといわれるかもしれないが、満足である。ほの甘く冷えたスパークリングワインは、開演前の時間を過ごすのにぴったりだった。

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