ミッドナイト・インタビュー

いじめられっ子、高卒パチプロの経験で学んだ「半身ずらし」経営術 ベーシック代表取締役 秋山勝氏/前編

聞き手:カンパネラ編集部/文:西本 美沙 /写真:的野 弘路 01.07.2019

勉強したいものがないから高卒でパチプロ。その後、起業

──それくらい奇跡的だったんですね。それで高校から大学へ?

秋山 いや、高卒でパチプロです。

──へぇ!?

秋山 なんか変に潔癖なところがあって、勉強する気がないなら大学行っても意味がないと思って。テストが0点だった時もそうで、記号問題は適当に選べば何点かにはなるけど意味ないので回答しなかった。

だから大学も行こうと思えば行けるけど、勉強したいものがないなら行く必要ないよねって。

──それでパチプロというのは。

秋山 単にパチンコが好きだったからです。好きなことで生きていけたらなと。でも結果的にパチンコの世界で自分の「なぜ?」の思考が役立った。

──どういうことですか?

秋山 パチンコ打ちながら考えてたんですよ。パチンコは勝ったり負けたりが運だとしたら、パチンコ店も運で運営しているのか?と。運なら儲かる時と儲からない時があるけど、パチンコ屋が潰れないのはなぜだと。

つまり恣意的な何かが働いている。コントロールできなければ、客と同じでダメになる。じゃあ何をコントロールしているのか?を考えていった。

そしたらパチンコ台のスペックや、店によっての更新タイミングだったり法則性があったりして、そういうデータをためるといろいろ見えてきたんです。


──どんなデータを。

秋山 毎日パチンコ屋に通うと感覚的にあの台が出そうだなというのがあるんですが、その感覚って無意識に法則性を理解し始めるってことなんです。じゃあ、その感覚を言語化して書き出せば法則が見えるなと。

書き出すと、当たり外れはあるけれど、Aというお店に法則性があるなら、Bというお店にも法則があるだろうと考えてBを調べる。AとBにあるならCにもあるし、Dにもあるよねと。

そうすると今度はAとBとCとDを比べて、一番いいところに行ったほうがいい。だから、店が当たりを出そうとしているかどうかを見つけてそのお店に行く。新装開店など客寄せタイミングかどうかを見たりですね。

──パチンコ店を比較していったんですね。

秋山 すると今度は勝ち負けの波があるんですよ。それだったら平均化したほうがいいなと気づいた。1人でやるよりも2人、2人でやるよりも3人ですれば分散投資ができるなと。みんなで情報をシェアして、一緒にやることで価格の変動性を平常化できると気づいた。

──パチンコで分散投資……それを感覚的にしていたと。

秋山 当時はそんな言葉知りませんけどね(笑)。それでみんなで一緒に打ち始めたら、今度パチンコは射幸心があおられるゲームだと気づいたんです。自分たちの「勝ちたい」と思う感情がゲームを支配しているなと。

例えば3万円使っているんだからもうすぐ当たりが出るって思うのは、実は何の根拠もないですよね。完全抽選なので1万円使おうが10万円、100万円だろうが、1回は1回でしかないのに、なぜかそういう気持ちになる。

データをとると午後6時までに2万円以上使ってたらほぼ負けます。つまりお金を注ぎ込みたくなる気持ち、勝ちたい気持ちがマイナスを拡大させていく。だから大事なことは、勝つことよりも負けないことなんです。

──なるほど。

秋山 負けない打ち方をして、チャンスが来た時に張れることが勝ちを最大化する。それで、そういう法則を全部整理して当時チームをマネジメントしていました。あとはみんなで共同投資して、みんなで分配するノリ打ちをしていました。要はマイナスにさえならなければいいという環境ができれば、基本的には蓄積されて行くんです。

──パチンコでそこまでマネージメントしてたんですね。

秋山 高校卒業後、普通のサラリーマンより収入が多かったですよ。

──よくパチプロやめられましたね。

秋山 好きなことをやってるつもりだったのに、ある日つまらなくなってしまったんです。パチンコでパフォーマンスを出すには感情を殺したほうが最大化されますが、自分が好きだったパチンコって感情に身をゆだねて楽しくすることだったなって。

パッションを持つとダメになるし、お金を残そうと思えば思うほど、その気持ちが失われる。高校卒業して5年くらい、23歳でつまらなくなった。そして、気づいたら自分を自己肯定できなくなっていたんですよ。

──それでパチンコをやめた。そこからはどうされたんですか?

秋山 10年間、サラリーマン。最初は商社という名の何でも屋。何を売ってもいいなら売れるだろと思っていたら全然売れませんでした。

後編に続く)

秋山 勝(あきやま・まさる)
株式会社ベーシック 代表取締役
1972年2月7日、東京生まれ。高校卒業後、企画営業職として商社に入社。97年、株式会社グッドウィルコミュニケーションにて、物流倉庫の立ち上げ、EC事業のサービス企画を経験。2001年、トランス・コスモス株式会社に入社し、Webマーケティング関連の新規事業など数々の事業企画を手がける。04年に株式会社ベーシックを創業。「Webマーケティングで世の中の問題を解決する」をミッションに、国内最大級のWebマーケティングメディア「ferret」やオールインワンマーケティングツール「ferret One」といったWebマーケティング事業や国内最大級を誇る「フランチャイズ比較ネット」などのメディア事業を展開。設立以降、50を超えるサービスを生み出し、10件以上のM&Aの実績を持つ。
西本美沙(にしもと・みさ)
ライター/PR
株式会社ドワンゴで各種サービスの宣伝・広報を経て、2016年退職。現在はフリーランスで女性向けメディアなどのライティングのほか、各企業のPR業務に従事。だいたいお酒と黒猫と戯れてます。