ミッドナイト・インタビュー

いじめられっ子、高卒パチプロの経験で学んだ「半身ずらし」経営術 ベーシック代表取締役 秋山勝氏/前編

聞き手:カンパネラ編集部/文:西本 美沙 /写真:的野 弘路 01.07.2019

注目企業の社長の本音に酒場で迫る「ミッドナイト・インタビュー」。今夜はベーシック代表取締役の秋山勝氏です。2004年に創業したベーシックは、比較メディアを皮切りに、現在ではWebマーケティング事業を軸にして、Webマーケティングメディア「ferret」やWebマーケティングツール「ferret One」を展開しています。8回の事業売却を経て現在のカタチになったというベーシックですが、代表の秋山氏は高卒でパチプロだったという経歴の持ち主。一見、Webマーケティング事業につながりがないように見えるパチプロにもヒントが!? それでは、さっそく秋山氏の素顔に迫ります。(以下、敬称略)

──それでは、乾杯!

秋山 乾杯!

──2004年創業ですね。現在はWebマーケティング事業ですが、創業当初はどんなサービスを?

秋山 最初は引っ越しの一括見積もりサービスです。当時、比較サイトがなくて、留学、フランチャイズ、家庭教師、結婚相談所、ネット証券、派遣会社と比較サイトを横展開して広げていきました。

リーマンショック前は、某証券会社の月の新規口座開設の半分がうちのサイトからでしたよ。でも、その事業は売却しました。

──儲かっていたのに売却したんですか。

秋山 事業売却は8回しました。いずれも売却目的ではなく、会社の向かうベクトルから外れたものは売りたいと思って売却しました。


──会社の方針が結構、変わっていくんですね。

秋山 創業10年目くらいに問題解決型の事業と定義したんですが、それまでは、機会を見つけては事業を興していました。BtoCも、BtoBも、BtoBtoCも、Eコマースも大概やりましたね。海外の飲食プラットフォームとかもありました。

──海外の飲食も!? 立ち上げた事業の共通項ってあるんですか?

秋山 抽象的ですが、ギャップを見つけて事業化していることが多いです。スマートフォンのケースを販売するEコマース事業もそうでしたね。

ドコモがiPhoneをまだ扱っていない時期なのに、家電量販店へ行くとスマホケース売り場にはiPhoneケースが大量にあった。かたやアンドロイドのケースは全然なくて、何でだろうと思ったんです。

そしたらiPhoneはモデルサイクルがだいたい2年なのに対して、アンドロイドは短く半年で終ってしまうものもあるためメーカーは調整できないということでした。

それで、ちょうど3Dプリンターを活用したいと考えていたので、大量生産じゃなくオンデマンドで、バーチャルに商品画像だけ並べて、売れた分に応じて3Dプリンターで作ったんです。そしたら、これがすごく当たった。

──たまたま見つけたんですね。でも今の主力はマーケティングSaaS(Software as a Service)領域。そこが一番業績がよかったんですか?

秋山 いや、2014年に企業向けのマーケティングSaaS事業、アプリ事業、ECのケース販売事業、海外事業の4つをヨーイドンで始めたんですが、全部成果が出て、逆に困ってしまった。一番早くブレイクしたのがアプリ事業で、1作目のカジュアルゲームがヒットして500万ダウンロード。でもカジュアルゲームってマネタイズが難しい。

だから、ゲーム好きな人はどんなゲームも好きだと仮定して、簡単なゲームからソーシャルゲームに送客するアドネットワークを作ったら、これがブレイクしたんです。

おもしろいくらいに伸びた結果、Appleから名指しで、うちのSDK(ソフトウエア開発キット)を入れてたら審査を通さないと各ディベロッパーに通達されました。その後、事業内でピボットさせて続けましたが、アフィリエイトネットワークみたいな状況になったのでこれは違うと思い売却しました。


──なんでもやっていたんですね。

秋山 そうですね。「半身ずらし」って言ってるんですが、自分たちにノウハウがある部分が100%だとしたら、そのノウハウを半分ずらすんです。半分はわかってるけど半分はわからないという動きをすると新しい挑戦ができます。それで半身ずらしを2回すると実は未知の領域が1個できている。

──半身じゃなくて「全身ずらし」になる。

秋山 はい、そういうやり方で事業を拡大してきました。一見、海外飲食も脈絡なく見えますが、創業時からフランチャイズのマッチングサービスをしていたので、フランチャイズについてはよく理解していた。でも海外はわからないから、持ってるノウハウを使ってやってみようと。

──創業期からそういう考え方なんですか?

秋山 ずっとそうですね。抽象度を上げて物事を考えるんです。事象として見たら全く異なるものの共通項を見つけるのが得意なんでしょうね。

比較サイトを運営していた時も社員20人でいろんな業界のサイトを20個くらい手がけていましたので驚かれました。引っ越し会社の人は引っ越し業界を特殊だと言うし、フランチャイズの人はフランチャイズを特殊だと言う。

でも結局、企業の活動は企業と個人、または企業と企業のマッチングでしかないので、その行為自体には特殊性ってないんですよね。

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