聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

投資判断の基準は「いい会社」であるかどうか。金融の力で社会課題の解決に挑む。

新井 和宏(あらい・かずひろ)
1968年生まれ。92年、東京理科大学工学部卒業、住友信託銀行(現・三井信託銀行)入社。2000年、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)に入社。2008年11月、元同僚と4人で鎌倉投信を創業。著書に『幸せな人は「お金」と「働く」を知っている』『持続可能な資本主義』『投資は「きれいごと」で成功する』
写真/鈴木 愛子

――社会から求められる「いい会社」に長期で投資をする投資信託「結い2101」の運用を開始してから7年です。どのような成果がありましたか。

新井 和宏氏(以下、敬称略) おかげでお客さまは1万7000人を超え、運用額はもうすぐ300億円になります。この間、ホームページなどを除き広告宣伝費をほとんど計上したことがありません。つまり口コミでお客さまが集まってくれたわけです。事業性と社会性の両立を目指す会社、社会課題を解決する会社を応援する仕組みをつくるというのは、当初はなかなか理解を得られませんでした。はたから見たら無謀な挑戦が成立したのは、やはり社会がそれを求めていたからでしょう。今ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資に注目が集まるようになりました。ようやくぼくらの存在を認めてもらえる時代になったのかなと感じています。

 「結い」とは、みんなで何かをすることです。ぼくらはお客さまと一緒に22世紀をどうやってつくっていくのかにチャレンジしています。「お金だけの関係性にしない」というのが、ぼくらのテーマです。お金だけの関係性になると、人は一番儲かることにしか興味がなくなってしまいます。それは不自然なことで、社会が成り立たなくなってしまいます。世の中にはすぐに儲かるものと、地域や社会との信頼関係といったすぐには儲けにつながらないけれど大切なものがあります。それをどうバランスさせるかがチャレンジだと思っています。

 お客さまが投じたお金が「いい会社」を通じて社会の役に立つ。そして「いい会社」が成長し、豊かになればお客さまの心が豊かになる。「資産の形成」「社会の形成」「心の形成」をかけ合わせたものが、投資の果実としての「幸せ」というリターンになって還元される。これがぼくらの考えるリターンの定義です。

――2101は22世紀の最初の年を指すんですね。

新井 今生きている人は、きっとみんな生きてないですよね。ぼくらがつくりたい社会を、次の世代につないでいくための枠組みです。