生きるチカラの強い女性へ

処方箋16 ひまわり畑で逢いましょう。

文:ひきた よしあき / 写真:カンパネラ編集部 09.25.2018

仕事一辺倒でキャリアを重ねるのはもう古い? それよりも大切な家族と一緒に豊かな時間を過ごし、人生を謳歌する女性が少しずつ増えています。名スピーチライター・ひきたよしあきさんが、スマートで力強い女性たちに会い、その魅力を探ります。第16回は、働く女性たちの出会いと学びの場「それいゆ」を主催する石川正子さんです。

石川正子さんのそばには、いつもひまわりが咲いていた。

会社を退職したのは6月。まだ咲いていないひまわりの花束をもらった。

「声まで出なくなった人生の最大のピンチのとき、北海道まで行って、一面にひまわりが咲く中を歩きました」

だから、彼女が主催するブライトアップ・サロンの名前は「それいゆ」(ソレイユはフランス語で太陽の意味)。ひまわりのように眩しい人に会い、自分もまたひまわりのように強く、明るく咲き誇る。そんな出会いと学びの場を働く女性たちに提供してきた。

人生が明るくなる、そんな環境を作ることが大切です

「子どもの頃にヘレンケラーを描いた映画『奇跡の人』を観たんです。ディズニー映画しか観たことのなかった私には衝撃でした。何より感銘したのは、サリヴァン先生の姿です。苦しむ人と向き合って、生きる力と才能を引き出していく。教育ってすごい。私も人の心を揺さぶる仕事がしたいと思いました」

そんな彼女は、広告会社を皮切りに仕事をステップアップさせていく。若くして人事の仕事のひとつを任された。

人材派遣会社に転職してからは、カード会社のVIPに向けてグローバルサービスの仕事に携わる。

アウトレットの店舗開発にも挑んだ。

パソコン教室にも携わった。通常なら短期で技術を習得して終わる教室。しかし石川さんが手がけた教室では、「一生ここで学びたい」と言うシニアの人が続出したという。

「場の力が大きいと思います。疲れていてもここに来たくなる。参加することで、人生が少し明るくなる。そんな環境を作ることが大切なんです」

実際に会うことで生まれる「熱」が大事

時は満ちてきた。いよいよ彼女がめざす働く女性たちの出会いと学びの場「それいゆ」を立ち上げるときがきた。

「第一回には当時、ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテルのチーフコンシェルジュだった阿部佳さんにお願いしました。彼女のホスピタリティ精神を目の当たりにして、その熱量を感じて欲しかったんです」

以降、石川さんは、政治家の野田聖子さんを手紙で口説き、憧れのプロデューサー残間里江子さんを一周年にお招きする。故日野原重明さんが来られた時は、忙しい時間を縫って90名もの女性が集まった。

「ただお話を聞くだけならどこでもできます。ビジネスに直結するようなものは他のセミナーの方が優れているでしょう。私はまず、ゲストとみなさんで食事を共にしていただきます。そこで打ち解けて、どんな方が集まっているのかがわかってからお話をして頂きます。打ち解けていくからこそ生まれる熱がある。それを大事にしたいのです」

現在「それいゆ」は、親子の作文教室をもっている。石川さんは、頑なに親と子がともに学ぶことにこだわっている。子どもの才能を引き出すには、「家庭」という場が大事。家に帰ってからも親子が習ったことを話したり試したりする場の提供こそが「それいゆ」の使命だと語る。

インタビューの中で、彼女は頻繁に「熱」という言葉を使った。ネットでなんでも済ませる時代だからこそ、実際に会うことで生まれる「熱」が大事。その環境をつくることが大切。人が人と出会う奇跡を演出する石川さんが語る姿をじっと見ていると、熱気でぽっと明るい。

なるほど、彼女の周辺にたくさんのひまわりが咲いているように見えた。

ひきた よしあき
1960年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂クリエイティブプロデューサー、スピーチライター。学生時代から第8次「早稲田文学」学生編集委員、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作などで活躍。84年(株)博報堂入社。クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。また、明治大学をはじめ多くの大学で講師を務める。15年、朝日小学生新聞でコラム「大勢の中のあなたへ」、コラム「机の前に貼る一行」を連載。著書に『あなたは言葉でできている』(実業之日本社)、『ゆっくり前へ ことばの玩具箱』(京都書房)がある。
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