世界最大級のヘルスケアカンパニーとして各国で事業を展開する。東日本大震災の被災地・東北で、災害看護の次代を担う人材育成の取り組みを進める。

 医療・健康を本業とするジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)にとって、ヘルスケアの未来を支える人材の育成は、ESG、SDGsの観点からも意義の大きな社会貢献となる。

 J&J日本法人グループの一員であるヤンセンファーマのクリス・フウリガン社長は、ESG、SDGsと経営の関わりについて次のように語る。

 「J&Jの世界共通の企業理念である『我が信条(Our Credo)』では“地域社会への責任”をうたっている。これに基づき、J&JではESGに加えて、SDGsの17の目標中、『すべての人に健康と福祉を』『ジェンダー平等を実現しよう』『気候変動に具体的な対策を』の3つを経営の重点項目として取り組んでいる。日本ではとりわけ健康をテーマに社会貢献活動を行っており、NPOなどへの経済的な支援とともに、社員一人ひとりがボランティア活動に積極的に参画していくことを奨励している」

 J&J日本法人グループは、社員の発案による自発的な貢献活動の推進に力を入れている。その活動の中心を担うのが、社員有志がボランティアで運営する「社会貢献委員会」だ。2018年は約140のプログラムを企画・実施し、延べ2000人以上の社員が参加した。他方、ヘルスケアをテーマとするプロジェクトへの助成も行っている。米日カウンシル─ジャパンが運営する「TOMODACHIイニシアチブ」への支援もその一つである。

 TOMODACHIイニシアチブは東日本大震災の復興支援から生まれ、日米の次世代のリーダー育成を目指す。米日カウンシル、米日カウンシル─ジャパンと日本の米国大使館が協力する官民パートナーシップだ。同イニシアチブでは教育、文化交流、リーダーシップ強化など数多くのプログラムを実施する。

 J&J日本法人グループは2015年から同イニシアチブの「TOMODACHI J&J災害看護研修プログラム」に協賛している。

米国研修を柱とするプログラム

 このプログラムは、東北の被災地の大学・短大・看護学校などで看護を学ぶ学生を対象に、災害看護の専門知識・スキルの獲得とリーダーシップ育成を目的としている。

 日本国内における事前研修、米国研修、帰国後の事後研修の3つを中心に構成されている。スタートから事後研修後の最終報告会まで、約7カ月間にわたる長丁場のプログラムだ。

■ 米国研修時の訓練
事故や災害などで同時に多数の患者が出たときに、手当ての緊急度に従って優先順を判断する訓練(トリアージシミュレーション)を 実施

 学生たちは、自身の震災体験を振り返りつつ、渡米準備のための事前研修で災害看護の基礎知識を身に付け、8月にニューヨークやワシントンDCなどの災害医療関連施設・団体を訪問した。

 2001年に起きた米国同時多発テロ事件やハリケーン災害で看護活動を担った医療従事者や被災者たちと生の交流を重ねながら、災害看護のスキルなどを実践的に学ぶ。帰国後は事後研修として各自がアクティビティの企画・運営を実際に行い、学びの成果を被災した地域に還元していく。

 2015年を1期生として毎年実施し、2018年の4期生7人を含めると、これまでの参加学生は35人に及ぶ。活動を通じて参加学生たちは災害時における看護技術はもちろんのこと、精神的にも大きな成長を見せ、将来の災害看護においてリーダーシップを発揮できる人材に向けて第一歩を踏み出す。

 同プログラム支援の経緯について、フウリガン社長はこう説明する。

 「2011年の東日本大震災では多くの医療機関も被災し、被災住民は深刻な健康の不安にさらされた。東北地方沿岸部は医療過疎が指摘されていた地域であり、大震災で状況はさらに悪化した。J&J日本法人グループとして被災住民に寄り添う看護従事者を育成・教育することは、将来の地域復興に大きく貢献できると考えたことがきっかけだ」