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脱サラして「イチゴの神様」になった男

トップパティシエが絶賛する、野口圭吾さんの“ストロベリー・ドリーム”

文/写真:須田 泰成 06.16.2016

栃木県宇都宮市にあるユニークなイチゴ農園「ハート&ベリー苺」。オーナーの野口圭吾さんは、国内のトップパティシエに「イチゴの神様」と呼ばれるほど。その栽培法とビジネスに迫る。

美食の饗宴苺尽くしツアーで若手農業者も支援

独自の栽培方法と独自の販路を切り開いた野口さんは、2014年、さらなる展開へと向けて、ユニークなイベント「美食の饗宴苺尽くしツアー」を始めた。

「美食の饗宴苺尽くしツアーは、私のイチゴを使っていただいている一流ホテルや高級レストランで、その日限りのイチゴ尽くしメニューコースを楽しむツアーです。通常、栃木から貸し切りバスで都内に行き、ランチ、ディナーを1日かけて味わいます。もちろん東京在住の参加者もおられます」

とちおとめとトマトのガスパーチョ(アピシウスにおける「美食の饗宴苺尽くしツアー」にて)

ツアーに登場するメニューは、一流のシェフやパティシエがイチゴの味覚の可能性に挑む斬新なものが多い。単なる生産者ではなく、イチゴの味覚の最前線にも身を置く。それも野口さんのスタイルだ。

とちおとめと熟成栗のモンブラン(アピシウスにおける「美食の饗宴苺尽くしツアーにて)
神戸牛ローストビーフ生雲丹と苺のソース(アピシウスにおける美食の饗宴苺尽くしツアーにて)

美食の饗宴苺尽くしツアーでは、他の若手農業者の応援も行っている。

「2016年4月のツアーでは、栃木や近県で頑張っている若手農業者で、私が自信を持って進められるトマト農家2軒とアスパラ農家も加わってもらい、食材として加えてもらいました。この3軒もアピシウスに使ってもらえるようになりました」

野口さんとの出会いをきっかけに、高級レストランや一流ホテルとつながる若手農業者が着実に増えているようだ。

生産規模を拡大して、より多くの人に届ける

高級レストランや一流ホテルのシェフ、パティシエたちとタッグを組み、自分が育てたイチゴの価値と可能性を追求する。さらには、近隣の若手農業者の応援もする。

贈答用イチゴ

そんな野口さんの次の目標を聞いてみた。

「まずは規模拡大が急務です。口コミでつながりのできたホテルやレストラン、メーカーさんから問い合わせが相次いでいるのですが、需要に生産量が全く追いついていないのが現状です。もっと多くの人に食べてもらいたいです。畑を作る段階からタッグを組める事業者さんがいると一番いいですね」

イチゴの加工品。とちおとめのジャム、イチゴジンジャーシロップ、イチゴ乾燥チップ

他にも、「都内にイチゴ尽くしのお店を開きたい」「世界のトップシェフ、パティシエにも自分のイチゴを使っていただきたい」など、実現したい夢は、まだある。

「しんどいことも多かったけど、イチゴを始めたおかげで、サラリーマン時代には会えなかった人たちと会えたり、人生は、考えられないほどオモシロくなっていると思います」

野口さんのストロベリー・ドリーム。その夢が終わることは、当分なさそうだ。

■参考Webサイト
・ハート&ベリー苺の楽園

須田泰成(すだ・やすなり)
コメディライター/地域プロデューサー/著述家
1968年、大阪生まれ。全国の地域と文化をつなげる世田谷区経堂のイベント酒場「さばのゆ」代表。テレビ/ラジオ/WEBコンテンツや地域プロジェクトのプロデュース多数。著者に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、絵本『きぼうのかんづめ』(ビーナイス)など。