電車の消費電力量削減に向け、高効率の駆動システムを提供する。3つの先端技術の組み合わせにより、省エネに効果的なソリューションを生み出した。

 生活と産業を支える交通システム。電気を使用する電車においても、当然ながら地球環境保護に向けたCO2削減と省エネルギー推進が求められている。

 鉄道車両システムで消費する電力を減らし、あるいは有効利用することで省エネを実現することにより、鉄道事業者はもちろん、鉄道に製品を提供するメーカーとしても環境貢献が可能となる。

 東芝はまさにそのような鉄道システムの省エネ化に向けた事業を展開している。先ごろ、東京地下鉄(東京メトロ)の丸ノ内線において2019年2月から運行開始予定の新型車両2000系に、東芝インフラシステムズの鉄道システムを提供したと発表した。

 同システムは、新開発のAll-SiC(炭化ケイ素)素子を適用したVVVF(可変電圧可変周波数制御)インバーター装置、全閉式の永久磁石同期電動機(PMSM)、そしてリチウムイオンバッテリー「SCiB™」を使った非常走行用電源装置の3つをセットにしたもので、これらを組み合わせた導入事例は世界で初めてとなる。

東京メトロは現行車両である丸ノ内線02系に代わり、新型車両2000系を導入。2019年2月から運行を開始する。新型車両は従来のものに比べて安全・安定性や車内快適性が向上しており、環境負荷も低減されている。この新型車両に東芝の駆動システムが採用されている
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 「All-SiC素子のインバーター、永久磁石のモーター(電動機)、SCiB™のバッテリー装置。このすべてが省エネ化に向けたキーコンポーネントです。そしてこれらを単純に組み合わせるだけでなく、省エネの観点から良い部分を意識的に結びつけることで、究極の環境貢献が実現できると考えています」と東芝インフラシステムズ 鉄道システム技師長の中沢洋介氏は語る。

永久磁石モーターで電力削減

 車輪を動かすモーターには、従来一般的に誘導電動機が用いられている。誘導電動機は、電流を流して回転する側・止まっている側に電磁石を作り、その電磁石でN極とS極を発生させ、モーターを回す仕組み。電流を流す際に抵抗があるため、回転する側・止まっている側の双方で発熱により電力ロスが発生する。つまり電力を十分に回転エネルギーに変換することができず、電力損失が大きくなる。

 これに対し永久磁石同期電動機(PMSM)に使われる永久磁石の場合は電流を流さずに磁界を保持しているため、発熱を抑えることができ、電力損失を大幅に減らせる。

 PMSMは、コンパクトでありながら強いパワーを出せる、省エネにも寄与するモーターとして注目を浴びている。従来の誘導電動機は定格効率が約92%であるのに対して、PMSMは97%を実現し、きわめて高効率だ。

 走る路線の特徴によっても変わってくるが、加速・減速を頻繁に行う地下鉄の場合はモーターがより多くの電力を消費するため、PMSMは従来のシステムに比べて20〜30%以上の電力量削減が見込まれるという。

 丸ノ内線新型車両は、すでにPMSMを導入している一世代前の車両と比べて16%の消費電力量削減を見込め、さらに従来の誘導電動機を搭載した車両と比べると、トータルで33%の削減を見込んでいる。

 「特に地下鉄は発熱をトンネル内に放出するので、トンネル内を冷やすために使う冷房の電力量も相当なものになります。その意味では、電力削減に加えてコスト削減という点でも付加価値が高いのではないかと考えます」と中沢氏は語る。

■ 丸ノ内線新型車両2000系を支える東芝の駆動システム
東京メトロ丸ノ内線の新型車両には東芝が開発した、省エネ化に貢献する3つの装置が使われている。これらを組み合わせることにより、現行の丸ノ内線02系(誘導電動機搭載車両)と比較して33%の消費電力量削減が見込まれる。これら3つを組み合わせた駆動システムが鉄道車両に導入されるのは世界初
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