ミッドナイト・インタビュー

傷を舐めあうなら経営者同士ですればいい ベーシック代表取締役 秋山勝氏/後編

聞き手:カンパネラ編集部/文:西本 美沙 /写真:的野 弘路 01.09.2019

お酒を飲みみながら社長の本音に迫る「ミッドナイト・インタビュー」。今夜は、Webマーケティング事業を軸にして、マーケティングメディア「ferret」やWebマーケティングツール「ferret One」を展開する、ベーシック代表取締役の秋山勝氏です。前編では、いじめられっ子だったという中学時代から高卒パチプロ時代までの話や、事業の「半身ずらし」経営術など新規事業のヒントとなるエピソードをうかがいました。後半では、「仕事が趣味」という秋山氏の素顔に迫ります。

前編から続く)

──パチプロをやめて何でも屋。何を売ろうとしたんですか?

秋山 「何でもやるから仕事ください」と言い回ってました。でも全然ダメ。ダメな理由を考えたらすごくシンプルで、何でもやるって言いながら、お客さんにしてほしいことを考えさせ、僕の課題を丸投げしていたんですよね。

ほかに考えたことは、人は何にお金を出すかということ。ひとつはマイナスをプラスにするためで、もう一つが未来を買うため。


──未来を買う?

秋山 いわゆるエンターテインメント系です。たとえばソニーは未来を売っている会社です。ソニー製品がなくても生活は困らないけれど、あると生活が豊かになる。オーディオもゲームも映画もなくても生きていけるけど、あると豊かになる。

洋服で言うと、ジャケットを買う時に、とりあえず身なりを整えるために必要に迫られて買うのと、おしゃれな人がこだわって買うのとでは、同じジャケットを買うにしても意味が違う。後者はそのジャケットを着る自分の未来を買っている。

それでマイナスをプラスにする、お客さんの困りごとをちゃんと解決できたらビジネスになると気づいてからは、売り上げが伸びるようになりましたね。

「自称きれい好きないい加減な人」、これに気づいて天才かと思った

──その後はどこかへ転職されたんですか?

秋山 3社転職して、2社目は、ASP(Application Service Provider)サービスをしている会社でした。元々ECサービスも展開していて、カートサービスと物流を含めてフルフィルメントでセット提供するということで、当時物流倉庫の立ち上げプロジェクトの責任者に抜擢されまして。

抜擢理由は物流倉庫と一番自宅が近いってだけのことでしたね。今でも覚えてますよ。倉庫の前で「俺、何すればいいんだろう」って呆然としてました…。

──ははは、すごい理由ですね。倉庫では何をしてたんですか?

秋山 クライアントがレンタルCDを買い上げ再加工して流通させる企業だったので、その倉庫にすごい量のCDが納品される。それを検品して、棚に並べ、オーダーが来たら、研磨機で磨いてケースに入れて出荷するんですが、僕の業務はそのシステム作り。月間で10万枚出荷できる体制を作れと。

──10万枚……。

秋山 全然求められている数字が達成できなくて……。一番のボトルネックが磨く作業。CDを研磨機に入れて研磨した後、ちゃんと聴けるか検品する。音が聴けてもお客さんが手にした時に傷ついていると感じたらダメ。でも誰もが納得するレベルまで研磨すると生産性が上がらないので、ちょうどいい頃合いを見つけるのが大変だった。

──ちょうどいい頃合ってわかるんですか?

秋山 研磨剤を換えたり、時間で測ったりして試しても答えが出なくて。でも、たまにある作業ラインが予定通りの枚数をこなせる日があって、調べたら要因は人だったんです。

作業する人がCDを見て研磨時間を決める「暗黙知」。本人に聞いても感覚だから言語化できない。それで、人にフォーカスして、まずは几帳面な人で試してみました。

すると、きれいにはなるけれど生産性が上がらなかった。僕が大丈夫だと感じるものも、光の加減で傷があるからダメだと磨いちゃうんですよね。かと言って、おおざっぱな人もダメ。

──雑な作業になりますもんね。どんな人が良かったんですか?

秋山 「自称きれい好きないい加減な人」が最適でしたね。

──ん、汚いってことですか?

秋山 いや汚いんじゃなく甘い人です。自己評価は、きれい好きでまめだけど、傍目に見ると甘い人が最高です。そういう人を見つけるために、アルバイトを採用したらまず掃除をさせる。ゴミを丸く掃いて、角に適度にほこりを残すくらいの人がベスト。

──ゴミの掃き方でわかるんですね。

秋山 几帳面な人は角のごみもちゃんと取る。そういう人には検品やピッキングを任せる。

ほんと自称きれい好きでいい加減な人は「ヤバい」ですよ…すごく生産性が上がりましたからね。その法則に気付いたときは天才だと思いました。ただ本人たちには「君はほどよくいい加減だから良いね」とは言えませんでしたね。