聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

保水性や断熱性の高いセラミックス素材や炭素繊維を使った耐震補強材――。布地最大手の小松精練は、環境建材に繊維産業の次の展開を賭ける。

中山 賢一(なかやま・けんいち)
1941年生まれ。64年同志社大学経済学部卒業後、小松精練入社。販売部長などを経て、87年代表取締役社長就任。2003年から現職。日本染色協会会長、石川県染色工業協同組合理事長などを歴任
写真/山岸 政仁

――2015年11月、旧本社棟を改修したファブリック・ラボラトリー「ファーボ」が完成しました。白いロープを張り巡らせたような外観が独特です(下の写真)。この白いロープは、小松精練が開発した耐震補強材だそうですね。

中山 賢一氏(以下、敬称略) 24本の炭素繊維を組ひも状のガラス繊維で覆い、それを撚(よ)って強度を増した複合素材です。「カボコーマ・ストランドロッド」と名付けました。重量がワイヤーの5分の1しかないので、持ち運びやすく、施工もしやすくなります。運んだり持ち上げたりするためのエネルギーも少なくて済みます。建物は海辺にありますが、海からの風にさらされてもさびず耐久性も高い。工事費の面でも、環境面でも優れた素材です。ただ、建築基準法で建材としてまだ認定されていません。このためファーボでは、壁を増強したりして耐震性を高め、炭素繊維複合材は補強用に使っています。

自社で製造した炭素繊維複合材の「カボコーマ・ストランドロッド」で旧本社棟を耐震補強したプロジェクトには、新国立競技場の設計で有名な隈研吾氏が加わった。

衣料用繊維の技術で炭素繊維を使う

――そもそも、建物を壊さずに耐震補強によって長く使用することは資源循環にかなっていますね。認定はされそうですか。

中山 今回の改修プロジェクトで課題がクリアになったので、年内には認定されると見込んでいます。量産できれば、材料費も安くなるはずです。

――なぜ耐震補強材に目を付けたのですか。

中山 繊維の将来を見越した事業展開を進めるために我々が最も得意とする衣料用繊維を加工する技術を炭素繊維に応用したら何ができるかを考えました。それが建材だったのです。炭素繊維は飛行機などにも使われていますが、我々は板ではなく、繊維の延長上で活用することによって特徴を出せるのではないかと考えました。

――炭素繊維複合材はファーボの内装にも使われていて、不思議な空間になっています。設計したのは、新国立競技場を手掛ける建築家の隈研吾氏だそうですね。数年前、小松精練のもう1つの建材である「グリーンビズ」に隈氏が関心を持って訪問したことが出会いのきっかけだと聞きました。

中山 グリーンビズをとても評価していただいています。その頃はまだ炭素繊維は開発中だったので、建材として利用するにはどうしたらよいかを相談させてもらいながら開発した経緯があります。

――隈氏と引き合わせてくれたグリーンビズは、保水性や断熱性が高く、地球温暖化対策に効果がある環境素材です。敷設面積は8万m2を超え、資材事業の柱に育ちつつあります。

中山 多孔質の発泡セラミックス基盤として、ブロックや屋上・壁面緑化材、壁材、床材などに展開しています。例えば床材をウッドデッキの代わりに屋上に敷設すると、真夏でも表面温度を30℃ぐらいに抑えられます。その分、エアコンを使わずに済みます。

――2015年イタリアで開催されたミラノ万博でも、グリーンビズのブロックが熱中症対策用に日本館の周辺に敷設されました。

中山 最終的には建物まるごと、さらには路面をすべてグリーンビズにした街をつくりたいという夢があります。ファーボの1階に街を緑化したジオラマを設置していますが、グリーンビズを使った地球温暖化対策やヒートアイランド対策を表現したものです。あれを実現したいのです。環境と共生する産業のあり方とはどのようなものかを示したいという経営者としてのロマンですね。

染色工程の廃水処理で発生する汚泥を有効活用して製品化した「グリーンビズ」は保水性や断熱性が高く屋上や壁面の緑化に使われている。左写真は富山駅前の「TOYAMAキラリ」、右は「カフェ クレオン」(富山市)