ビール注ぎ名人 ビールの名店

東京・新橋の「ビアライゼ'98」、幻の味を受け継いだ「マツオ注ぎ」と料理の魅力を語る【動画付き】

2段注ぎがビールのまろやかな甘みとクリーミーな泡を生む

文/動画:カンパネラ編集部 写真:大槻純一 08.23.2018

ビアマイスター(ビール注ぎの名人)としてよく知られる松尾光平さんのお店は、東京・新橋にあるビアホールレストラン「ビアライゼ'98(BIERREISE'98)」。そのクリーミーな泡とさわやかで甘さのあるビールを一口味わいたいと、国内外からたくさんのファンが店を訪れる。そんな松尾さんに、クラフトビールの注ぎ方、おいしく飲む方法、そして料理との組み合わせ方についてお話を聞いた。(2017年12月5日公開の記事を再編集しました)

「ビアライゼ'98」があるのは、サラリーマンの街として知られる東京・新橋。広い店内では会社帰りの男性グループ、年配の夫婦連れ、買い物帰りのひとり客など、さまざまなお客さんが思い思いにビールを楽しんでいる。

ビアライゼとは、ドイツ語で「ビールの旅」という意味。

「女性グループもよく来られますよ。女性ひとりでカウンターに座る方も珍しくありません。それにふらっと立ち寄ることができ、誰もが賑やかに会話を楽しめるような、昔ながらのビアホールの雰囲気を残したくて、こう名乗っているのです」と店主の松尾光平さんが笑顔で話す。

『灘コロンビア』新井さんのビールの味を「飲ませ続けて欲しい」

店名にある「98」は店がオープンした年のこと。「私はもともと、日本橋で1949(昭和24)年に創業された名店『灘コロンビア』というビアホールに勤めていました。『灘コロンビア』は、店主の新井徳司さんの注ぐビールがまろやかでうまみがあり、特別にうまいということで、非常に人気のある店でした。その新井さんのもとで一から修業しました」

「ビアライゼ'98」のビアマイスターで店主の松尾光平さん

その後、1993年に師匠が亡くなり、5年後に店を閉めることになった。そのときお客さんのなかから「誰か跡を継いで“新井さんのビール”を飲ませ続けて欲しい」という声が出て、弟子である松尾さんがビアライゼを98年にオープンするきっかけになったのだという。いってみれば、幻のビール注ぎが誕生した瞬間だ。

ビアライゼでは、「灘コロンビア」から譲り受けた名ビールサーバーを今でも使っている。灘コロンビアの創業当初から使われてきた旧式のビールサーバーだ。

松尾さんは、クラフトビールの多種多様な個性も面白くて、95年にアサヒビールから東京初のクラフトビールが登場して以来、ずっと扱っているという。今提供しているクラフトビールは『TOKYO隅田川ブルーイング』の3種。そのうち女性に人気のある「香るヴァイツェン」をグラスに注いでもらった。

「マツオ注ぎ」の秘密は2段注ぎによる「泡の層」にあり

松尾さんのビール注ぎの方法は「マツオ注ぎ」という名で知られている。その特徴は、ビールを2段階に分けて注ぐところにある。そのポイントは次の通りだ。

・1回目は勢いよくビールを注ぎ、大きく泡立たせて炭酸と雑味を抜く。そして上にある粗い泡を取り除く。
・2回目はビールをゆっくりと足して、ほどよい炭酸の量にして、泡を持ち上げてあげる。

こうすることで「やわらかい口当たりとのどごしになるので、ジョッキですいっと飲む女性もいますよ」と松尾さん。

「ビアライゼ'98」が提供している『TOKYO隅田川ブルーイング』の3種類のクラフトビール。左から深いコクと上質な苦みが特徴の黒ビール『ビタースタウト』(285ml/770円)、華やかさと清涼感のある後味が人気の『ケルシュスタイル』(330ml/770円)、やわらかな口当たりとフルーティな香りが魅力のホワイトビール『香るヴァイツェン』(330ml/770円)

実際に飲んでみると、飲みやすく、さわやかな甘さを感じるうえに、粘り気のある泡に仕上がっているのでクリーミーだ。ビールの中の余分な炭酸や雑味を、泡が吸収し保ってくれ、液体の部分の穀物由来のうまみが際立つ。上面発酵のクラフトビールならではの麦の甘みが増しているのがわかる。

【動画:まろやかな味とクリーミーな泡を生む「マツオ注ぎ」の実演】

※この動画はビールの泡について解説したものです。泡にマッチ棒を差すなどの行為は絶対に真似しないでください。